予想外の乱入者
続けていきます。
5体のキューブの後に、次々とまたキューブが空中に現れた。
「……こんなの見たことないぞ」
「何ナノよ、アンタの妹!」
キューブが滑るように移動して、僕等の周りを取り囲むように浮かぶ。
カタリーナがライフルを現れたキューブに向けた。
「片岡君……さすがに一度下がるべきだ」
「そうしたら絵麻はどうなる?」
聞き返したらパトリスが黙った。
連れ去られるのか操り人形のようにされてしまうのか、どうなるのかわからないけど、取り戻すことはできなくなるんだろう。
「僕は下がれない。逃げるなら勝手にしてくれ」
「世俗とはいえ騎士を名乗る身だ……それは騎士道に反するか」
パトリスが言う。カタリーナが舌打ちした
檜村さんの方を見るけど。
「私を馬鹿にしないでくれよ、片岡君」
僕が何か言う前に檜村さんが怖い目で僕を睨んだ。
襲ってくるかと思ったけど、キューブが僕等を囲むように動きを止める。
『あなたが代理人となる選択を受諾した場合、他の三個体の安全な離脱を保証します。再検討してください』
「卑怯者め」
パトリスが悪態をつく。
『卑怯という概念は理解できません。本地域の個体には同族への連帯意識が強固な傾向があります。``お人好し``というのでしょうか。利用するのは合理的です。
また、三個体の生存を保証しており、得失的にはそちらが優位です』
「援護は来ないのか?」
パトリスが小声で聞いてくる。
ダンジョンが発生したら魔討士アプリに通知が行く。
援護できそうな場所だったり、点数稼ぎがしたい人は来てくれるんだけど、受け取った相手次第だ。
人通りが少ないこの場所だと……
ただ、師匠の言葉を思い出す、戦いで最後にあてになるのは自分だけだ。
最後は一人でも戦う気概を持て。
援護は期待せず、自分で何とかしないと。
来るか怪しいものを期待してもしょうがない。自分でできることをやる。
そして師匠の教えはもう一つ
状況は悪くなるって時に下がるな。いつでも活路は常に前。不利な局面は力づくで変えろ。
「皆、僕の周りに寄って!一刀、破矢風!蛇颪」
竜巻をイメージして刀を振る
風が唸りをあげて僕等の周りを渦巻いてルーンキューブが風の斬撃に切り裂かれた。
迷わず踏み込む。僕の行動を分かっていたように矢と銃弾が僕を追い抜いて行って、残ってるキューブが次々と砕けた。
手を振り上げようとした男の体に黒い茨のようなものが絡みつく。檜村さんの魔法か。
「一刀!断風!篭編」
硬くて装甲が割れないなら……イメージするのは吹き飛ばす風。
茨に絡まれて動きが停まった男の胴を薙ぎ払う。重い手ごたえがして、男の体が宙に飛んだ。
風の塊に押されて、男体が轟音を立ててコンテナにめり込む。ほぼイメージ通り。
前を向いた。絵麻はさっきと変わらないまま立っている。
絵麻の目の前にはディスプレイのようなものが浮かんでいた。あれを斬ればいいんだろうか。
絵麻まであと三歩。
踏み込めば刀は届く。
「一刀!断……」
「クソ!」
「片岡君!危ない!」
誰かの声が後ろから聞こえて銃声が響いた。咄嗟に身構えた瞬間、横から殴られられたような強い衝撃が来た。
宅配便の荷物のようなサイズの小さめの黒いキューブがいくつも回転しながら空中を飛んで絵麻の前に浮かんだ。
全部倒したのかと思ったけど、いつの間に……
男が立ちあがって滑るようにこっちに飛んでくる。
普通ならトラックにはねられたくらいの衝撃のはずだけど効いてる気配はない
くそ。
「下がれ!」
パトリスの声が後ろから聞こえる。
仕方ない。一度下がった
「大丈夫か?」
パトリスが聞いてくる
痛みはあるけど戦えないほどじゃない。
「新手が出てくるのが……速すぎる」
パトリスが呟く。
また絵麻の前の輝く球から線が伸びて大小のキューブが次々と浮かんだ。
『本機の性能は貴方達を凌駕しています。繰り返します。貴方が我々の代理人となる場合、三人の……」
男が無機質な口調でさっきの言葉を繰り返したけど……突然黙って倉庫の壁の一角の方を向いた。
何が起きたのかと思ったけど、前触れなく赤く光る倉庫の壁が砕けた。
◆
全員の視線が突然空いた穴に方を向いた。
赤く輝く壁の破片がもうもうと上がって視界を遮る。
誰かを確かめるより早く、噴煙の向こうから二つの光が浮かんだ。
灰色に輝く針金のようなものが煙の向こうから何十本も伸びてくる。
絡み合うように飛んだ灰色の針金のようなものが、空中に浮いたキューブに次々と突き刺さった。
あの硬いキューブが光を放って砕け散る。
あっという間にキューブが一掃された。
人型のやつがその子の方を向く。
誰か分からないけど、ここが好機。
「一刀!断風!」
真上から刀を振り下ろす。手のブレードと刀がかみ合った。
もう一度、風で弾き飛ばしてやる。
「どきなよ!そこのお前!邪魔!」
煙の方からちょっと高い声が飛んだ。
とっさに床を蹴って飛びのく。それとほぼ同時に横から飛んできた灰色の針金が男に突き刺さった
避けなかったら僕にも当たってたぞ、今の。
男の体を覆う魔素と針金がぶつかり合って火花を散らす。
攻撃が全く止まない。文字通りの弾幕が雨のように魔素の光をまとった男に降り注ぐ。
『この性能は?』
男が言うと同時に体の表面の光が掻き消えた。
灰の針金が男を刺し貫く。血がしぶいて男が地面に倒れ伏した。
続きは既に書いてますので、仕上がり次第上げていきます。
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