破壊光線とわたし
わたしに遠征に行く為に何が必要かを聞きに来たマーリンさん達、Sクラスの皆さんに情報の大切さと、それを信じ込む事の危うさを教え、武器の状態を見てアドバイスをしました。
マーリンさん達は早速、次の休みに冒険者ギルドや武器屋に行くそうです。
しっかりと用意をしてほしいですね。
次の休み、わたしは冒険者ギルドにやって来ました。
マーリンさん達に偉そうに情報だ何だと言ったのですからわたしも情報を集めておかないと格好が付きません。
フゥッ
おお!
流石は王都の冒険者ギルドです。
軋むどころかまるで抵抗を感じないと言っても過言ではないくらい軽く開いたスイングドアを通りギルドに入ります。
広いホールの中は他の街のギルドと同じく酒場が併設され、大きなクエストボードが置かれています。
「あぁん⁉︎
おい嬢ちゃん、ここは冒険者ギルドだぞ。
まったく、さっきは学院の制服を着た奴らがわいわい喧しいしよぉ。
冒険者ギルドはガキが来る場所じゃねぇんだよ、さっさと帰んな」
どうらやらマーリンさん達は朝一で情報を買いに来ていた様ですね。
男がわたしに絡んで来ました。
このやり取りも何だか懐かしいですね。
しかし、ここは王都の冒険者ギルドです。
この男の様な雑魚ばかりでは有りません。
まぁ、絡まれているわたしを見てにやにやしている雑魚もそれなりにいるのですけどね。
それでも中にはわたしに絡んだ男に哀れむような視線を向けていたり、不愉快そうな顔をしていたりする高ランクの冒険者も居ます。
わたしは絡んで来た男を無視してカウンターを目指します。
「おいガキ!
無視してんじゃねぇぞコラ!」
ギロリ
【威圧の魔眼】を使ってみました。
わたしの【威圧の魔眼】を正面からくらった男は尻餅をつきガクガクと震え始めました。
前に使った時はこの辺りで辞めてしまいましたからね。
それに、相手は学院の生徒でしたから手加減が必要でした。
もう少し強く【魔眼】を使えば気絶させられると思うのです。
「なんだ、なんだこの騒ぎは!
コレは……【魔眼】か!
おい、そこの黒髪、お前だな!
何があったかは知らんが取り敢えずソレを止めろ!周りを巻き込むな!」
おっと怒られてしまいました。
わたしの【魔眼】はまだコントロールが不十分なのか男の近くにいた冒険者まで巻き込んでしまいました。
それに、離れていた冒険者達にも少しですがプレッシャーを与えてしまったようですね。
わたしを止めたのは、顔を左右に横切る様に大きな傷跡が走る大柄な女性です。
女戦士って感じです。
「すみません、少しやり過ぎました」
「いやいや、少しじゃねぇだろ、コレ」
女戦士さんが指差したのはギルドに併設された酒場です。
お酒を飲んで気を抜いていた所にわたしの魔眼の余波……そう流れ魔眼をもろに受けてしまったようです。
まさに死屍累々と言った光景です。
悪い事をしてしまいました。
「あー皆さんご迷惑をお掛けしました。
お詫びに一杯奢ります。
マスター、皆さんにお酒をお願いします」
わたしは酒場のマスターに金貨を手渡し、女戦士さんの元に戻ります。
「あんた何者だい?
ポンと金貨なんて出しちまって。
まぁ、相当強いってのは分かるけどよ。
あぁ、それとあたしはこの王都の冒険者ギルドを任されているフーロだ。
よろしくな」
「ギルドマスターでしたか。
失礼しました。
わたしはAランク冒険者のユウと言います。
現在は王国からの依頼で学院の臨時教員をしています」
「ああ、あんたが『漆黒』か。
噂は聞いているよ。
眼から破壊光線を出せるって本当かい?」
「どんな噂ですか!
嘘に決まっているでしょう!」




