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部屋

 中へ入ってみると、やはり広かった。

 一階部分では三部屋くらいあるのを、二階部分ではぶち抜いているような格好だ。


「夫人のお荷物は、こちらに置かせていただきますね!」


 部屋の中に#小上__こあ__#がりのようなところがあり、(りん)はそこへ優しく置いた。


「これからここでの過ごし方をお話しますが、その前に何かありますか?」


 (らん)からの投げかけに、詩音はこれ幸いと食いつく。


「はい。ちょっと確認したいことがあるので、荷物の整理をしてもいいですか? 終わったら声をかけるので、それまで座って待ってて貰えますか?」


 詩音の発言に、二人は面食らったような顔を向ける。

 何かおかしなことを言っただろうか?と不安に思うも、二人はそれ以上何も言って来ない。

 不思議に思いながらも、荷物の置かれた小上がりの方へ向かった。



 荷物と言ったって、そう多くはない。


 さっき着替えた元々着てた服や靴、それから鞄。

 前回ここへ来た時は鞄はなかったが、今回はあの時――星を見上げた時――肩にかけてたためか、一緒に移動してきたのだった。


 詩音の目的は鞄だった。


 中には、化粧道具や仕事用の手帳などが入っている。

 詩音は手帳を取り出すと、後ろの方の空いているページに、先程喬から聞いた部屋割りと各夫人の名前を書き付けた。



(えっと、真ん中が、レイ夫人・・・左が、シン夫人にカク夫人にリ夫人・・・。

それから、キョウさん。カンガン。後宮と本殿を繋ぐ人。

お団子頭で元気そうなのがリン、お下げ髪で大人しそうなのがラン。

忘れないうちに、メモしとかないとね)



 ここでも、いつもの仕事の癖が出てしまう。

 営業でも秘書でも、人の顔と情報を覚えるのは何よりも大事だと言っていい。忘れると相手にとって失礼となるだけでなく、結果として自分側が損をすることだってあるから、ここだけはいつも徹底していた。


 書きつけて、気付く。

 このレイ夫人は、遥星の母親、ということで良いのだろうか。

 皇帝が複数の妻を持つような世界で、それを間違えたらおそらく致命傷になる. 


 鞄も一緒にここに来て良かった、と心底思った。

 メモをすることで情報が整理され、必要なことがわかる。



「すみません、お待たせしました。

 鈴さん、蘭さん。

 説明、お願いできますか?」


 その声を合図に、鈴と蘭が詩音の傍に駆け寄ってくる。


「「はい!」」


 二人は元気よく返事をした。



 彼女たちの説明によると、こうだ。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・


 この部屋と、後宮の中は移動は自由。好きに歩き回って大丈夫。

 何か欲しいものがあれば、二人に言いつけて買ってきて貰う。


 同じ階は廊下で繋がっている。

 食事は基本的には部屋で取るが、時々集まって食べることもある。


 部屋の端の方には、彼女達用の寝床や荷物置き場もある。

 昼夜交代で番をするので、どちらか片方は眠っていることも多いとのこと。


 皇帝及びその兄がこちらに来ることもあるし、向こうに呼ばれることもある。

 もっとも、皇帝である遥星は今まで(実質)妻がいなかったので、来たことはないとのこと。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・



 まぁ、概ね想像からは外れていない。

 窮屈そうではあるけど、こんなものか。


「それと、その…

『橘夫人』という呼び方、どうにかなりませんか?

 できれば名前、『詩音』と呼んでいただけないでしょうか?」


 二人は一旦顔を見合わせ、それから声を合わせてこう言った。


「「わかりました、詩音さま!」」


 蘭が続けて言う。


「私たちのことも、 『(りん)』と『(らん)』と呼び捨てで結構です。

 それから、敬語を使われると調子が狂うので……私たち相手には、普通の言葉でお願いします」



 どうやら、先ほど彼女たちが面食らっていたのは、詩音の言葉遣いに対してだったようだ。



「あ、はい、………うん、わかった。よろしくね、鈴、蘭」


 良い子そうな子達で、良かった。

 どうみても子供だが、一体いつ頃から働いているのだろうか。



「それから、レイ夫人は、今の皇帝陛下のお母さまに当たる方なのかな?

 お兄様、がいらっしゃるのよね?そのお母さまも、同じ方?」


「そうですよー!怜夫人は、陛下の兄君である佑星さまと、遥星さまのお二人の母君です!」



――そう、それ。

 お兄さんがいるのに、何であの人が皇帝なんだろう?

 この子達に、聞いてもいいのかな?



「このあと、挨拶に回るんですよね?だとしたら、早くお支度をしましょう!日が暮れる前の方が良いと思います」


 鈴のアドバイスに、日が暮れかけていることに気づく。


 詩音は四人の夫人へ挨拶回りをするべく、二人に手伝って貰って衣装を整えた。


今回もお読みいただき、ありがとうございました。

本日、アクセス数が自分史上最高を記録しました(∩´∀`)∩ワーイ

本当にありがとうございます゜・*:.。.*.:*・゜

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