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偵察とわたし

  丸1日掛けてゴブリンの村の近くに着きました。

  今日はここで野営して、明日更に近くに拠点を作り、明後日の夜明け前に奇襲をかける作戦です。

  これから主要メンバーでミーティングです。

  何故わたしが主要メンバーに入っているのでしょうか?

  ギルドマスターに聞いたら、治療の要なのだから当たり前だと言われました。

  確かに今回、毒を治療出来るのはわたしだけです。

  主要メンバーに呼ばれるのは当然ですか。


「とにかくゴブリン共の現状が知りたいですね」

「だが、斥候を出すのはリスクが高いぞ」

「しかし、村の正確な規模と重要拠点くらいは確認しないと不味いのではないか?」

「大きな村だ。恐らくゴブリンスカウトも居るだろう。

  見つかれば警戒されて、奇襲の効果がなくなるぞ。」


  どうやら偵察を出すべきかどうか悩んでいるようです。

  偵察しなければ曖昧な情報だけで奇襲をかける事になり、偵察を出せば敵の斥候に見つかるリスクがあります。

  そうなれば奇襲自体が不可能になるかも知れません。

  こちらを立てれば彼方が立たない状況です。


「それならわたしが偵察します」

「え?ティナさん何か良いアイデアでも有るのですか?」

「ふふ、任せてよ」


 ティナさんは自分の荷物から小さな籠を取り出しました。


「従魔か」

「はい、アルザックさん。

  私には鳥系の従魔がいるから従魔と視覚を共有する魔法で偵察が可能だと思います」

「なるほどな。

  それなら気づかれる可能性もまずない」

「ああ、ティナ、早速頼めるか?」

「はい」


  ティナは小さな鳥籠から鳥の従魔を放つと、ゴブリンの村が有る方に飛ばし、視覚を共有する魔法を使いました。


「見えたわ!」


  数分後、ティナさんが何かを発見したようです。

 発見したのは粗末な小屋や雑な作りの塀などらしく、村はかなりの大きさの様ですね。

  ティナさんは目に付く物を報告していきます。


「村は報告に有ったものよりかなり大きいわね。

  村の周りにはゴブリンスカウトやゴブリンソルジャーなどが警戒しているわ。

 それと……村の南側は、岩山になっていて村の中心から少し岩山寄りに大きな屋敷ぐらいのボロ小屋があるわ」


  ティナさんは地面に図を描いて説明してくれます。


「恐らくその屋敷がゴブリンキングの巣だな」


 ギルドマスターとアルザックさんを中心に作戦を練っていると、ティナさんが声を上げます。


「あ!ゴブリンキングを見つけた!

  例の屋敷に入って行ったわ」

「決まりだな」

「ティナさん、ゴブリンの亜種や上位種はどれくらいいますか?」


 わたしの質問に、ティナはゴブリンを観察して答えてくれます。


「確認出来る亜種は、ゴブリンアーチャー、ゴブリンソルジャー、ゴブリンメディスン、ゴブリンライダー、ゴブリンリーダー、ゴブリンメイジ、ゴブリンキング、ゴブリンナイト、ゴブリンウィザード、ゴブリンジェネラル、ゴブリンコマンダー、総数は目算だけど400~500くらいだと思うわ」

「おいおい!いくら何でも多すぎないか?」

「い、一度撤退して、援軍を要請したほうが良いのでは……」


  予想以上の数に皆さんが及び腰になっています。

  しかし、ここで引くのは得策では有りません。

  この村は余りにもガナの街に近すぎます。

  これ程の規模の村を維持するのには相応の食料が必要です。

  このままでは、数日の内にガナの街にゴブリンの軍が押し寄せる事になります。

  他の街に援軍の要請を送り、軍や冒険者が準備を整えてガナの街に辿り付くのは最低でも10日、天候などによっては20日ほど掛かるかも知れません。

  それまで、ガナの街が無事だとはとても思えません。

  彼らもそれは分かっているはずです。


「落ち着け!相手はたかがゴブリンだ!

  こちらはDランク以上の冒険者が約100人!

  1人が5匹のゴブリンを仕留めれば良いだけの話だ!」

「そ、そうだな!

 大丈夫、俺たちならやれる!」

「そうですね。取り乱してすみません」


  楽観するのは危険ですがこの場合は仕方ないですね。

  彼らもアルザックさんが皆の動揺を抑えるため、わざと現状を楽観的に言った事くらい分かっているようです。


「っあ⁉︎」

「どうした、ティナ!」


  ティナさんが思わす上げた声にギルドマスターが反応します。

  ティナさんは地面に描いた図に1つ小屋を書き足します。


「この小屋に獣人族の女性が連れ込まれて行ったわ」

「ちっ!そいつは繁殖用に捕まった旅人だろう。恐らく他にも居るはずだ」


  ティナさんに獣人族の女性が捕まって居る小屋の近くに有る小屋を調べて貰うと、3つの小屋に5人の女性が捕らえられていることが分かりました。


「襲撃班とは別に救出班を編成するべきだな」


  ギルドマスターの言葉に皆が頷きます。

  わたしは捕まっている人達がなんとかあと1日耐えられる様にと、顔を思い出せない神様に祈りました。

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