手紙とわたし
「ミザイ! 一体何が⁉︎」
「どいて下さい」
わたしは慌てるカームさんを押しのけてポーションを使い、ミザイを治療します。
かなり酷い傷です。
身体中をわざと浅く切られています。
傷はポーションで治せますが失った血を戻す事は出来ません。
取り敢えず増血薬を飲ませておきましょう。
「身体の傷は塞ぎました。
しかし、血を流しすぎています。
安静にして休ませないと」
「は、はい。
レン、エミーリア手伝って。ミザイをベッドに運びます。
べネットは神父様を呼んできて」
「「はい」」
「分かった」
「うぅ……」
「ミザイ!」
ミザイが目を覚ました、しかし、まだ意識はハッキリしていないはずです。
「シスターカーム……」
「もう大丈夫です。
話は後で、今は休みなさい」
カームさんが安静にする様に促しますが、ミザイはそれに逆らい少し身体を起こすと、視界に入ったわたしに何か伝えようとしています。
近寄ってミザイの声に耳をすませます。
「ぐぅ……ユウ…….さん。
手……紙…………ポケット」
「手紙?」
わたしがミザイのポケットを探ると紙切れが出て来ました。
紙には下手くそな地図とあまり綺麗ではない文字で何か書かれています。
『ガキの命が惜しかったら地図の場所に1人で来い、宮廷やギルドに知らせたらもう1人のガキの命は無い。
もし、来なかったらそこのガキの様に斬り刻んで街の広場に晒す』
グシャ
手紙を握り潰しました。
「舐めた真似をしてくれますね」
「ユウさん、なにが書かれていたのですか?」
わたしは無言でカームさんに手紙を渡します。
「こ、これは!」
カームさんがくしゃくしゃになった手紙を広げ、目を見開いています。
「ユウさん、コレは一体⁉︎」
「わたしは現在、宮廷で高き釣鐘に襲撃されたあるお方の解毒の依頼を受けています。
そして、解毒を阻止する為、高き釣鐘は暗殺者を送り込んで来たのです。
恐らくコレも……すみません、巻き込んでしまいました」
「で、でも、高き釣鐘が子供を人質に取るなんて……」
「高き釣鐘も所詮は犯罪組織だったという事です」
カームさんが何かを言う前にいくつものポーションを取り出し押し付けます。
「何か有ったら使って下さい」
「ゆ、ユウさん」
アリスはわたしが必ず無事助け出します。
そして、首謀者には生まれて来た事を後悔させてやりましょう。
わたしは孤児院を飛び出すと地図に描かれていた場所を目指して駆け出しました。




