プロローグ 告白しようと思った女の子が七億当てちゃった
金融残念系ラブコメを書きたいと思いまして。いや、息抜きに……フレイムも魔王も更新頑張ります……
よく、『清水の舞台から飛び降りる』なんて表現がある。思い切って、と似たような意味だが、良く考えて見て欲しい。京都東山にある清水寺に設置された舞台の高さはおよそ12メートル、四階建てのビルに相当する高さである。そんな高さから人が飛び降りて平気なのか?
……平気なワケ、ねーだろうが。普通に考えて死ぬぞ。いや、まあだからこそ清水の舞台から飛び降りるほどの覚悟を決めてって事なんだろうが……それにしたって、ねえ?
「……」
だからこそ俺、小山春人二十六歳、きらめき銀行岡本支店融資係所属は常々考えていたんだ。自分が本当に好きな――まあ、結婚を前提に付き合おうと思う子にこそは、決して清水の舞台から飛び降りる様な真似はせず、地道にコツコツと戦略的に周りを固めてから告白しよう、と。ヘタレ? いやいや、考え深いと言ってくれ。
「……よし」
午後六時。『残業もせずに帰るの?』とパワハラ一歩手前な上司を華麗にスルーし、俺は住んでいるアパートに程近い駅前で待ち人を待っていた。ポケットの中には明日誕生日の俺の想い人の為に買ったネックレスが入っている。無論、高すぎず安すぎず、手ごろの値段のそれは彼氏ではない男から貰うには……まあ、少なくとも大学時代から良く知る先輩からプレゼントとして貰うには十分な値段のソレ、バッチリ準備済みだ。
「……」
……思い返せば長かった。大学時代のサークルで偶然知り合った一個下の後輩、長山葵は一言で言うと純朴な子だった。決して美人系な訳では無いが……それでも、笑顔の可愛い素敵な女の子だ。一発で惚れる、という訳では無いにしろ、なんだか一緒に居て安心するような子だったのだ。だからこそ、この子と一生居たいと、そう思ってしまったのだ。
「……本当に長かったな~」
最初の方こそ先輩・後輩間の強かった俺たちだが、大学生活と社会人になってからの計六年間で随分仲良くなった。どれくらい仲が良いかと云うと、毎週土日のどちらかは二人で遊びに行くし、金曜の夜は飲みにも行く。嬉しいことがあったら『春人さんに一番に報告しました!』なんてラインが来る。週に二、三回は最寄り駅であるココで弁当を貰ったりする。職場の後輩からは『なんですかー! 小山先輩、彼女いたんですかー!』なんて突っ込みも受けるし、大学の同級生からも『お前らまだ結婚しないのか? え? 付き合って無い? 嘘つけっ!』なんて言葉も頂戴している。まあ、アレだ。お互いにお互いの事を意識した、甘酸っぱい関係性って訳だ。
「……いける、よな?」
今日は彼女に俺の想いを告白する。返事はきっとOKなハズ。っていうか、これで『いえ……春人さんの事、頑張ってもお兄ちゃんぐらいにしか思えないんです』とか言われた日にはそれこそ清水の舞台から飛び降りて、そのままこの世とバイバイするぐらいに心に傷を負うだろう。
「……いける、いけるって!」
だからこその自問自答。まるで自己催眠を掛ける様な俺の仕草に駅から出て来た人が少しばかりぎょっとした表情を見せ、そのあとそそくさと俺の側から離れていくのを横目で見ながら。
「は、春人さーん!」
その声に、俺は現実に戻される。肩までのショートカットを揺らしながら、トテトテと走ってくるその姿は非常に可愛い。そして、その可愛い顔にはいつも通りの笑みが浮かん――
「――あれ?」
――浮かんでない。なんだか泣きそうな、常では見た事の無い顔をして駆けて来る。
「ど、どうした葵?」
「は、春人さん! ど、どうしましょう!?」
「ど、どうしましょう? いや、それ、どうしたの返答としてはおかしく無いか?」
「あ、当たったんです!」
「会話が成立しない……当たった? なんだ? 何が当たったんだ?」
「た、宝くじ! こないだ買った宝くじ、当たったんです」
「へー! すごいじゃん!」
「す、すごいんです! すごい当たったんです!」
「ははは! それじゃ今日の飲み会、葵の奢りかな? んで? 幾ら当たったんだ? 一万? それとも十万?」
ちょっと宝くじが当たったぐらいでこの同様。うん、流石に可愛らしい。でもまあ、宝くじなんて――
「……ななおく」
「……はい?」
「だ、だから! 前後賞合わせて七億! 一等賞、当たっちゃいました~!」
「…………はぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」