強盗とわたし
城下町へとやって来たわたしは大通りの大きなお店を中心に覗いて行きます。
冒険者ギルドに行こうかとも思いましたが、どうせ何時もと同じ展開になる事は目に見えています。
「この本はなかなか良いですね、おお!こっちの本も興味深いです」
「おいおい、お嬢ちゃん。
本は結構高いんだぞ、お金はあるのかい?」
「ご心配なく、あと店主さんの後ろの棚の1番上の右から2番目の本も取って下さい」
「本当に大丈夫なのかい?」
本屋さんのカウンターの上にはわたしが選んだり、店主さんに頼んで出して来て貰った数々の本が積み上がっています。
「全部で金貨5枚、小金貨2枚と銀貨8枚だよ、どれを辞めるかい?」
「いえ、全て買います」
わたしはお金を支払うと本を全てアイテムボックスにしまい、本屋さんを出ました。
店主さんはわざわざ外にまで見送ってくれます。とても良い買い物をしました。
大通りを進むと屋台が沢山ある広場に出ました。
ちょうど良いのでここでお昼にしましょう。
良い匂いのする屋台を選び注文しました。
「かなりスパイシーですね」
宮廷で食べた料理でも思いましたが、王国の料理より帝国の料理の方が香辛料が効いています。
帝国は香辛料の産地であるバレク地方を支配下に置いているので帝国料理には豊富な香辛料が使われているのでしょう。
先ほど買った『帝国料理の起源』と言う本に書いてありました。
それからわたしは、いくつかの屋台を回り串焼きやサンドイッチなどを食べ比べて行きました。
「ふぅ」
満足したのでベンチで少し休憩です。
「……………………」
わたしはベンチから立ち上がると適当なお店を眺めながらフラフラと街の中を歩きます。
そして、だんだんと人気の無い裏路地に迷い込んでしまった…………と、見える様に歩きます。
そして、辺りに完全に人の気配が無くなった頃、物陰から2人の人物が飛び出して来ました。
背後にも3人が逃げ道を塞ぐ様に立ちはだかります。
屋台の広場からずっとわたしを監視していた奴らです。
「い、痛い目に遭いたくなければ大人しく金を出せ!」
「大人しく金を出せば直ぐに大通りまで送ってやる」
「……………………」
小さな作業用ナイフで武装した強盗?でした。
タダの強盗なら叩きのめして終わりなのですが…………
「あー君たちの要求は分かりました。
お金が必要な理由でもあるのですか?」
強盗?はどう見ても1桁、大きいので10歳くらいの少年少女達です。
浮浪児でしょうか?
それにしては身綺麗な格好をしています。
いえ、身綺麗と言ってもドロドロに汚れている訳ではないと言うだけで全員着古して、裾などもボロボロです。
「うるさい! 大人しく金を出せ、コッチにはナイフが有るんだぞ」
コッチには戦斧が有るのですが今はアイテムボックスの中です。
宮廷内を戦斧を背負ってうろうろするのは憚られるので帝都に滞在している間はアイテムボックスにしまっているのです。
見た目がおさ……若く見えるわたしが屋台で沢山買い食いしていたのでお金持ちのお嬢様とでも思われたのでしょう。
わたしは地面を蹴ると一足で前を塞いでいた2人の少年の背後に回り込みます。
「「え⁉︎」」
2人の少年はわたしを見失いポカンとしています。
その少年達のそれぞれの肩にシンデレラとスノーホワイトを軽く載せます。
勿論、刃では有りませんよ刃の下の柄の部分です。
「Aランク冒険者であるわたしを相手に強盗とは良い度胸ですね」
少しだけ、ほんの少しだけ殺気を出してみます。
すると戦斧を当てた少年達だけでなく唖然と見ていた少年少女もガクガクと震え出しました。
2人の少女の小さい方など今にも気絶しそうです。
まるでわたしが襲っているかの様です。




