表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/19

第8話

いつも通り昼休みに、いつも通りのメンツで中庭の四阿に集まる。もうこのメンバーで集まるの恒例になってるなあ。リリアンも「当然!」みたいな顔で付いてくるし。


「なあ!フェリシア嬢!月光祭のパートナーは決まってるか?」

「はい。」


ルーク様に問われたのでお答えした。


「……。」

「……。」

「……え?」

「既に決まっております。」

「だ、誰?」

「アレクシス様です。」

「「ええええええええええええええ!?」」


ルーク様とリリアンの合唱が聞こえた。


「アレク!どういうことだよ!抜け駆けかよ!ずりいぞ!」


ルーク様がアレク様をゆさゆさ揺する。


「放せ。別に抜け駆け禁止とか約束してないだろ。」


アレクシス様がパシッとルーク様の手をはたいた。


「そ、それはそうだけどよ…もっとこう『俺と行こう!』『いや、俺と!』『じゃあ決闘だ!』みたいな…」

「決闘?なんでルークの得意な舞台に上がらなきゃならないのさ?」


アレクシス様は気だるげにサンドイッチを頬張る。その気だるげなところが色っぽくて癪に障る。中坊のくせにいいいいいいいいいいい!!!


「お姉様…?」


リリアンが額に青筋を浮かべて微笑んでいる。


「アレクシス様からお誘いいただけたので。」


リリアンは明らかにいらっとした表情を見せた。これは帰ったらぶたれるかもな。顔に傷は残さないでほしいけど。


「リリアン嬢。僕が無理に誘ったんだ。フェリシア嬢を責めないでほしい。」

「アハッ、アハハッ。私が責めたりするわけないじゃないですかあ…」


笑いが引きつってるからね?


「ねえ、パトリック様、月光祭のパートナーはお決まりですか?」

「うん。決まっているよ。カチュア・ヴェローズ嬢と行くことになってる。」


ゲームでの悪役令嬢その2ですね。ヴェローズ公爵令嬢にしてパトリック様の婚約者だ。豊かな漆黒の髪にエキゾチックな茶褐色の瞳をした美女である。ゲームをしていた時はやたらプライドの高い令嬢というイメージがあったが、実際会ってみて思った。プライドが高いとかそういうレベルでなく『気高い』だ。崇高で高潔で品がある。まさに貴族の中の貴族。それでいて正義感が強く、民を大切にする優しい心根の持ち主である。パトリック様を熱愛しているが、パトリック様がそのお心を裏切らない限りは歪まないと思われる。

リリアンがまたいらっとした表情を見せた。それ隠せてないからね。


「ヴィクター様はお決まりですか?」

「俺はマリエル・エンデルタ嬢と行く約束になっている。」


マリエル様はこの国の第2王女。淡い金髪にサファイアブルーの目をした、色彩だけならリリアンと一緒だが、実際見れば大違いな王女様だ。くるくるとした巻き毛は愛らしく、大きなサファイアブルーの瞳は好奇心いっぱい。色白で、まだまだ身長が低いちまっとした方だ。小動物的な仕草がとても愛らしい。年も若く、12歳とエレミヤ学園に入学したばかりである。ヴィクター様と婚約されるのではないかと噂されている方だ。ゲームではモブ。

リリアンがいらいらっとした顔を見せる。


「セ、セオドア様!」

「私は婚約者の、エルザ・マーティ嬢と行くことになっております。」


エルザ嬢はマーティ伯爵家令嬢。悪役令嬢その3である。栗色の髪に、榛色の瞳の陽気なご令嬢である。ゲームではただのバカに見えたが、実際の彼女を見ていると陽気な様子なのに隙がなさ過ぎてとても怖い。怒らせてはいけないタイプ。母方の遠い親戚とかで、アレクシス様と一緒にいるところを時々見る。

リリアンがいらいらいらっとした顔を見せる。我が家で私に向ける通常仕様の顔だな。


「ルーク様!」

「い、いや、俺はフェリシア嬢と…!」

「私は先約がございます。」

「ルーク、ちょうどいいパートナーが出来て良かったな?」


アレクシス様がにっこり微笑む。ルーク様はリリアンのイライラ顔に明らかにビビっている。そりゃあ般若も斯くやと言った顔だからな。


「いや!妹!妹と行くから!!可愛い可愛いエイミーと行ってくる!」


エイミー様は12歳。レイヴェル家第3女。赤毛にそばかすの引っ込み思案の女の子。ゲームではモブである。


「じゃあ私はどうしたらいいんですかあ!」


リリアンが泣きついた。


「今からでも教室で誰かに声かければ良いんじゃねーか?」

「私は皆さんと行きたいんですう!!」


リリアンが駄々を捏ね始めた。月光祭はパートナーの好感度がかなり上がるからな。特にヴィクター様がすごい。ジュースと間違えてアルコールを摂取してしまったヒロインがヴィクター様に別室で介抱される。いちゃいちゃべたべたしてくるヒロインにいつも余裕なヴィクター様が余裕を無くして「いいのかよ?このままシテ…」と言いつつ熱いキスを仕掛けてくるちょっと大人なイベントだ。

結局ルーク様はリリアンと一緒に行くことを約束させられていた。へたれめ。因みにルーク様とのイベントは一曲一緒に踊り終わったルーク様が「なっ、このまま2曲目も3曲目もずっと一緒に踊ろうぜ!」とニカッと笑うスチルのついた青春イベントである。

因みに同じ相手と2曲続けて踊るというの社交辞令以上の感情を持つパートナーと見なされる。3曲目も一緒に踊った場合、大本命か、既に熱々の夫婦ぐらいである。



***

帰ってくるなりリリアンに頬をひっぱたかれた。


「ちょっと!どういうことなのよ!?アレクシス様は私のものだって言ったはずよ!薄汚い泥棒猫!人の物盗るなんてどういう神経しているの!?信じられない雌豚ね!」


猫なのか豚なのかはっきりしてくれ。


「と言われても、アレクシス様に『僕はリリアン嬢の物なのです』とは言われてないし。向こうから誘ってくるんだし。みんなリリアンのものだって言う割には誰もリリアンを月光祭に誘っていなかったようだけど?」


今度は蹴られた。


「この雌豚!汚れた○○○!どうせあんたが娼婦のようにいやらしくアレクシス様にすり寄ったのでしょう!?でなければアレクシス様やルーク様がヒロインである私よりあんたを選ぶわけないし!汚い○○○○女!」


すごい自主規制用語が出ているよ…リリアンって口汚いよね。


「ヒロインって?この世界が物語だとでも言うの?」

「あたりまえでしょう!ここは私が主人公の物語の世界なのよ!」


デスヨネー。二次元じゃなきゃあんなイケショタ(もう中坊なのでショタではないのか?)いるわけねーし。私がときめいちゃうのもここが二次元だからに違いない。


「頭大丈夫?」


私の頭は激しく痛んでいるけれども。


「失礼ね!この○○○!」


喚いてるけど放置で良いよね?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ