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狩りとわたし

 

  強い日差しが肌に突き刺さる様になって来ました。


 この国には、日本の様なハッキリとした四季はなく、何となく暑くなって来たり、それとなく寒くなって来たりします。


 まぁ、最近では日本でも、地球温暖化の影響なのか、四季が曖昧になって来ています。

 特に秋など、体感では1週間もなかった様な気がします。

 地球に残っている皆さん頑張って下さい。

  CO2とかを減らしたり、ネクタイ無しで仕事をしたりして下さい。

 地球に残ってないわたしは、片目での生活にも慣れて来て、現在はフレイド様の依頼でカルバン伯爵様とやらにお届け物を届けに行く途中です。


 何でもカルバン伯爵領は、アプル(りんごっぽい果物)の産地らしいのです。

  アップルパイ……いえ、アプルパイが食べたいです。


「お!」


 カルバン伯爵領な向けて飛行中に、以前の半分になってしまったわたしの視界に最近よく見る光景が飛び込んで来ました。

 わたしは悩む事なく寄り道をする事を決めます。


 そこそこ急ぎの届け物らしいですが、多少寄り道をしても、わたしなら早馬などよりも、ずっと早く荷物を届けられますからね。


「オリオン、アレを狩りますよ」

「キュー」


 背中をポンポンと叩くわたしに短く答えたオリオンは、鋭く旋回すると眼下に見える馬車に向かって急降下して行きます。


「ん? な、なんだ!」

「何か来るぞ!」


 わたしは双斧を取り出しながら、ガヤガヤと騒いでいる奴らの下に飛び降ります。


「て、敵襲!てきじゅ!」


 わたしの姿を認めて、仲間に警戒を促した男を落下の勢いのまま2つに分けます。


「な、なんたばぁ」

「ひっ! や、やめれゃべ」

 

 馬車の近くにいた2人を流れる様な斧捌きで始末した後、ひと塊りになり、何とか商人を守っていたであろう冒険者達にポーションをいくつか投げ渡します。

 2人ほど冒険者らしき人物が血を流して倒れているのです。


「傷ついた仲間に使って下さい。

 その後はその場で動かず、商人さんを守って下さい」

「は、はい」


 ポーションを受け取った16歳くらいの冒険者は仲間の2人に護衛を任せて、すぐに倒れていた冒険者達の手当てを始めます。

 

「さて、わたしは少し掃除をしておきましょうか」


 わたしが双斧を構えると馬車を襲っていた盗賊共が慌て出しました。


「お、おい、あいつまさか……」

「黒髪、黒ローブの鳥に乗って斧を持った片目のガキ……」

「ま、間違いねぇ、前に聞いた情報通りだ、し、《漆黒》だ!」

「ぐっばかな《漆黒》だと」

「そんな、そんな、イヤだ、助けて!」

 

 あ、数人の盗賊が逃げ出しました。

 愚かですね。


「ギュッ!」

  ドゴッン!


 わたしに背を向けて逃げ出した盗賊はオリオンのサンダーブレスを受けて、文字どうり消し炭になってしまいました。


「ギューギュ!」


 オリオンは盗賊の逃げ道を塞ぐ様に着地しました。

 ふふふ、挟み撃ちです!


 すると、盗賊の中でも比較的まとも装備を身につけた男が手にしていた剣や懐から取り出したナイフなどを捨て、両手を挙げました。


「と、投降する。命だけは助けてくれ」

「お、お頭!」

「随分と都合の良い話ですね。

 自分は人を殺し、財産を奪っていたのに、命が惜しいから助けてくれ、ですか?」

「そ、そうだ、俺は命が惜しい、頼む。

  抵抗はしない」

「………………いいでしょう。

 投降する意思がある者は3つ数える内に武装を解除して両手を頭の後ろで組み、膝立ちになって下さい。

 1つ……2つ……3つ……」


  ガシャ、ガシャと剣やナイフが地面に捨てられ盗賊共が膝立ちになって行きます。結局、投降せずに武器を構えて居るのは4人だけです。

 

「おいおい、お頭! あんた正気か⁉︎

 《漆黒》だかなんだか知らねぇが、こんなガキ1人に情けねぇ!

 だだの不意打ちしかできねぇガキだろう!」


 おや、バカが紛れていましたか。


「おお! 貴方はとても勇ましいですね。

 こんな小娘にあっさりと投降する情けない奴らとは違います」


 わたしは双斧を地面に突き立てると、手ぶらで剣を構えた盗賊に近寄って行きます。


「はっ! なんだ急に。びびっちまったか?

 大人しく謝るなら、殺す前に俺が一晩相手してやってもいいぞ」

「はっはっは、コレは面白いです。

  最近のゴブリンはジョークも言うのですね」

「あん⁉︎ ゴブリンだと!」

「ええ、貴方は彼らよりも蛮勇で、愚かなゴブリンですよ」

「てめぇ!」


 真っ赤な顔をして、盗賊が剣を振り下ろして来ます。


  ガキン


 わたしは左手に数枚の【光鱗】を創り出し、盗賊の剣を受け止めます。


「な、な、なん……」

「お疲れ様です」


 わたしの右手で背中の水龍の戦斧を引き抜くと、愚かな盗賊の首を断ち切りました。


「さて、後3人ですか」


 わたしは未だに武器を構えたまま真っ青な顔をしている盗賊の方に向き直るのでした。


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