ドレスとわたし
上から降り注ぐ暖かいお湯がわたしの身体を伝い流れて行きます。
王都の辺境伯邸のお風呂は広々としていて良いですね。
あ!
今、サービスシーンですよ。
湯船だけでなくシャワーがあるのもポイントが高いです。
雪獅子のたてがみ亭はちょい高級な宿なのでお風呂は有ります。
しかし、シャワーはないのです。
わたしもそろそろ拠点として自分の家を手に入れましょうか?
もし、家を買うならお風呂とシャワーは必須です。
ガスタに帰ったら考えてみましょう。
さて、サービスシーンは終わりです。
わたしはこれからフレイド様と国王様に会いに行く事になっています。
「あれ?」
脱衣所に置いておいたわたしの服がありません。
変質者の犯行でしょうか?
「ユウ様のお召し物でしたら、ただいま洗濯しております。
代わりのお召し物をご用意いたしましたのでこちらをお召し下さい」
「は、はぁ」
わたしの服は洗濯してくれているようですね。
そして、代わりにと手渡された服ですが…………やけにひらひらのドレスです。
…………どうやって着るのでしょうか?
「お気に召しませんでしたか?」
「いえ、可愛い服だとは思うのですがドレスを着た事がないので……」
「あぁ、失礼いたしました、ユウ様は大陸の外のご出身でしたね。
では、私がお手伝いさせて頂きます」
辺境伯家のメイドさんの卓越した技術によってわたしは、あっという間にドレスアップされました。
メイドとは凄い存在なんですね。
しかし、ひらひらです。
「ユウ様、旦那様がお待ちです」
「はい、今行きます」
いい生地を使っているようですが少し防御力に心配がありますね。
バッグをガサゴソと漁るフリをして夜天のローブを取り出し羽織ろうとすると、目に涙を溜めたメイドさんと目が合いました。
わたしは何も言わず夜天のローブをしまいました。
仕方ありません。
「ユウ殿、よく似合っているではないか」
「そうですか?ドレスを着たのは初めてです」
「貴族の令嬢の様だぞ」
「ふっふっふ、もっと褒めてもいいですよ?」
「あぁ、黙っていれば貴族の令嬢の様だぞ」
わたしとフレイド様は軽口を交わしながら馬車に乗り込みます。
馬車は貴族街を城に向かって進んで行きます。
グリント帝国の城はスペインのコカ城とドイツのホーエンツォレルン城をたして2を掛けたような感じでしたが、ミルミット王国の城はイングランドのウォリック城を2乗した感じです。
城に入ると応接間に通されました。
「この後、謁見の間で国王陛下とお会いするのですか?」
「いや、しばらくすればこの部屋に陛下がいらっしゃるだろう」
「あ、謁見の間は使わないのですか」
「今日はな」
わたしとフレイド様が取り留めのない話をしているとノックがなり、豪華な服を身に付けた男性が入室してきました。
彼がこの国の国王様ですか。




