表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/322

痕跡とわたし

 ようやくガスタの街が見えてきました。


 なんだか帰ってきた感があります。

 王女様との邂逅は予想外でしたが、結果だけを見るとこの1カ月で一般的な平民の年収の数百倍くらい稼ぎました。

 わたし、今、大金持ちです。


 帰りの道中、テレサ様に貰った影縫いの刃の効果も試してみました。

 単純な攻撃力は斧や鉈の方が上ですが、使い方次第ではとても便利なものです。

 効果を確かめる際、少し街道が平和になったりしましたが、特に問題は有りません。


 そこそこの儲けでした。


 


 ガスタに帰り着いたその日は、雪獅子のたてがみ亭で休み、翌日に辺境伯邸に足を運びました。


 ラクガン子爵様から、フレイド様に宛てた手紙を預かっているのです。

 シルバさんにいつもの応接室に案内され、しばらく待っているとフレイド様がやって来ました。


「お久しぶりです、フレイド様」

「久しぶりだな、ラクガン子爵の嫡男の治療はうまくいったのか?」

「はい、こちらがラクガン子爵様から預かった手紙です」


 フレイド様が手紙を読んでいる間、紅茶で喉を潤します。


「………………これはまた、大暴れだな」

「それほどでも有りませんよ」

「冒険者となって1年程で名前持ちの魔物を討伐するとは、まるで至高の冒険者の冒険譚だな」

「リゼさんのお話ですか?」

「ああ、彼女の冒険譚は大陸中で語り草だよ。

 ダゴン、ヒュドラ、ベヒーモス、ノーライフキングなどの1体で国家崩壊の危機に陥る程の強力な魔物を単独で討伐してな。

 さらに、6年前イザール神聖国が崩壊した時の余波により、王都にエンシェントドラゴンが迫った時、王都の手前にある平原で討伐し、とうとうSランク冒険者となったんだ。

 スラム出身の孤児だった彼女が救国の英雄にまで上り詰めるサクセスストーリーは多くの人々の憧れとなったんだよ」

「し、知りませんでした」


 リゼさんは正真正銘の英雄だったのですね。

 普段の姿からは想像も出来ません。


「リゼッタとエンシェントドラゴンの死闘の爪痕はまだ王都の前の平原にのこっているぞ。

 もし、王都に行くことがあったらみて見ると良い」

「楽しみにして置きます」

「ユウ殿の冒険譚もその内、本や歌劇になるかも知れないぞ?」

「リゼさんの冒険譚に比べれば大したことないですよ」

「いやいや、謙遜するな。

  若く、見目麗しい少女が強大な魔物を倒す。

  如何にも、多くの人々に受けそうだろう。

  それに、リゼの残した平原の戦いの痕の様に、大きな痕跡を残していると、ファンは喜ぶらしいぞ」

「わたしはそんな痕跡なんて……」

「ミルガンの海に大木を生やしたそうじゃないか」

「うっ!」


 そうなんです。

 ラグラーナとの戦いの中で土壁の補強に塩水に強い植物をイメージして木魔法で作った大木なのですが、ミルガンの人々は誰もその木がなんの木なのかしらなかったのです。

 わたしがよくよく調べてみるとその木は【海神の霊木】だったのです。

 水の精霊の加護を受けた希少な植物です。

 もちろん、ミルガンの人々には黙っておきました。

 絶対面倒な事になりそうですからね。

 葉っぱや、樹液など、薬の素材になる物をこっそりと採取して、あとは知らぬ存ぜぬで通しました。

 ラクガン子爵様はかなり怪しんでいましたが、なんとか切り抜けました。


「いろいろと、問いただしたい事はあるが、ユウ殿には恩義があるからな、知らなかった事にしておこう」

「ありがとうございます」

「さて、このあと夕食でもどうだ?

  ユーリアも会いたがっていたからな」

「すみません、このあと用事があるんです」

「そうか、ではまた日を改めて誘うとしよう」

「はい、ではまた」


 1時間程の歓談を終えて辺境伯邸を後にします。

 次は孤児院に向かいましょう。

 ワイバーンクッキングです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ