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代々木訓練施設 テラスの攻防・2

 テラスに向かう階段を上る。

 上りなれた通路も赤いダンジョンの光にコーティングされていると普段とは全然違うように感じるな。

 何人かが転がるように階段を降りてきた。すれ違いざまに道場に行くように言う。


 階段の上から何かがぶつかり合う音が聞こえてきた。誰かが戦ってる。

 踊り場の上の方から頭が潰れたアリのような形の魔獣が転がり落ちてきた。アリの姿が崩れてライフコアが残る。


 階段を上がると、広い踊り場の隅に黒のシャツ姿の男の人がいた。その後ろにはかわい花柄のジャージを着た二人の5歳くらいの女の子。

 二人を守るようにその男の人が前に立っていて、その周りに5匹ほどのアリが群がっていた。


「来るんじゃねぇ!この虫!あっち行けや。キモイんじゃ!」


 その人が手を大きく振ると、体の周りを渦巻いていた赤い煙が壁のようになってアリを食い止めた。

 動きが止まったアリに煙の塊がハンマーのようにぶち当たる。アリの一匹が鈍い音を立てて頭を潰されて崩れた。


「一刀!破矢風!」


 風の刃がアリを真っ二つにする。

 こっちを振り向いたアリに五十嵐さんの薙刀と柚野さんのレイピアが突き刺さる。あっという間にアリが全滅した。


「大丈夫ですか?」

「おお、これは天の助け」


 安心したようにその人が表情をほころばせる。

 ひょろりとした体格であまり鍛えた感じじゃない。ちょっと面長な顔立ちに髭面で髪を後ろで結わえた、何となくチャラい感じの男の人だ。

 30歳くらいだろうか。


「上にはまだ人がいますか?」

「ああ、いるぜ。じゃ、あとは頼んだ」


 その人が女の子二人の手を引いて行こうとするけど。


「すみませんが、一緒に来てもらえませんか?上の人を助けに行く」

「おいおい、冗談じゃないぞ。俺は娘たちを守るといい大事な使命がある。早く逃げないとな」

「下に行けば魔討士がいますから」


 この人は多分上位帯だ……同行してもらえると助かる。

 その人が嫌そうな顔をしたけど、手を引かれた女の子が僕を見上げた。


「ねえ、お兄さん……片岡水輝さん?高校生五位の」

「そうだよ、よく知ってるね」


 その子が僕を見て、そのあとその男の人を見た。


「ねえ、パパ、逃げるの?」

「みんなを置いて?」


「逃げるんじゃない、お前たちを守るんだって」


 男の人が慌てて言うけど。


「えー……そんなパパ格好悪い」

「ねー」


 娘さんらしき揃いのジャージ姿の二人が顔をあわせた。彼が苦い顔をしてその子達を見る。

 しばらくして観念したようにその人が首を振った。


「うーん、しゃーねぇなあ、5位のお言葉とあらば……お供しますよ」


 そう言ってその人が娘さんの頭をなでた。


「はやく境界の外まで逃げるんだぞ、いいな?パパはあとから行くからな」

「うん、パパ、格好いい!」


 その子たちが言ってその男の人がまんざらでもないって顔で笑った。


「もちろんさ。パパは格好いい。そうだな?」

「気をつけてね。片岡さん、パパをよろしくね」

「ありがとう」


「だがこの子たちを安全なところまで連れてってくれ」


 その人が言う。


「じゃあ……すみません。柚野さん……」


 言おうとしたけど、柚野さんがにっこり笑って首を振った……聞いてくれそうにないな。


「宗さん。お願いできますか?」

「ええ、任せて。さ、行こう、二人とも」


 宗さんがちょっと安心したような表情を浮かべて、二人の手を引いて階段を下りて行った。


「じゃあ、すみません。よろしくお願いします。ランクは?」

「甲の8位だ。真坂門まさかどすぐる。能力はこの煙を使う事。よろしくな。片岡五位」

「……あれで8位なんですか?」


 さっきの手慣れた戦い方を見た感じもっと強そうに見えたけど。


「まあランク上げする気全然ないからなぁ。新宿の低層でトレーニングはしてるんだが」


 そう言って真坂門さんが手を動かすと、その手の動きに合わせたように赤い煙が動いた。

 見た目は煙だけど、触ってみると確かに硬いというか不思議な手触りだな。


「なんかあった時に家族を守れればいいとしか思ってないんでね」


 真坂門さんが言う。

 たまに、能力高いのにランク上げに全然関心がない人はいるらしいけど、この人もそういうパターンなのかな。


「上に何人くらいいました?」

「……どうだろうな。多分30人くらいだと思う」


 真坂門さんが少し考えて言う。さっき何人か階段を降りてきた。上には後何人くらいいるんだろう。


「まあさっさと上の探索を終わらせて逃げようぜ」


 真坂門さんが言う。

 確かに、さっさと終わらせた方がいい。此処に長居する理由はないし、考えてても仕方ないな。



 テラスに上がった。

 普段は綺麗に整えられた芝生とランニングコースがあって、ベンチや東屋があるのどかな場所なんだけど。


 芝生はごつごつした岩のような赤い光に覆われていて、青空が広がっているはずの空もドームのように赤いダンジョンの光が包んでいる

 奥は赤いもやがかかっているように見えない


 階段のすぐそばに1人の若い男の人が倒れていた。

 背中に大きな切り傷があってジャージが真っ赤に染まっている。


「クソが!」


 五十嵐さんが吐き捨てるように言う。

 

 あちこちから悲鳴と戦う音が聞こえてきた。

 さっきも見た人間サイズのアリって感じの魔獣がゾロゾロと歩き回っている。

 今日は天気も良かったからランニングコースにも人が結構いたはず。逃げてきた人もいるはずだけど、まだ取り残されている人がいそうだ。


「先輩、どうしますか?」

「五十嵐さんと真坂門さん、二人でテラスの南側を見て来てください。僕等はこっちを見ます」


「了解だ」

「まかせろ」


 真坂門さんと五十嵐さんが頷く。 

 五十嵐さんが薙刀を一振りした。真坂門さんの周りにさっきのように赤色の煙が立ち上る。


「気を付けて」


 そう言うと二人が南側に向かって走っていった。


「じゃあ、行こう。柚野さん」

「はい、先輩!」




 真坂門大はキャラ募集に個別に応じてくれた人のキャラです。

 娘想いのチョイ悪風のチャラいお父さん。職業はパン職人。見た目に反して仕事は真面目です。


 魔素を煙のように固めて操る能力を持つ攻防一体の万能型です。

 高い潜在能力を持っていますが、本人が鍛える気が無いのでランクは甲の8位。まだ能力の扱いも未完成なタイプです。


 キャラ募集は引き続き継続していますので、良かったらご参加ください。

 詳細は「その日の始まり・下」の後書きを見てください。



 面白いと思っていただけましたら、ブックマークや、下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価をしてくださると創作の励みになります。

 感想とか頂けるととても喜びます。


 応援よろしくお願いします。

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