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純粋処女と始まる同棲生活  作者: 会津さつき
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始まりし同棲生活

「ただいま」と言える家があって「おかえり」と言ってくれる人がいる。それがいかに幸せで、温かみを感じられるというのは言うまでもない。それが家族であっても、彼女であっても、幼馴染であっても……。


  零 始まりし同棲生活。


 都心から電車で数十分、多摩川を越え閑静な住宅地の一角にあるマンション。ここに住む俺、『東祐一郎あずまゆういちろう』高校二年生である。このマンションで数週間前まで一人暮らしをしていた。もう一度言おう。数週間前まで一人暮らしをしていた。そう、過去形である。という事は今の俺はこの家で一人暮らしをしていない事になる。

「あっ、おかえりなさい!」

 そう言って出迎えてくれる彼女は幼馴染の『伊奈羽純いなはすみ』である。コイツとは約四年ぶりの再会で、急に俺の部屋に転がり込んできた。その再会は春休みのとある日に遡る。


  *


 その日は学校の春休み真っただ中、家事が出来ない俺は溜まりに溜まったゴミの処理に明け暮れていた。俺の部屋はちょっぴり散らかっている、いわゆるゴミ屋敷予備軍とでもしよう。そんな要塞を片付けている時にそいつはやって来た。

掃除も終盤に差し掛かった夕方頃、「ぴんぽ~ん」インターホンが鳴った。俺の住むマンションはオートロック形式だが今鳴ってるのは玄関のインターホンだった。少し警戒しつつ俺は外に出る。そこには俺より少し小さな女の子が居た。可愛らしいショートボブが特徴的で、見た目は大人っぽい感じがした。

「あの、どちら様ですか?」

「えっと…これ…」

 そう言って渡してきたのは一つの便箋だった。俺はその中にある手紙を取り出し読んでみる。母さんからだった。

『進級おめでとう。元気にしてるかしら、どうせアンタの事だからコンビニ弁当ばかり食べてるんでしょうけど。そんな話は良いとして、アンタ羽純ちゃんのこと覚えてる? 羽純ちゃん今度から高校生でアンタと同じ学校に進学したそうよ。羽純ちゃんの家はこっちの方にあるから、通うのがどうも大変なのよ。そんな訳でアンタの部屋に入れてあげなさい。これは命令よ、断ったらどうなるか分かってるよね。そんな訳でうまくやって頂戴ね。』

 俺はその驚愕の内容が書かれた手紙を読み切る。

「羽純?」

「はいっ」

 少し間を入れる。その間に過去の人脈データベースで照合すると一人該当する人が居た。

「入れ」

「お邪魔します」

 そう言って俺は彼女をリビングに通した。食卓に向かい合って再度事の確認をする。

「えっと…ここに住む?」

「はい」

「二人で?」

「そういう事ですね」

「高校生だぞ、俺達」

「ん? 何か問題ありますか?」

 大アリだよ! むしろありすぎちゃって困るよ!

「えっと、お前の方は良いのか? こんな男子高校生と暮らすなんて」

「はい! なんだか楽しそうです!」

 楽しい? この状況が?

 そんな訳で俺は無理に帰す理由もなく同棲を承認した。幸い空いている部屋は多くあるのでそのうち一室を彼女に使ってもらうとしよう。

「それにしても…お部屋が汚いような…」

「あっ、まぁ、少しな」

 そう言って誤魔化す、実のところはめっちゃ汚い。周りを見渡した彼女は俺に対して真剣な眼差しでこう言う。

「少し本気出しても良いですか?」

「お、おう…」

 流石の俺でも怯んだ。それからというもの、部屋は見る見るうちにきれいになり、先ほどまでの部屋とは見違えるほどに綺麗になった。

「ふぅ…こんな感じですかね」

「おぉ! スゲェ!」

 感動だ。今の俺は猛烈に感動しているぞ。

「少し汗かいちゃったのでお風呂お借りしますね」

「あぁ、ゆっくりするといい」

 そう言って彼女は風呂場へ、事前に風呂を沸かしていたのだろうかすぐには戻ってこなかった。

 俺はリビングにあるソファに座って考え込む。

 ホントに良かったのか? てか羽純ってあんな感じだったっけ。最後にあったのは確か…小学生の時じゃないか? それっきり会ってないが、やっぱりアイツの髪型や雰囲気だけは変わって無かったな。いやぁ、まさか家事が出来るとは思ってもみなかったし。こんな再会とはいえアイツに出会えたのは嬉しいな。

 そんな事を思っていると彼女が風呂から戻って来た。

「お風呂ありがとうございました」

「おう」

 風呂上がりの彼女はピンク色の部屋着を着ている。そして俺の横にちょこんと座る。座った時にシャンプーの匂いがほのかに俺の鼻腔をくすぐる。甘い匂いだった。

「それにしても羽純は全然変わらないな」

「そうですか? えへへ…」

 照れているのは彼女は少し頬を赤らめている。

「そういう祐一郎さんも変わらないですよ?」

「ほう、ではどこら辺が変わらないんだ?」

「それは、快く私を迎え入れてくれたことですっ」

 隣にいる彼女は笑顔でこちらを見てくる。その不意打ちに俺は少し照れてしまった。

「初めは久しぶりに会うってなって緊張してたんです。でもいざ会ってみると初めは怖く思えました、あの時とは雰囲気が少し変わってたので。でも…中身はやっぱりあの時の祐一郎さんに変わりなかった、嬉しかったです……」

 彼女の口からそんな言葉が出た。なんだか恥ずかしいじゃないか。

「祐一郎さんっ、これからもよろしくお願いします」

「こちらこそ、今日からここは君の家だ」

「はいっ!」

 

  *


 そんな事があって同棲生活を始める事になった。

 それからというもの、春休みが明け学校の入学式が終わり。羽純は晴れて高校生デビューを果たし。俺と同じ学校に登校することになった。

「祐一郎さん、お弁当忘れないでください」

「すまんすまん」

 あれから彼女はこの環境に慣れてきたのか敬語だらけだった彼女の口調がごく稀にだがタメ口が混じるように変化した。むしろそっちの方が良い、幼馴染なのにどうもよそよそしかったからな。

「鍵閉めました?」

「閉めたよ」

 そんな会話が毎朝行われる。その後自宅マンションを出発し徒歩十分の所にある学校へ向かう。

「そういや、羽純は何部に入るんだ?」

「えっと、部活には入りません」

「ぶふっ!」

「大丈夫ですか⁉」

 唐突な告白に思わず噴いてしまった。

「ゲホッゲホッ…お前、それ本気か?」

「え? 本気ですけど」

「一応聞くが、なんで入らないんだ」

「そりゃもちろん、祐一郎さんも部活入ってないじゃないですか」

 ったく、コイツってやつは。部活動ってそんな簡単な動機で決めていいものなのか?

「まったく、そんな簡単な理由で決めていいのか?」

 俺がそう言うと羽純は俺の前に回り込み真面目な顔で俺にこう言う。

「簡単じゃないです! 私の意思で決めたんです!」

 流石にここまで言われちゃ否定する理由は無い。

 そんな会話をしていると学校に着いていた。ここから先、羽純とは一時的に別れる。俺は第一校舎、羽純は第二校舎と校舎が分かれる。

「じゃあまた後で」

「はい、じゃあお昼にいつもの中庭で」

 そう言って別れる。教室に着くと高一から友人の栗橋がいた。

「よぉ、そういや最近一年生とよく居るのを見かけるがあれは誰だ?」

「ただの幼馴染だよ」

『栗橋優』高校一年生からの仲だ。高校では野球部、和服や刀名が似合いそうな彼は刀ではなく金属バットがお似合いなのかもしれない。追記するならこいつには妹がいて妹を溺愛するほどの妹バカだったりする。

「いやぁ、あの親しい間柄はただの幼馴染ではないだろ」

 確かに普通の幼馴染ではない。

「じゃあどんな間柄なんだよ」

「う~ん、恋人とか!」

「バカ者、そんな訳なかろう」

 つい突っ込んでしまった。いやだってさ、幼馴染だぞ? 付き合える訳ないだろう。

 それからはつまらん授業を四回受けた後、昼休みに俺は羽純と待ち合わせている中庭へと向かう。そこには羽純が笑顔で待っていた。

「おまたせ」

「祐一郎さん!」

 なんだこの可愛い生き物は…。

「お弁当食べましょ」

「お、おう、そうだな」

 そう言って俺達は昼食である羽純の手作り弁当を食べる。

「どうですか?」

「うん、美味しい。このタコさんウィンナーとか手が込んでるな」

「良かったです」

 ホントに美味しい、いつ食べても飽きない。羽純の作る料理は絶品だ、夕飯も一人暮らしの時より格段に良くなった。

「そうだ! 今日部活の後買い出しに行きませんか?」

「良いな、一体今晩の献立は何だろうな」

「カレーです、祐太郎さんの好物と聞いたので」

 あぁ、確かに好物だ。いやぁ、羽純手作りのカレーは楽しみだな。

「よしっ、部活終わったら行こうな」

「はいっ」

 羽純の笑顔、この時の俺はまだ気付けていなかった。羽純にあんな事があったなんて…。

この度は『純粋処女と始まる同棲生活』を読んでいただき誠にありがとうございます。

本作はつい数日前にふと浮かんだアイデアを文章にしたものですが、シナリオやキャラクター設定を考えている内にこれを没にするのは勿体無いとの事で今回このサイトに投稿させていただきました。

本作の更新頻度はナメクジ級に遅いかもしれませんが、どうか読者の皆様がお待ちになってくれる事をお祈りします。

今後とも『純粋処女と始まる同棲生活』をよろしくお願いいたします。

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