因縁とわたし
「か、か、顔にき、傷のあるストーンドレイクをと、討伐すれば良いのですか?」
「そうだけど…………どうしたの?
そんなに動揺して?」
「ど、動揺ですか⁉︎
ななな何のことか、わかりゃ、分かりませんね!
り、リゼさんは、一体何をい、言っているのでひょう。」
「ココまで判りやすく動揺する人も珍しいですね」
「そうねぇ…………さて、ユウちゃん。
お姉さんと少しお話しましょうね」
「ひ、ひゃい」
「なるほど、ではグランアイズはユウさんと戦い、魔力を凝縮する技を身につけた可能性が高い訳ですね」
「そうねぇ、でもユウちゃん。
魔力の凝縮は知らなくてもしょうがないけど……依頼ではなかったとは言え、ストーンドレイクの様な強力な魔物が現れたならギルドに報告して欲しかったわね」
「いえ、わたしは報告しましたよ。
『あの辺のボスだったアイアンビーストがストーンドレイクに食べられた』と」
「本当? それならギルドの伝達ミスね。
まったく、こんな、重大な情報を伝達し忘れる何て!減俸と始末書ね。
それで、ユウちゃんは誰に報告したの?」
「……………………リゼさんです」
「……………………」
「……………………」
「……………………リゼさん、貴女は3ヶ月の減俸と始末書です」
「……………………はい」
岩山を目指して空を進みます。
ガスタを出発して数時間で岩石地帯に到着しました。
地上を走るよりも圧倒的に速いです。
岩石地帯に降り立ったわたしはオリオンを送還し、シリウスを召喚します。
「シリウス、因縁のあいつを探しますよ」
「グァ!」
岩場を駆け回り、グランアイズを発見しました。
奴は今、2つ先の岩山にいます。
こっそりと回り込んで不意打ちしましょう。
え? 卑怯?
この世は弱肉強食、やるかやられるかなのです。
卑怯ではなく、戦略的と言って欲しいですね。
シリウスを送還したわたしは、岩山の陰に身を隠しグランアイズの様子を窺います。
奴は日の当たる場所で、寝そべっています。
ドラゴンは変温動物なのでしょうか?
ここはグランアイズがわたしに気づいていない内に魔力を凝縮して、一気に討伐しましょう。
グランアイズは、身体が岩の様に硬い皮で覆われています。
なるべく皮の薄い腹や関節に攻撃を当てるべきでしょう。
わたしは一旦顔を引っ込めようと一歩足を引きました。
パキッ
「あ!」
足元にあった小枝を踏み砕いてしまいました。
するとグランアイズが素早く立ち上がり、こちらに向かって唸り始めます。
「まさか現実に、こんな漫画みたいなことが起こるなんて…………心臓発作で死んで異世界転移したわたしが言える事ではないですね」
仕方ありません。
正々堂々と正面から戦いましょう。
え? 不意打ちですか?
そんな事は卑怯者のする事です!
これはAランクに上がる為の試験ですから正々堂々と戦うべきです!
わたしは水龍の戦斧を構えてグランアイズの前に身を晒します。
「お久しぶりですね、お元気でしたか?」
「グルルゥラァ⁉︎」
「うわ⁉︎」
グランアイズは、取り付く島も無くわたしのいた場所に鋭い爪を振り下ろして来ました。
なんとか避ける事が出来ましたが、わたしの代わりに岩が粉々になりました。
わたしが喰らえばぷちっといくに違いありません。
「さぁ決着を「グルルゥ!」しょう!」
セリフが被ってしまいました。
恥ずかしいですね。
誰も見て無くて良かったです。
こうしてわたしのランクアップ試験がグダグタな感じで始まりました。




