船とわたし
ラグラーナ討伐から10日が経ちました。
ミルガン子爵家の長男、フレッドさんも回復し、ラクガン子爵様から報酬を受け取ったのでそろそろガスタの街に帰ろうと思います。
当然、ラクガン子爵様には軽く引き留められましたが、今の所ガスタの街がわたしのメインの拠点です。
魚も買い溜めしましたし、刺身も堪能しました。
意外にもこの国の一部、ミルガンの街の様な港町や漁村などでは、魚の生食の文化が有りました。
刺身は主に塩とオリーブオイルや柑橘系の汁を使い、カルパッチョの様にして食べられていました。
これも美味しいのですが、やはりわたしは醤油が良いです。
わたしは、最近完成したばかりの醤油で刺身を食べて見たのですが、1年ぶりの醤油で少し涙が出ました。
当然ですが、わたしが作った醤油は日本の優秀な企業が努力を重ねて作った物には遠く及ばず、まだまだ改良の余地が有りますが、それでもコレは紛れもなく醤油なのです。
わたしは醤油のお陰で魚を美味しく頂きました。
ちなみに流通技術の発達していないこの世界では、海から離れた街などでは生の魚は『手に入らない』とまでは言いませんが、馬や氷属性の魔法が使える者に交代で休みなく運ばせる必要がある為、非常に高価なのだとか。
それに、取れたての新鮮なものでなければ刺身では食べられないので、王都辺りでは魚を生で食べると言うと、変人扱いされるらしいです。
それから、ミルガンの街には魚醤が有りました。
この辺りの地域では一般的な調味料として、広く扱われています。
使用法は、主に煮物などに入れたり、炒め物に少量加えたりする様です。
もちろん購入済みです。
わたしがお世話になった人達に挨拶して、帰る為に門に向かうとラクガン子爵様やフレッド様、シムさん、ギルドマスターや《無垢なる愛》の3人が見送りに来てくれました。
「ユウ殿、この度は世話になった」
「こちらこそ、ありがとうございました」
「ユウが居なければラグラーナの討伐は不可能だっただろう。感謝している」
「いえいえ、わたしも儲けさせて頂きましたからね」
「ユウちゃん、あなたはあたし達の命の恩人よ、何か困ったことがあったら遠慮なくあたし達を頼るのよ」
「ありがとうございます」
「ユウちゃん、コレ、あたし達が焼いたクッキーよ。良かったら食べてね」
「わぁ、ありがとうございます」
「薬師のユウちゃんに言うことじゃないけど、体には気をつけるのよ」
「はい、ではみなさんまた、いずれお会いしましょう」
わたしは見送りに来てくれたみなさんに手を振り、門を抜けるとオリオンを召喚します。
オリオンの背に乗ると、首飾りから変化させた手綱を握りました。
わたしを乗せたオリオンは数歩の助走の後、空を飛び立ちます。
わずか数秒でオリオンは、かなりの速度に達しました。
ミルガンの街があっという間に小さくなりました。
さよならミルガン、また会う日まで!
ガスタの街の方角に1時間ほど飛んだ時です。
船を見つけました。
わたしが手に入れて、即日真っ二つになった船よりも綺麗で、立派な装飾がされた豪華な船です。
女神を模ったフィギュアヘッドも付いています。
しかし、ここは空の上です。
そして、船があるのも空の上です。
恐らくあの船は飛空船ですね。
古代の魔法遺跡から稀に見つかる移動用のマジックアイテムです。
かなりの魔力が必要ですが、空を高速で移動できる物らしいです。
噂では聞いていましたが実物を見るのは初めてです。
大型の飛空船のほとんどは国家が所有していて、運用しているらしいです。
しかし、問題が1つ有ります。
それは現在、あの飛空船にワイバーンの群れが群がっていると言うことです。
テンプレですね。
そして、何だかデジャビュです。