討伐隊とわたし
「嬢ちゃん、良いとこに来てくれた」
どうやら私に用事があるようです。
「実は嬢ちゃんに討伐隊に参加して欲しくてな。
指名依頼を出そうと思ってたんだ」
「指名依頼ですか?
普通に募集してくれたら参加しますよ」
「いや、嬢ちゃんには治療要員として同行して貰いたい」
「え?でも、わたしは治癒魔法使いではなく薬師ですよ?」
「その薬師が足りてねぇんだよ」
「治癒院の治癒魔法使いの方に協力して貰ったりとかはしないのですか?」
「治癒院の奴らは戦闘力がねぇからな。
後方での治療要員とはいえ、街の外での戦闘だからな。
何があるか分からねぇ。
この街は辺境に近いが、魔境に面した辺境ほど多くの魔物が出る訳じゃねぇし、迷宮都市や王都でもねぇ、そこまで強い冒険者が集まる街じゃねぇんだ。
治癒魔法が使える冒険者に声を掛けているが数が足りてねぇし、何より解毒の魔法が使える奴が居ねぇのが不味い。
あれだけの規模の村なら薬師小鬼がいると見て間違いないからな」
「毒ですか。
確かにゴブリンメディスンは幾つかの毒草や自分の糞尿などを混ぜて毒薬を作りますからね。
原始的な毒薬ですが、解毒の難しい猛毒です」
「そうだ。更に厄介なのが奴らの毒薬は全て同じと言う訳じゃないってとこだ。
奴らは適当に毒草を混ぜやがるからな。
麻痺毒だったり、出血毒だったりと効果にバラツキがある。
その点、嬢ちゃんなら毒に適した治療ができる。それに戦闘力も申し分ない」
「なるほど………報酬はどれくらい頂けるのですか?」
「 討伐隊の参加者の基本報酬は、金貨1枚。
それに加えて倒したゴブリンの魔石や上位種の素材の売却金を貢献度に応じて配分する事になっている。
治療要員で参加してくれれば基本報酬は金貨2枚だ。」
「2枚ですか?比較的安全な後方での支援活動なので、戦闘参加より報酬は下がると思っていたのですが?」
「毒の治療が出来るのと出来ないのでは、全体の最終的な生存率が大きく変わってくるからな。
貢献度も高いし、使用する薬の素材代にも領主様から補助金がでる」
「分かりました。
治療要員として参加します。」
「そうしてくれると助かる。
薬は解毒用を中心に揃えて欲しい。出立は、5日後の朝の予定だ。
詳しく決まったら知らせる」
「分かりました」
それから5日間わたしはなるべく多くのポーションを作りながら過ごしました。
5日後の朝、北門を出てすぐのところで討伐隊が集合しています。
「嬢ちゃん、主なメンバーの顔合わせをするからこっちに来てくれ」
ギルドマスターに呼ばれ、何人かの人が集まっている場所に行きます。
「こいつは今回、主に毒の治療をして貰う薬師のユウだ。
Dランクの冒険者で戦闘力も高い」
「よろしくお願いします」
「おぉよろしくな、嬢ちゃん。俺はBランクパーティ《妖精の耳飾》のリーダー、アルザックだ」
「アルザックはガナの街で唯一のBランク冒険者だ。
今回の討伐でも1番危険なゴブリンキングの相手をして貰う」
「厄介な毒に対策が取れているならこっちのもんさ。ガッハハ!」
アルザックさんは体格の良いガハハ系のおじさんです。
ギルドマスターと同じ歳くらいでしょうか?
アルザックさんに続きギルドマスターは5人の冒険者を紹介してくれました。
Cランクパーティ《豊穣の杖》のリーダー、リサーナさん。
同じくCランクパーティ《草原の刃》のリーダー、クルツさん。
Dランクパーティ《青き翼》のリーダー、ハルクさん。
そして、治癒魔法使いのアリーさんとティナさんです。
「嬢ちゃんは基本的に後方での治療要員だ。
アリーやティナと行動しろ」
「はい。アリーさんティナさんよろしくお願いします」
「よろしく頼むよ。ユウくん」
「よろしくね。ユウちゃん」
アリーさんは落ち着いた壮年の男性で、ティナさんは18、9くらいに見える女性です。
バインバインです。
何処がとは言いませんがバインバインです。
2度言いました。
大切な事だからです。
西洋風の顔つきなので年齢が分かりづらいですね。
しかし、それは向こうも同じなようで、わたしが15歳だと言うと驚いていました。
12歳くらいに見えるそうです。
「ユウちゃんって人間?エルフとかホビットとかじゃないよね?」
「………人間ですよ」
それからわたしは遠方の国の生まれで、わたしの国の人種はみんなだいたいこんな感じだと(ギリギリ嘘ではない)説明してなんとかティナさんに分かってもらえました。
…………ちなみにティナさんは13歳だそうです。