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宮下公園で起きたこと・上

 遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。

 豪雪に見舞われて新年早々雪かきしてました。

 今年も本作を宜しくお願いいたします。


 二話前、異世界からの予期せぬ来客・下に少し加筆しました。

 読まなくても話は通じますが、よかったら一読してみてください。

 絵麻に電話を掛けてみたけど……呼び出し音が鳴るだけで出なかった。

 ダンジョンから逃げる人込みをかき分けて走る。

 この中に絵麻達はいるだろうか。


 宮下公園までは直ぐ着いた。

 ガラスと吹き抜けで構成された層のように立つ宮下公園全体が赤い光に包まれている。


「境界はここです!落ち着いて避難してください!」


 赤く光るダンジョンの境目で警官が避難誘導やのぞき込もうとする人を制止していた。

 まだ何人かの人がダンジョンから出てくる。


「君、こっちに来ちゃいけない、危険だ」

「僕等は魔討士です。援護に来ました」


 制止する30歳くらいの警察官にアプリを見せると驚いたような顔をした。まあ高校生だから当然の反応かもしれないけど。

 警官が表情を引き締めて敬礼をしてくれる。


「了解しました。お気を付けて。すでに何人かが交戦しているようです」

「ありがとうございます」


 軽く挨拶して赤く光るダンジョンに足を踏み入れる。

 揺らめくような赤い光に包まれた壁は何となく金属的な感じのパネルのように見える。

 新宿系かな。


「来い、刀」


 手に中に風が巻いて鎮定が現れる。

 柄を握ると気持ちが引き締まった。


「上だ、片岡君」


 スマホを見ながら檜村さんが言う。


「はい、行きましょう」


 剥き出しの階段を駆け上がった。

 途中の階で何人かの魔討士が戦っているのが見えた。

 新宿のダンジョンで見かけた四角いルービックキューブのような魔獣、ルーンキューブが浮いていて戦っている。


 最上階は公園だ。

 ここに来るのは初めてだけど、こんな風に来るとは思わなかった。


 うっすら赤く輝く公園の地面は平面のパネルのようになっていて、ところどころに四角い柱とかがオブジェクトのように立ち並んでいる。

 アーチのようなフレームも赤い光に覆われていた。


「ダンジョンマスターの反応は?」

「まだ無いな」


 ダンジョンマスターはどこだろう。

 絵麻にもう一度連絡してみたけど、まだ出てくれない。


 どうすべきか考えた時、不意に銃声のような甲高い音が響いた。

 音の方を向く。

 朱い光に覆われた公園の案内所らしき建物の前に、一抱えほどもありそうな大きさのルーンキューブが宙に浮いていた。



 ルーンキューブのキューブが回転する。

 何か仕掛けてるかと一瞬身構えたけど。


 風を飛ばすより早く、もう一度立て続けに銃声が響いた。 

 宙に浮いていたルーンキューブが身じろぎするように揺れて、キューブにひびが入る。

 ぐらりと傾いたルーンキューブが地面に落ちた。


 誰か他の魔討士がいたらしい。仲間がいるとちょっと安心するな。

 案内所の角からほっそりした姿の人影が現れる。

 トドメとばかりに手に持った何かをルーンキューブに向けた。


 二度の音と同時に赤い光が迸って白い煙が漂った。あれは……銃か? 

 赤い光で良く見えなかったけど……近づいたら誰なのか分かった。


 すらりとした長身。さっきと同じワインレッドのセーターのふわりとした白のパンツ。

 ウェーブのかかった長い髪が赤いダンジョンの光に染まっている。

 カタリーナか。



 砕けたルーンキューブが、ポリゴンかCGで描かれたもののように消えていった。

 改めて見るけど、間違いない。カタリーナだ。

 カタリーナが一息ついたって感じで、映画のような手慣れた動作で弾倉を入れ替える。


 気配に気づいたのかこっちを向いた。

 普段の可愛くて明るいとは違った、真剣な雰囲気の顔が一瞬驚いたような表情が浮かんで、すぐにいつもの明るい笑顔に戻った。


「あら、どうしたの、カタオカ。あたしを助けに来てくれたのカナ?」


 おどけたような口調で言うけど……手に銃を持ったままでは笑えない。

 睨み返したら苦笑いを浮かべてカタリーナが黙った


「あー、嫌な所見られちゃったね」


 カタリーナが困ったような口調で言う。

 その手には、なんていう名前の銃なのかまでは分からないけど、映画とかで見るような手の平より少し大きいくらいの小型の銃が握られていた。


 普通の銃でダンジョンの魔獣は倒せない。

 これの理由は良く分かっていないようだけど、ダンジョンの魔物は魔素で体を構成しているから銃とか普通の武器は効き目が薄いってことらしい。

 だからこそ僕等のような魔討士が戦っているわけだけど。


 ということはカタリーナが持っている銃も普通じゃないってことだ。

 伊勢田さんのような、銃の形をした能力なのか、それとも別種のものか。

 いずれにせよ、何らかの能力持ちだ。


「困ったナァ……二人ともマジメなんだネ。二人でナカヨクディナーでもしていて欲しかったわ」


「どういうこと?」

「うーん……どうしようかしらね」


 カタリーナが普段の調子で髪を掻き上げて首を傾げる。


「黙って今はハナシを聞いてネ」


 カタリーナが僕に銃口を向けた。



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