表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/295

学園祭の来訪者・乱入者の正体は

 おはようございます。今日も朝更新。戦闘シーン書くの時間かかるんだけど好きです。

 とりあえず後1話は更新しますが、プロットが固まってきたので、書けそうならそのまま続けるかも……かも。

「トリはボクに譲ってもらいたいな!」


 ちょっと高い声を共に黒い塊がまっすぐこっちに向かってきた


「行くよ!」

 

 状況を認識する前に硬いものが肩に当たった。倒れそうになるのをどうにかこらえる。

 まっすぐ突き出されたきた何かを刀で払って距離を取った。


 左右に跳ねるようなステップを踏んでそいつが間合いを詰めてくる。

 師匠や斎会君、宗片さん。みんな割とどっしり構えるタイプで、こんなに動く相手は初めてだ。


 タイミングを合わせて刀を突きだす。

 でも読み切られたようにそいつが体を沈めた。切っ先が空を切る。

 刀の引き際にそいつが間合いを詰めてきた。


「やあっ!」


 声とともに連続して突き出される拳を刀で受け止めるけど、手が早い。

 雨のように拳が飛んできて、何発かが体に当たる。さほど痛いわけじゃないけど手数で押される。

 

 拳の切れ目に合わせて正眼に立てた刀を振り下ろす。とらえたと思ったけど、一瞬でそいつが視界から消えた。

 何が起きたと思うより早く。こめかみに衝撃が来て体が横に吹き飛ばされた。



 後ろに一回転して膝立ちになる。

 見上げると、そいつが早く立てと言わんばかりに手招きした。

 

「先輩!」


 藤村の声でようやく我に返った。

 周りが見えてくる。いつの間には篠生さん達が畳の端まで下がっていた。

 歓声と拍手が耳に飛び込んでくる。


 目の前の相手を見て、その時ようやくわかった。女の子だ。

 黒いTシャツに黒いタイトなパンツ。

 髪を黒いバンダナのようなもので止めていて、白い肌と涼やかな感じの顔が妙にはっきり見える。

 クールな感じの切れ長の目が僕を見下ろしていた。


 短かめの黒いTシャツからはほっそりした手が伸びていて、拳には総合格闘技のようなグローブがはめらている。武器は持っていない。

 ステップを踏むたびに裾がはねて、ちらりとおなかの肌がのぞいた。

 手足が長いモデル体型だ。 

 

 何が起きたのかわからなかったけど、多分さっきのはスピンするみたいに動いて横から殴られたんだろう。

 畳の上に落ちた刀を拾って、深呼吸して体に意識を巡らせる。

 頭を揺らされた感じも消えた。ダメージは無い。

 

「まさかもう終わりじゃないよね」


 不敵に笑ってその子が言う。


「……不意打ちかましておいてよくいうな」

「あー……えっと、先輩……続けますか?」


 藤村が聞いてくるけど。


「そりゃ当然」


 何処のどちら様だか知らんけど、このまま終わるわけにはいかないぞ。

 立ち上がって、手に力を入れて刀を握り直す。


「そうこなくっちゃね!」


 その子がニッとわらった。

 回るようにステップを踏んで今度は長い脚が高く上がった。蹴りだ。本当に格闘家か。

 素手での格闘は間合い的に不利だから訓練施設でも殆ど見かけない。


 刀で受け止めるけど細い体からは想像もつかない強い衝撃が来た。

 足を踏ん張って耐える。

 

 その子がダンサーのように体を反転させた。体が軽々と飛び上がって後回し蹴りが空を切る。

 回り込むように距離を取ったけど、その子が着地ざまに畳を蹴って飛び込んできた。 


 5歩ほどもある距離を、拳を前に突き出したまままっすぐに踏み込んでくる……踏み込みと攻撃がセットになってる。

 ゲームで出てくる中国拳法の使い手みたいだ


 でも最初は不意を打たれたけど……落ち着けばこっちの方が有利だ。

 間合いも体格もこっちが勝っている。

 でも待ちではだめだ。やっぱり勝つには前に出ないといけない。


 刀を立てて踏み出した。

 それと同時に前に踏み出した右足が跳ね上がる。速い。

 とっさに体をひねると同時に、肩にガンと打ち抜くような衝撃が来た。予想より伸びてくる。


「ほら!どうしたの!」


 足を踏みかえてもう一度、前蹴りが飛んできた。

 刀で受け止めて押し返すけど……姿勢が崩れない。

 

 その子が左右にまたステップを踏んだ。動きがなんとも優雅で足音が全くしない。

 格闘家っていうよりダンスを見ているようだ。


「やあっ!」


 くるりと一回転して下段の後ろ回し蹴りが飛んでくる。

 でもこれはフェイント、なんとなくわかった。

 回転の勢いそのままにバレリーナのように足が跳ね上がった。

 上段蹴り。  

 

 一歩踏み出して刀で受け止める。

 その子が足を下すよりより早く軸足を刀で払った。流石にバランスが大きく崩れる。

 

「えいやっ!」


 倒れるかと思ったけど、アクロバットかストリートダンスのように、逆立ちしたままで長い脚が振り回された。

 バネのように彼女の体がはねて距離を取る。凄いバランス感覚だ。

 彼女が立ち上がって構え直した。こっちも刀を正眼に構える。

 

「ちょっと待って」


 どうするか考えたけど、その子が両手を挙げた。


「ここまでにしてもらえるかな?」



「相手してくれて感謝するよ、片岡君」


 そう言ってその子がバンダナを解いてグローブを脱ぐ。そのまま手を差し出してきた。

 握手か。

 いきなり乱入してきて、勝手に試合を終わらせるとか、何やら釈然としないものもあるけど……軽く手を握り返す。


「手合わせしてくれてありがとう」

 

 そう言って彼女が僕を見た。

 改めて見ると綺麗な子だ。バンダナで止められてた長めの髪が白い額一房張り付いている。

 なんか、当然自分のことは知っているだろうって感じで僕を見てくるけど、誰だかわからない。

 その子がちょっと不満げな顔をした


「先輩、鏑木かぶらぎ栞奈かんなさんです」


 藤村が耳元でささやいてくれる。

 名前を聞いてようやく思い出した。たしか有名な高校生魔討士だ。ランクまでは覚えてないけど、丁類だっただろうか。


 僕もテレビとか動画サイトですこしだけ見たことがある。

 魔討士としてってのもあるけど、たしか高校生ダンサーとしても有名だった気がする。

 不満げな顔がちょっと緩んで嬉しそうな顔になった。


「はじめはさ、名乗りを上げて割り込むつもりだったんだけど……あの斎会君との試合を見て真っ向勝負だとキツイなって思ったんだよ……ボクは武器を持ってないしね」

「……本当に格闘なわけ?」


 正直言って武器なしで魔獣と戦うのは遠慮しておきたい。

 風を使える僕は比較的遠くからでも戦えるほうだけど、それでも怖いと感じるときはある。

 素手で殴りに行くなんてできる気はしない。


「それはボクのSNSをみてね」


 芝居がかった仕草で鏑木さんがウインクする。

 喋り方も含めてなにやらオーバーアクションな子だな。 


「実は、あの戦いを見て知りたいことは大体わかったから止めといてもよかったんだけどね。

折角横浜からわざわざ来たしそのまま帰るのも勿体ないから、ちょっと強引にやらせてもらったんだ。ゴメンね」

「知りたいことって?」


「うーん。正直言ってさ、ボクは君がいけ好かないやつだって思ってたんだよ。はっきり言って嫌いだった」

「なぜに?」


 会ったこともない相手にそこまで言われる筋合いはないぞ。


「だって、君、インタビューとか見たけど全然うれしそうじゃないだろ?高校生5位なんて目指してもそうそうたどり着けないのにさ。ボクだったら大喜びするのに」


 別に喜んでなかったわけじゃないんだけど、大げさに喜ぶのもなんか感じ悪い気がしたのでなるべく落ち着いて話すようにしていたんだけど。


「でも、君……素っ気なくて序列になんて興味ないってスカした顔してるのに、全然違うんだね、闘志を内に秘めるタイプなんだ、そうだろ」

「そうかな?」


 なんだかんだで戦っていると負けたくないという気持ちが心の奥底から湧いて出てくる

 ただ、そういうタイプかと言われるとよくわからないな。


「覇気がないやつだっておもったけど」


 そう言って彼女が顔を近づけてくる


「実際にあって手合わせしたらそうじゃないってわかったよ。嬉しいな。いいじゃないか」


 そう言って不意に頬に温かいものが触れた。キスされた?

 周りがどよめいた。なにやら勝ち誇ったような顔で彼女が僕を見る。


「ボクは君みたいな人は好きだね。またやろう」


 そう言って彼女がくるりと身をひるがえして畳から駆け下りていった。



 袴から制服に着替えて檜村さんを探したけど、いつの間にかいなくなっていた。

 いったんクラスに戻ってみたけど、檜村さんもルーファさんも三田ケ谷もいない。

 ケーキは大体売りきれたのか、お客さんも居なくて皆がくつろいでいた。


「三田ケ谷たちは?」


「あの子とどっか行っちゃったぞ」

「ていうかよ、お前もだけど魔討士やるとあんな可愛い子とか綺麗なお姉さんと一緒に戦えるわけ?」

「俺も素質の診断受けてみるかな」


 テーブルを拭いていたクラスメートが気楽に言ってくれる。

 そんなもんではないんだけど。


「そういえば、おい片岡」


 クラスメートの一人が廊下の向こうから声をかけてきた。


「どうかした?」


「さっき、お前に外人のお客さんが来てたぜ」

「海外でも有名なのかよ」

「あ、ほら。あっち」


 1人が廊下の向こうを指さす。そっちの方には確かに三人の外人さんがいた。



 遠目にも金髪で日本人ではないことは分かった。

 多分父さんくらいの年の男の人と、もう一人ほっそりした男の人。これは多分大学生くらいかなって感じだ。

 それともう一人は子供。


 みんな髪がちょっと長めでワイルドな雰囲気を醸し出している。

 年配の男の人のそばに黒髪の男の人が立っていた。なんとなく通訳っぽい。


 スーツらしきものを三人とも着ているけど、なんというか妙に違和感がある形だった。

 作画が微妙に狂ったアニメとかを見ているような感じだ。 


 一緒にいた高木さんがこっちを指さして、その人が高木さんに恭しい感じで頭を下げているのが見えた。

 その子がずかずかとこっちに近づいてくる。

 ていうか、顔を見ても見覚えがないことには変わりないんだけど……だれだろう。



 評価、感想等々頂けると大変うれしいです。リアクション歓迎。


 今回登場の鏑木栞奈はダンサー志望の高校生魔討士。

 ダンサーとして有名になるための宣伝のために魔討士して戦う格闘系キャラで、丁類で能力は身体能力の増幅です。魔獣との戦闘スタイルについてはもう少し先で。


 作者Twitterの #フォロワーさんを自分の世界観でキャラ化する タグから生まれたキャラをベースにアレンジしたキャラです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ここまでまったり楽しく読ませてもらっております。 でも鏑木栞奈は凄いどうしようもない奴では?と嫌な気持ちになりました。 自分が敵わないだろうからと不意打ちで仕掛けて、相手がエンジンかかってき…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ