表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
289/295

八王子ダンジョンでの練習・下

誰かと思ったけど、振り向いてみたら伊勢田さんだった。

 動画はよく見るからそんな気はしないんだけど、よく考えれば直接会うのはかなり久しぶりだ。


 動画でもおなじみの軍服風の緑のコスチュームを着ていて、カメラを持った七瀬さんも一緒だ。

 七瀬さんは髪が短くなって、目元を隠していたような長い前髪がなくなっていた。ちょっと雰囲気変わったな。


「今日はどうしたんです?」

「次の動画のネタ拾いにね。そういえば4位昇格おめでとう……ついに追い抜かれたな」

「それは……伊勢田さんは討伐点を稼ぎに行ってないからじゃないですか?」


 動画配信をしているから、多分この人は討伐実績点という点では不利だと思う。

 5位までくるとダンジョンマスターでも倒さない限り大きく点は増えない。


 でも、ダンジョンマスターとの戦闘はガチ修羅場だ。

 命がけの戦いなんて、配信して楽しいものじゃないとは思う。


「ありがとう。そう言うことにしておいてくれ。それよりまた俺の動画にも出演してくれよ。インタビューさせてくれ」

「そっちは気は進まないですけど……まあ」


 そう言うと、伊勢田さんが七瀬さんと顔を見合わせて苦笑した。


「君は相変わらず変わらないな……ランクが上がって偉ぶる奴とかマウント取りたがるやつは幾らでもいるのに、会った時から君はいい奴のままだ」


 伊勢田さんが言ってくれるけど……色々あって上には上がいるのを良く知っている。

 自分より上がいるのに、ランクが上がったからって周りにマウントをとるのは、何となく気が引ける。


 ていうか、一位の一番上の宗片さんがそう言うタイプじゃない。

 それより下の僕がそんなことをするのはやっぱり格好良くないような気がする。


「じゃあまたな。片岡君。連絡するから動画出演のことは考えておいてくれ。あと、動画を見るときは高評価を押しておいてくれよ」


 冗談めかして伊勢田さんが言って爽やかな笑顔を浮かべた。

 僕なんかが押さなくても高評価一杯だと思うんだけど……まあいいか。


「はいはい」

「それと、其処のみんな。片岡君の後輩だろ?4位……というか片岡君と戦いを共にできるのはとても運がいい」


 一転して真剣な口調で伊勢田さんが言った。


「こういう機会は望んでもそうあることじゃない。身近に彼がいるのは本当に恵まれているよ。しっかり頑張ってな」


 そう言って伊勢田さんが七瀬さんと一緒に歩き去っていった。

 振り返ってみると、こっちを見る目が変わってる気がした……さすが有名人の威力は凄いな


 しかし、今まで自分で戦うことしか考えてなかったけど、一緒に誰かと戦う時、しかもこんな風に誰かを守るような戦い方はしたことが無い。

 それこそさっき伊勢田さんに聞いておけばよかった。最後のあの一言がスゴイプレッシャーだ。


「えっと……僕が前衛に出るけど、前に出たい人は言って。何かあっても僕がサポートするけど無理はしないで。練習と実戦は違うから」

「はい!」


 すごく良い返事が帰ってくるけど……余計にプレッシャーがかかるぞ。


「丙類のみんなは少し下がり気味でね。藤村はサポートを頼む」

「はい、先輩。任せてください」


「じゃあ行こうか。みんな気を引き締めてね」



 その夜、一年生のグループチャットより


『今日は八王子行ったんだろ。どうだった、噂の4位様は』

[正直言って、最初はちょっと頼り無さそうな感じだったんだよな]

≪なあ。だよな≫


【でもバトルになったら、強いのなんのって。マジで別人だった】

[それな。デカい魔獣も簡単に切り倒してしまうし、多対一でも全然ビビらないし、こっちへの目配りも完璧だったし]

≪訓練施設の先輩が、あれは乙類っていうより万能型の甲類みたいって言ってたけど、まさにそんな感じだったわ。普通にバケモン≫


【どんだけ修羅場をくぐればあんなになるんだ……あれで二つしか違わないって】

≪俺は差があり過ぎて絶望した≫

[なんとなくだけど、銀座とか代々木とか富山だけじゃない、他にもなんかいろいろやってる気がする]

≪それは同意。俺の先輩とは悪いけどレベルが違い過ぎた≫


【周りの大人がすごい気を使ってたよな。やっぱ4位って凄い】

[あと、生で伊勢田蔵人を見れた。親しそうだった]

【俺も4位は無理でも、高校生の内に6位とかまで上がれればあんな風になれるかな】


『いいな……俺も混ざってよさそう?学校違うけど』

【それは多分大丈夫。部長に紹介してやるよ】

≪部長も片岡さんもいい人っぽいし大丈夫だろ≫

『おお、ありがと!』


〈ねえ、片岡さんって彼女とかはいるのかな?あたしにもワンチャンありそ?〉

[……それは諦めろ]

【この間超綺麗な大人の人が学校に来てた。大学生で丙4位の魔法使いらしいぞ】

〈うーん、それはきついか……〉


 面白いと思っていただけましたら、ブックマークや、下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価をしてくださると創作の励みになります。

 感想とか頂けるととても喜びます。


 応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ