監視とわたし
模擬戦や薬草学の講義の間を縫うように情報を集め、薬を調合して過ごしました。
そして、ついに遠征の日がやって来たのです。
「魔石ですか?」
「はい、毎年、成績上位の生徒には遠征での課題が出されるのですが、今年は1人3つの魔石を入手する事に決まりました」
「つまり、魔物を3体討伐することですね」
「はい、魔物との戦闘が前提となりますのでユウさんには森に入って生徒達を見守って欲しいのです。
もちろん、生徒達の命が危なくならない限りは手出しをせずに、影からですが」
「なるほど、分かりました」
「では生徒達も待っていますし行きましょうか」
わたしとサマリオ先生は生徒達が待つ訓練所に向かいます。
訓練所で待っていた生徒達を馬車に乗せて、王都の郊外にある森目指し出発します。
シリウスに騎乗したわたしは、生徒達を乗せた馬車と並走して進みます。
目的地の森は事前に冒険者を雇って強力な魔物は間引きしてあるそうですが、当然取りこぼしも有るでしょう。
そんな生徒達の手に余る魔物が出たら助けるのが今回のわたしの仕事です。
半日ほど経ち目的地である王都郊外の森に到着しました。
「よし、今日はここで野営する。
今晩の見張りは先生達が交代行うからお前達はしっかりと休んで、明日に備える様に!」
引率の先生の1人が生徒達に指示を出しています。
わたしも見張りが有りますから少し休んでおきましょう。
教職員用のテントに向かいながら生徒達を見てみると、事前にしっかりと用意をして来た生徒達と今になって慌てている生徒が半々、そして何もして無いくせに踏ん反り返っているバカが数人と言った所です。
特に前にわたしに絡んで来た貴族のバカ少年は平民の生徒をこき使っている様です。
バカ少年も愚かですが平民の生徒もまた愚かです。
この学院では身分は無関係であると決められているのですから貴族の理不尽に耐える必要など有りません。
ぶん殴ってやればいいのですよ。
教職員用のテントに着いたわたしは少し休む事にしました。
特に何も起こらなかった見張りをこなし次の日です。
今日から生徒達が森に入ります。
わたしもこっそりと見守る為に森に入ります。
一応、一通り森の中を見ておく積もりです。
しばらくシリウスに乗って森の中を進みます。
ごく普通の森に見えますが所々に人の手が入っている場所がありますね。
キチンと手入れされているみたいです。
特に珍しい薬草や希少な素材は見当たりませんが、管理されている為か冒険者などによって無闇に収穫されたりしていないようで、普通の良くある薬草などは豊富に有ります。
その辺の森なら依頼で訪れた冒険者に収穫されてしまうのでこう言った見分けやすくギルドで常時買取を行っている薬草は森に入ってすぐの所にはあまり生えていないのです。
その後もわたしは森の中を見て回りましたが魔物はゴブリンやオークがちらほらいる程度ですね。
生徒達の様子を見ながら森に滞在する事5日目、早い者たちならそろそろクリアする頃ですね。
わたしがそう思った時、魔物の気配を感じました。
森の北側にそこそこ強力な魔物がいるみたいです。
問題は生徒と思われる人間の魔力が魔物の魔力に追われているっぽい事です。
1番奥の森に入っているのはSクラスの筈ですが、それでもここまで森の奥に入り込んではいません。
そもそも彼らは森の北側から逃げてくる魔物を見て北側には近づかず、常に警戒をしていました。
別の誰かが勝手に森の奥にまで入り込んだのでしょう。
わたしは勝手な行動をした生徒が魔物に殺される前に止める為、走り出しました。




