援護とわたし
わたしが生徒達に追いついた時、バカ少年は少し開けている場所で、岩に行く手を阻まれて立ち往生しています。
そして、少し離れた所にはSクラス生徒達が居ますね。
巻き込んでしまいましたか。
「く、くるな!」
取り巻き君達がパニックを起こしています。
「ちっ」
ドカ
「あぐぅ」
「今だ!」
あ!
バカ少年が平民の生徒をオークの前に突き出しました。
そして、オークが平民の生徒に気を取られている隙に逃げ出したのです。
オークが槍を振り上げてAクラスの平民生徒を狙います。
わたしも飛び出そうとしましたが、視界の端にオークと平民の生徒の間に飛び込もうとしているレオさんの姿が映ったのでここは静観する事にします。
ギン!
「くっ」
なんとかレオさんが滑り込み、槍を盾で防きます。
しかし、オークの腕力は、レオさんを上回っています。
それをマーリンさんが付与魔法でフォローしているようですね。
Sクラスとオーク達の戦いが始まりました。
バカ少年達の方は見張りを付けておけばいいでしょう。
わたしはデネブを召喚し、バカ少年達を追わせます。
「【ウインドカッター】」
アルさんが放った風の刃はオークの頭に直撃します。
威力は大した物では有りませんが、不意を打たれたオークはバランスを崩します。
わたしが教えた通り、魔法を武器の補助として上手く使えていますね。
Sクラスの皆さんは次々とオークを討伐して行きます。
残りはオーク2体とオークジェネラルです。
むむむ!
シアさんが1人でオークジェネラルを抑え、他の4人が手早くオークを討伐する作戦の様です。
「風よ 炎よ 猛き戦士たちに 駆け抜ける翼を 断ち切る刃を【デュアルハイエンチェント】」
マーリンさんが何だか凄そうな付与魔法を唱えました。
皆さんの動きが目に見えて良くなります。
凄いですね。
わたしも付与魔法を練習してみましょうか?
そうこうしている内にオークを討伐した4人がシアさんの元に戻ってきます。
合流したSクラスの5人は連携してオークジェネラルと戦い始めました。
流石にオークジェネラルを簡単に討伐する事は出来ません。
オークジェネラルはレオさんやアルさんの攻撃を巧みに鎧で受けてダメージを減らしています。
クルスさんが投擲した短剣が頬を掠め、オークジェネラルは怒りの雄叫びをあげました。
オークジェネラルは5人の方に飛びかかろうと腰を落とします。
不味いですね。
あの位置からではSクラスとは言え、反応するのは難しいです。
このままでは犠牲者が出てしまいます。
わたしは地面に両手をつくと魔法を詠唱します。
「生い茂る 緑の子らよ 我が意のままに【コントロールプラント】」
わたしの木属性魔法によって操作された木の根がオークジェネラルの足元に僅かに絡みつきます。
それによって足を取られたオークジェネラルは一瞬動きがとまりました。
マーリンさん達はその隙を逃さず総攻撃を仕掛けます。
そして、マーリンさんの付与魔法で強化されたレオさんの斬撃でオークジェネラルの首が切り落とされました。
危ない所でしたね。
窮地を脱した5人は魔石や素材を回収し撤退の用意をしています。
用意が出来たのか5人は森の外を目指して歩き出そうとした時です。
不意にクルスさんが振り向くとこちらに向かって頭を下げました。
あ!
今、目が合いましたね。
隠れていたわたしに気がついていたとは驚きです。
実はわたしのハイディング能力は結構高いのです。
まぁ、ほとんど夜天のローブのお陰ですけどね。
多分ですが、クルスさんはかなりの実力者です。
あえて自らの能力を制限している様に見えますね。
彼は何者なのでしょうか?
おっと!
わたしも帰らないと行けませんね。