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薬師のユウさん、大斧担いで自由に生きる  作者: はぐれメタボ
第二章《暗躍する魔族》
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◆大武闘祭・本戦第三試合②

 審判の開始の合図が聞こえました。

 しかし、わたしもヤナギさんも一歩も動きません。

 

「ふむ、来ないのかね?」


 よく言います。

 今、踏み込んだら軽く返り討ちにされるでしょう。


「くじを譲っていただきましたからね。

 先手はお譲りしますよ」

「はっはっは、そうか?では……」

「⁉︎」


 わたしはほぼ反射のみで戦斧に魔力を纏わせてヤナギさんの刀を受け止めました。

 危ない、今の抜刀はほとんど見えませんでしたよ。


 刀には、当然のように魔力が纏わせてあり、戦斧に魔力を纏わせていなければ切られていたでしょう。


 ヤナギさんは追撃する事なく退がります。


「ほう、その歳で『魔力武装』を扱えるのか」

「魔力武装?」

「武器に魔力を込める技法の事じゃ。

 それをワシの流派では魔力武装と呼ぶんじゃよ。

 長年の練武の先にたどり着く、極地の1つじゃ」

「そうでしたか」


 なかなかかっこいい技名です。

 わたしもこれからは魔力武装と呼ぶ事にしましょう。

 

「さて、先手は譲りましたので、ここからが本番ですよ!」


 わたしはヤナギさんが居合いの構えを取る前に攻めに行きます。


「はっ!」


 流れる様な戦斧の連撃は、まともに受ければ武器を叩き折り、防御を突き抜けるでしょう。

 しかし、ヤナギさんは僅かに身体をずらし戦斧を躱し、躱しきれない攻撃は、刀でそっと受け流します。


 老齢にもかかわらずヤナギさんの動きは速く、隙も有りません。

 

「コレならどうです!」


 わたしは無詠唱でウォーターボールを放ちます。

 躱そうとすればわたしの戦斧の間合いに入る事となります。


 ヤナギさん程の手練れならば核を破壊し魔法を打ち消す事くらいは簡単でしょう。

 しかし、その動作は隙となり、わたしに有利に働くでしょう。


 わたしは躊躇わずに踏み込みます。


「やるのぅ」


 ヤナギさんはウォーターボールを打ち消すつもりなのか水球に向かって刀を振るいます。

 確かに躱すよりはいい判断ですが、それではわたしの動きを止める事は出来ません。


「獅子戸流【水刃】」

「⁉︎」


 わたしは足を止め、慌てて跳びのきます。

 ついさっきまでわたしがいた場所を水の刃が切り裂きました。


 いったい何が起きたのでしょうか?

 ヤナギさんが魔法を使った気配は感じませんでした。

 わたしのウォーターボールを打ち消した動きのまま水の刃を飛ばして来た様に見えました。


「凍てつけ 突風 【ブリザード】」


 わたしの指先から放たれた強力な冷気の塊が、ヤナギさんに襲いかかります。


「獅子戸流【氷威】」


 ヤナギさんがブリザードの核を切り裂いた時、普通なら霧散するわたしの魔力が氷の刃となり、こちらへと飛んで来ました。


「ふ!」


 戦斧で氷の刃を迎撃します。


 なるほど、原理は分かりませんが、魔法に対するカウンター技の様ですね。


 迎撃と反撃を同時に行うことの出来るいい技ですね。

 何より相手の魔力を利用している為、魔力を殆ど消費しないのでしょう。

 これは魔法は控えるべきですね。


「厄介ですね」

「はっはっは、たった二撃でワシの技の本質を見抜くか。やるではないか」

「ここからが本番ですよ」


 わたしは一息に踏み込むと二撃、三撃と戦斧を振るいますが、ヤナギさんはひらりひらりと躱し、鋭い斬撃を返してきます。

 と言いますか……


「わたしの眼帯を勘違いして怒った割に左ばかり攻めてくるのですね」

「ほっほっほ。なに、侮られたのであれば剣士として怒りもする。

 じゃが、そうでないのならば相手の弱みを攻めるのは、戦の理りじゃ」


 むむ、まったく持ってその通りですね。

 反論の余地は有りません。


 わたしは戦斧を大きく振って距離を取るとヤナギさんの一挙手一投足に注意を払い構え直すのでした。

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