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暗殺者とわたし

「みなさん落ち着いて下さい。

  先ほど、提供された全員分の料理から毒が見つかりました。

 状況から考えてみなさんの中に暗殺者がいると思われます。

 そして、料理は提供される前に毒味がされていました。

 つまり、料理人さんの犯行である可能性は低いです」


 わたしの言葉に2人のメイドさんは慌てて潔白を主張します。

 ガヤガヤと騒ぐなか、中年のメイドさんが一歩前に出ました。

 

「わたしは暗殺者では有りません!

 疑うのならこの場でそのデザートを食べて見せます!」

「落ち着きなさい、君は若い時から宮廷に仕えてくれている。

 疑わしいと言うだけで君を失うわけには行かない」

「陛下……」


 おー、皇帝陛下がなかなかイケメン発言をしました。


 まぁ、メイドさんとは言え皇帝陛下の側に付いている侍女ですからね。

 当然、それなりの家の出身でしょうし、簡単に首を切る(物理)と言う訳には行かないのでしょう。


 非常に美しい主従の絆を見せて貰いましたが1つわたしは尋ねなければなりません。


「ところで、なんで毒が入れられていたのがデザートだと分かったのですか?」

「え……そ、それは騒ぎが起こったのはデザートをお出ししてすぐだったのでそう思っただけです!」

「なるほど」


 メイドさんの言葉は筋が通っています。

 しかし…………


「なっ⁉︎」


 ビュッ

 シンデレラが空を切りました。

 わたしの戦斧を反射的に躱したメイドさんは軽く背後に跳び両手にナイフを構えています。


「危ないですね」


 わたしは彼女が背後に跳び上がった時に投げられたナイフの柄を掴み受け止めています。

 ナイフは刃が黒く塗られており少し湿っていますね。


 スンスン

「また、毒ですか、一応言っておきますがわたしは耐性を持っているのでこの程度の毒は効きませんよ」

「何故気がついたのか、聞いても良いかしら?

  あの時点では私の正体は分からなかったはずよね?」


「勘です」


 勿論冗談です。

 彼女からは臭い消しの匂いがしました。

 薬師が調薬時の匂いを消したりする薬です。

 普通の人間には感じ取る事なんて出来ない匂いですが、神によってハイスペックになったわたしの身体と、薬師の知識の前には通用しません。


 推理も何も有った物では有りません。

 

「観念した方が良いですよ」


 わたしと騎士さん達に取り囲まれた中年メイドさんに降伏を勧めます。


「そうね、降参よ。

 あなただけでも殺せれば任務は成功だったのだけど……どうやら無理そうね」


 彼女は次々と刃物や毒薬と取り出すと騎士さんに渡して行きます。


「さぁ、連れて行って頂戴」


 彼女は騎士さんにそう言いますがわたしは口を挟みます。


「まって下さい」

「なによ?」


 彼女は近づいてくるわたしに少しビビりながら尋ねます。

 わたしは騎士さんに両手を取られている彼女の懐の隠しポケットから髪留めに偽装された隠しナイフを取り出しました。


「…………」

「…………流石ね」


 暗殺者であった中年のメイドさんは騎士さん達に連行されて行きました。

 皇族の暗殺未遂ですからね。

 もう、会う事は無いでしょう。


 しかし彼女の言葉から考えるに、単独の暗殺者が雇われていた訳ではなく何かしらの組織が関わっているようですね。

 

「まさか何年も宮廷に仕えていた彼女が暗殺者だったとは……」


 皇帝陛下は少し落ち込んでいますね。

 信頼していた臣下の裏切りですからね。

 背後関係などが彼女の尋問で明らかになれば良いのですが……。

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