別れとわたし
むむむ!
思ったよりも柔らかいですね。
覚醒の宝玉はわたしの眼孔へとヌルっと収まりました。
では、早速魔力を流してみましょう!
お!
おおおおお⁉︎
「目が見えます!」
「うまく行った様だな」
「はい、とても良く見えます。
元の目より、見えているかも知れません」
「うむ、もう見た目からは分からんな」
「ユウ様、鏡をどうぞ」
「ありがとうございます」
マリサさんから鏡を受け取り覗き込みました。
鏡に映っていたのは失う前と同じ黒い瞳です。
血を吸わせたからでしょうか?
DNAとかをどうにかして何かが起こったのだと思います。
「【魔眼】の方は良く分かりませんね?」
「ふむ、習得出来なかった可能性もあるが、まだ覚醒の宝玉が馴染んで無いからじゃないか?
たしか、文献でも【魔眼】を覚醒するまでに数年掛かった者も居れば、覚醒の宝玉を使用して直ぐに覚醒する者も居たとあったはずだ」
「そうですか……まぁ、気長に待つとしましょう。
目が見える様になっただけでも有難いです」
わたしとしては自身の未熟さが招いた結果ですから特に気にしていなかったのですが、言葉には出していませんでしたがリゼさんとフューイ代理が少し気にしていましたからね。
「ユウ殿、本当にありがとう。
ユウ殿の調薬は大変勉強になったよ。
こんなに自分の技術が上がったと実感したのはアカデミーの頃以来だ」
「ははは、お役に立てたなら嬉しいです」
ガボンさんは自分の知らない技術を目にしたのが嬉しいみたいですね。
「ユウ殿は直ぐにミルミット王国に帰るのか?」
「はい、ガスタの街の領主様であるフレイド様の奥様がそろそろ御出産の時期なので、心配ですから直ぐに戻ろうと思います。
もしかしたらもう産まれているかも知れませんが」
「そうか、道中気をつけて帰るのだぞ」
「ユウ様、もしよろしかったらフレイド様とミッシェル様にお手紙を届けて頂いてもよろしいですか?
もちろん、指名依頼という事で」
サリナ様から手紙の配達を依頼されました。
サリナ様はフレイド様の同級生らしいですからね。
ミッシェル様とも面識があるそうですし。
「勿論、構いませんよ」
こうしてわたしは新たな依頼を受けて、城を後にしたのでした。
「そうですか、ユウさんはもうお帰りになるのですね」
「はい、また帝国に来る事があったら必ず顔を出します」
「はい、お待ちしております」
孤児院でカームさんとナギさんに挨拶をすませたので、後は帰るだけです。
「ユウさん!」
孤児院を出ようとしたわたしに子供達が駆け寄って来ました。
わたしはみんなに別れを告げて行きます。
ミザイやアリス、マールちゃんもすっかり良くなりました。
ミザイの顔には少し傷跡が残りましたが、本人はあまり気にしていない様なので良かったです。
なかなか濃い時間を過ごしましたが、ミッシェル様も心配です。
ガスタの街に帰るとしましょう!




