表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/322

防御力とわたし

「はぁぁあ!」


ガギ!


わたしが振り下ろした水龍の戦斧が、グランアイズの強固な外皮に弾かれてしまいます。

以前より防御力が上がっている様な気がします。


「グガァ!」

「がっは‼︎」


グランアイズの振るう鋭い爪を半歩下がって躱したのですが、グランアイズは爪を振り切ったまま身体を回転させて、ムチの様にしなる尻尾を叩きつけて来ました。


咄嗟にガードしようとしましたが弾き飛ばされてしまいます。

体格の差からくるパワーが違いすぎますね。


かなりの勢いで岩山に叩きつけられました。

夜天のローブのお陰で傷などは有りませんが、衝撃はモロに食らってしまいます。


ゴホ、ゴホ


「グルルゥ!」


崩れた岩の中からわたしが立ち上がった時、頭のうえから淡い光を帯びたグランアイズの爪が降って来ます。


わたしの頭の中に警報が鳴り響き、背筋に冷たい感覚が走ります。

アレはヤバイですね。


わたしは叩きつけられた衝撃で少しフラつく体で、無理やり身体強化を行いその場を跳びのきました。


グランアイズの魔力が凝縮された爪がさっきまでわたしが立っていた場所に打ち込まれます

すると地面が爆ぜ、砂や石飛礫がわたしに殺到します。


夜天のローブを顔の前に翳して、直撃を避けましたが、手や頬に細かい傷ができてしまいました。

衝撃もかなりのもので、何度も食らうとまずいですね。


「縛れ 束縛の蔦 【グリーンバインド】」


わたしが投げたタネがいくつもの蔦となり、グランアイズに絡みつきました。

しかし前回、数分の足止めができたこの拘束魔法ですが、今回はグランアイズの尻尾の一振りで切り払われてしまいました。


かなり大雑把ですが、魔力を変形させていますね。

これはどちらかと言うと魔法ではなく戦技の技術です。


【断空】や【月刃】の様に魔力を刃に近い形にかえて尻尾に纏わせている様です。

あんな物を防御なしで、食らったら胴体が真っ二つです。


さっきはただの叩きつけで良かったです。

夜天のローブが有るので流石に真っ二つにはならないでしょうけどあの尻尾の斬撃……そうだ!【尾斬】と名付けましょう。

あの【尾斬】をまともに受けては戦闘不能になる可能性が高いです。

水龍の戦斧を双斧に持ち替え、魔法を詠唱します。


「凍てつき 連なれ 【アイスピラー】」


奴の周りに何本もの氷の柱を作り出し、行動を制限します。

魔力を込めた攻撃をされれば、スノーホワイトにより強化された氷の柱でも砕かれるでしょう。

しかし、少しは動きが鈍る筈です。 


わたしは氷の柱により動きが阻害されているグランアイズに駆け寄ります。


グランアイズが尻尾に魔力を集め始めますが、構わず懐に飛び込むと魔力を2層に凝縮した双斧を交互に叩きつけます。


ガギギギィ‼︎

「か、硬いですね」


まさか、2層の魔力でコーティングした

双斧が弾かれるとは思いませんでした。

魔力を層にして凝縮するこの技は以前使っていた、ただ魔力を凝縮するだけの技よりも強力です。


ワイバーンならスパスパと切れる程の切れ味が有るのですが、グランアイズの身体に纏った魔力は非常に強固な防御力を持っている様です。

これは竜種の持つ魔力が人間を遥かに超えているからでしょう。


わたしも神様から貰ったチート性能のボディのお蔭で人間としてはかなり高い魔力を持っています。


しかし、種族の壁は厚いですね。

そもそも、ストーンドレイクの討伐ランクはAの下位だった筈です。

つまりAランクと判断されるだけの魔力を保有しているのです。


通常のストーンドレイクはその莫大な魔力を使用出来なかったので『力こそパワー』な感じの脳筋扱いされていたのです。 


奇しくもわたしの一撃で魔力の扱い方を覚えたグランアイズは、強靭な肉体、高い魔力を併せ持つ魔物に成長してしまったのです。


「はあぁぁ!」


双斧を水龍の戦斧に持ち替え魔力を凝縮して行きます。


グオォォン‼︎


頭のすぐ上をグランアイズの尾斬が振り抜かれて行きました。

もう少し下だったらわたしの首も氷の柱と一緒に切り裂かれていたでしょう。


この世界に来て何度か死にそうになりましたが、これはかなり上位に入りますよ!

ちなみにダントツの1位は、Bランク試験の時のリゼさんの攻撃です。

魔法とか斬撃とかそんなチャチなものじゃあ断じてないです。

もっと恐ろしい物の片鱗を味わいました。


「はっ!」


何とか6層の魔力を纏わせる事が出来ました。

しかし、技名を叫ぶ余裕が有りません。


ズガガガガガァ!


わたしの渾身の一撃はグランアイズの胸に大きな裂傷を与えましたが、一撃で倒す事は出来ませんでした。


まさか、ここまで防御力が高いとは予想外です。


「ギガァァア!」


怒り狂ったグランアイズは、技を放ち隙ができたわたしに右腕を振り払いました。


「ぐはぁっ!」


痛みを堪えて、何とか空中で体勢を取り直すと、岩山に垂直に着地します。

危うく、また叩きつけられる所でした。


「グルルゥ!」

ドガガガァン!


岩山への直撃を防いだ事に安堵し、僅かに隙ができてしまったのでしょう。

直後に叩き込まれた尾斬をまともに食らってしまいました。


凄まじい衝撃に岩山が砕け散ります。

何とかわたしの上半身と下半身はまだくっついていますが、これは不味いです。

ダメージを受けすぎました。

わたしは朦朧とする意識のなか、何とか呪文を詠唱します。


「契約により 扉を開く 羽ばたく雷光を我が元に 【召喚:サンダーバード】」


残り少ない魔力を振り絞りオリオンを召喚したわたしは、腰の辺りを鷲掴みにされ、グランアイズがこちらに怒りの咆哮を上げるのを見下ろしながら、意識を手放すのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ