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第三話 ズルい女だと思われるかも知れませんが、それでも私はやり抜きます!

引き続き葵ちゃん視点。此処までがプロローグかな~と。


「えっぐ……えっぐ……」

「な、泣くなよ、葵」

 いや、泣く。だって七億だよ? 七億も当選しちゃったんだよ!? 

そりゃ……最初はちょっと嬉しかった。七億あれば、なんだって出来る。欲しいものは……まあ、別にないけど、それでもいざって時の為にお金はあっても困る事はない。

そう、思ってたのに……なによ、これ。ネットで『宝くじ 高額当選』で検索を掛ければ出るわ出るわ、高額当選で不幸になった人の話。こんなのってない。半分以上パニックになった私は、春人さんとの待ち合わせ時間まで宝くじを握りしめたまま部屋の隅でプルプルと震え、おっかなびっくり春人さんとの待ち合わせ場所まで向かった。春人さんの姿を見た時の安心感は……うん、筆舌に尽くしがたいと言っておこう。

「……欲しいもの、ですか?」

 そんな私を安心させる様に、春人さんは『何か欲しいものは無いか?』と優しく問いかけてくれる。なにそれ、優しい! 好き! 

 ……じゃなくて。それに大きい家なんて……あ!

「ど、どうした? なんかあったか?」

「家で思い出しました! 実家の住宅ローン、まだ残ってるって! それを払ってあげます!」

「おお、いいじゃないか! どれくらい残ってる? 二千万か? 三千万か?」

「えっと……な、七百万ぐらい……?」

 は、春人さん、そんな可哀そうな子を見る目、辞めて下さい。七百万、大金ですよ!

「……」

 ……でも、本当に欲しいもの、無いんです。強いて言うならば春人さん、だけど……当然、お金で買えるものではないし。

「……」

 ……あ、でも。春人さんに、『一生私が面倒見ますよ?』って言えば、もしかして私と付き合って……け、結婚とか、してくれたりするのかな? お、お金の問題はないし、それなら――


 ――って、何考えてるんですか、私! そ、そんなの絶対ダメじゃないですか! お、おかしくなってる! 私、絶対おかしくなってる!

「……出来れば早めに使い切って、普通の生活に戻りたいと言いましょうか……ううん、すみません。上手く言語化出来ないのですか……」

 怖い。お金ってホントに怖い。何より、こんな事、春人さんに知られてしまったら、軽蔑されそうで……それだけは、絶対に嫌だ。百万円ぐらいなら――それでも悩むと思うけど、まあ『良かった、良かった』で済む話なのに、七億なんて大金、どう使っても当分無くなりそうにない。

「……」

「……葵?」

 もし……このお金が無くならなかったら? 私はあの高額当選者の皆様同様、不幸になるのだろうか。恨みつらみ、妬みを受けて、そんな私の側から、春人さんは離れて行ってしまうかも知れない。


 ――そう思ったら、もう無理だった。



「このお金、『春人さん』に預けるんです! 前、言ってたじゃないですか! 『運用ってのはお金が沢山あれば、それだけ稼ぎやすい』って! だからこのお金、春人さんに預けます! 運用して下さい!」



 ……なんてズルい女だろう、私は。

 春人さんにだってきっと迷惑を掛ける事になる。もしかしたら、私の代わりに嫉妬を受ける事もあるかも知れない。でも、それでも……


「? 別に良いですよ、失敗しても。私、さっきも言いましたよね? この宝くじ、捨てちゃおうかな~って」


 七億がなくなるなんて、大した事じゃないんだ。それよりも、それよりも春人さんが離れて行ってしまうのが、たまらなくイヤだ。


「……分かった。それじゃ、責任持って運用させて貰う。あ! でも借名取引はコンプラに引っ掛かるから、あくまで俺が出来るのはアドバイスだぞ? それで良いなら……まあ、半分ぐらいは、その重荷を背負ってやるよ」


 だから。


「ホント!? やった! ありがとう、春人さん! 私、すごく嬉しい!!」

 

 春人さんがそう言ってくれたことが、本当に、本当に嬉しくて。その上で、春人さんが私に誕生日プレゼントまでくれるなんて幸せまで付いてきて。


 今日一日、呪い殺してやろうかと思った神様だけど、ちょっとだけ許してあげようと決めた。


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