お店とわたし
空高く飛ぶ、わたしの目に懐かしいガスタの街が見えて来ました。
王都での臨時教員の依頼を終えて数日、社交の為、まだしばらく王都にとどまるフレイド様と別れ、オリオンに乗りガスタの街まで帰って来ました。
出発時、オリオンに掴まれた大きな木箱は旅の途中、わたしのアイテムボックスに収納しています。
流石、神様製のアイテムボックスです。
空間魔法とか関係無いようです。
わたしは旅の間、このディメンションボックスの活用法を考えていました。
そして、とうとうわたしは閃いたのです。
このディメンションボックスを活用する方法を!
ガスタに戻って来たわたしは冒険者ギルドなどへの挨拶もそこそこにある場所に向かいました。
そう!
商業ギルドです!
カラン
軽やかなドアベルの音に迎えられたわたしはギルドへ足を踏み入れます。
正面にはいくつものカウンターが有り、右手側の壁にはいくつもの買い取り依頼が貼られています。
わたしは空いているカウンターに向かって進んで行きました。
ギルドに入ってからいくつもの視線を向けられています。
しかし、どこかの商会の下働きとでも思われたのでしょう。
すぐに興味を失ったように視線を外されます。
それでも中にはわたしの正体を知っているのか、こちらを観察し続けている者も居ますね。
「いらっしゃいませ、商業ギルドへようこそ。
Aランク冒険者、漆黒のユウ様とお見受けいたしますが、本日はどう言った御用でしょうか?」
たまたま空いていたカウンターに行ったのですが、そこに居た猫耳の受付嬢さんはこちらが名乗る前からわたしの事を知っていたようです。
流石の情報力ですね。
「実はお店を開きたいのです。
その為に必要な事などを教えて頂きたいのです」
ザワ……
わたしがそう口に出すとギルドの中に居た商人さん達がどよめきました。
「今、メイちゃんが『漆黒のユウ』って言わなかったか?」
「なんだ、知らなかったのか黒いローブに黒髪、黒い瞳の冒険者。
しばらく出ていたみたいだがこの街ではかなり有名だぞ」
「なんだって冒険者が店を?」
「バカ!漆黒のユウって言えばユーリア様の病を治療した凄腕の薬師だぞ!
つまり、ポーション屋か何かを開く積もりなんだろう」
「マジか!なんとか取引したいが……」
なんだか盛り上がっていますね。
「ここでは少し騒がしいですね。
ユウ様、こちらのお部屋へお越しください」
猫耳の受付嬢さん、メイさんに連れられていくつもある打ち合わせ用の小会議室に案内されました。




