日誌とわたし
王国兵さんと別れたわたしは学院の図書館の最下層、地下14階の端にやって来ました。
ここは奥まっていて警備兵達や広い場所からは死角になっている場所です。
そこの一部、本棚と本棚の間、石が組まれて作られた壁を鉈の背でコンコン叩いて廻ります。
「見つけました」
石が組まれた壁の一角に一見同じ様に見えますが、他の場所とは材質が異なる壁を発見しました。
「多分この辺に……」
わたしは大体の場所に当たりを付けて丹念に調べます。
すると壁の石と石の間に僅かに隙間が空いている場所を見つけました。
おそらくこれは……
ピッ ガァー
わたしがアイテムボックスから取り出した物をその隙間に差し込むと目の前の壁が2つに割れて入り口が現れました。
「やはりそうでしたか、古代魔法言語の文字を見つけたので、まさかとは思っていましたが……」
わたしは隠し扉を開けるのに使った水晶の様な板、セキュリティーキーをアイテムボックスに戻します。
このセキュリティーキーが使えるという事はここはアヤト・イシイ博士の研究所の1つでしょう。
どうやら学院の図書館は古代遺跡を利用して作られた様ですね。
目の前に現れた下へ向かう階段を降りて、少し進むとゴミ箱くんが現れました。
しかし、今回はキチンとセキュリティーを解除して、正面から入って来たので問題ありません。
わたしは棒立ちしているゴミ箱くんを回収しておきます。
人工魔石を取り出すことができれば、いろいろと使い道が有りますからね。
それから探索を続けましたが特に目を惹く物は見つかりません。
前の遺跡にはいろいろと残っていたのですが、この遺跡はキチンと破棄されたのかアイテムも資料も見当たりません。
しかし、研究所の奥に続くドアを破ると6畳程の部屋に直立する人影を見つけました。
「スケルトンですか」
そこに立っていたのは筋肉も無いのにどうやって動いてんだ?とツッコミを入れたい存在であるスケルトンです。
まぁ、魔力で動いているのでしょうけど。
スケルトンは人間の死体に地属性の魔力が溜まって発生する魔物です。
多分この研究所の研究員か何かだったのでしょう。
ガシャ、ガシャ
スケルトンが迫って来ますが所詮は下級アンデットです。
鉈の一振りで討伐します。
スケルトンがいた部屋には簡素な机が一つと椅子だった物の残骸が有るだけです。
お!
机の上に日誌のような物を見つけました。
古代魔法文明の謎技術なのか、未だに紙の体をギリギリ保っています。
所々滲んで読めない箇所が有りますが、この日誌によって、この遺跡は搭乗兵器を開発していた第3研究所だと分かりました。
かつて、この国に攻め込んで来た他国の攻撃は激しく、この研究所にも敵が迫っていた為、廃棄されたようですね。
どうやら現在、図書館になっている深い縦穴は戦車などを整備する格納庫だったみたいです。
そしてあの地下通路は研究所の整備用の通路で、街の地下水道として一部利用されていたようです。
そしてわたしがいるこの空間は一部の研究者のみが出入り出来る極秘の秘密研究施設だったみたいですね。
そして、この日誌の主人にして、さっきわたしに粉砕されたスケルトンこそ、アヤト・イシイ博士の部下で、この研究所を任されていた○ナーベ・ナ○・ミッ○○博士だった様です。…………仕方ありません、文字が滲んで読めなかったのです。
彼は廃棄が完了したはずの研究所に極秘の『何か』を『どうにか』しに来た様です。
そこに何かが起こって外に出られなくなり死を迎えたという訳です。
…………ですから文字が滲んでいるのです。
本当ですよ。
わたしは一応、博士の日誌をアイテムボックスに入れ、別の部屋を探します。
そして、研究所の1番奥、他の扉に比べて遥かに頑丈な扉が有りました。
その扉をなんとかこじ開け中に入ると、とても広い空間に出ました。
薄暗くてよく見えませんね。
「【ライト】」
魔法で明かりを灯したわたしの目にとんでもない物が飛び込んで来ました。
「な、何ですかコレぇぇえ⁉︎」




