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第13話

私は「もしかしたらアレクシス様が私の事を好きなのかもしれない」という疑念を抱いて以来、アレクシス様とはどことなくぎくしゃくしてしまっている。アレクシス様はキスの事は本当になかったことにしてくれているようなのだが、私の方があれこれ考え過ぎてしまって態度が硬くなる。私の硬い態度が伝わって話もあまり弾まない。ハンドマッサージもここのところずっと辞退している。一度ぎくしゃくしてしまうと元の態度に戻るきっかけもなくずっとぎくしゃくしている。

アレクシス様はアレクに似た男の子で、だから私は惹かれているのだと思う。でもそれってアレクシス様をアレクの身代わりにしてるんじゃない?そんなのアレクシス様にもアレクにも失礼だと思う。それにアレクシス様は公爵家の人間だ。ちっぽけで裕福ですらない男爵家の娘とは到底結ばれたりしないだろう。良くても妾に収まるくらいだ。そしてアレクシス様は家柄の良いお嬢さんを正妻に迎える。そんなのごめんだ。もしアレクシス様が私に好意を寄せていたとしても、私にはそれに応えることはできない。

でも、あのアレクシス様に本気で迫られたりしたら、そんな諸々の事情をすっ飛ばして心が揺れかねない自信があった。

……私は、アレクシス様と距離を置くべきなのだろうか…

ぎくしゃくしている私たちに喜んだのはリリアンだ。


「ほうら、やっぱりね。アレクシス様はあんたを選んだりしない。最後に選ぶのは私なのよ!」


的外れなことを言って喜んでいる。ここぞとばかりにリリアンはアレクシス様に甘えた。アレクシス様は煩わしいのを隠そうともせずにリリアンを邪険にしてるけど。

ルーク様も今がチャンスとばかりに頻繁に私をデートに誘ってくる。私はデートの誘いを程々に受けている。代わりにアレクシス様からのデートの誘いを断っている。


「フェリシア嬢。剣術試合の観戦があるんだ。行かないか?」


剣術試合か…そんなに興味はないけれど。


「お供します。」


流石に別の男とデートに行くために(私に好意を持ってくれていると思われる)アレクシス様のお宅の衣装部屋は使用できない。私はリリアンの着古した水色のワンピースを着て出かけた。着古した中では私に一番似合っているデザインだと思う。


「フェリシア嬢!今日もいい天気だな。行こうか!」


元気のいいルーク様は私の服には頓着しない。アレクシス様だったら「綺麗だよ。」って言ってくれただろうか。

馬車の中で少し話す。


「今日剣を扱うのは新人騎士ばかりなんだ。どれくらいの腕か見てみよう。」

「期待できますか?」

「どうだろうな。強い奴はどこにでもいるもんだし何人か当たりはいると思う。」


剣術の試合はそれなりに見応えがあった。アレクも成長してたらあんな風に強くなっているのだろうか。今頃アレクはどんな少年になっているだろう。きっと格好良くなっているんだろうな。そしてきっともう私の事を忘れちゃったんだろうな。アレクシス様の特性は「初恋を引きずっている」だったけど私の方がよほど引きずっている。もし、アレクの事を忘れられていたらアレクシス様の想いにお応えできただろうかと考えてすぐに否定する。随分な身分違いだ。


「弟以上に強い奴はいなかったな。」


上の空な私にルーク様が言った。


「弟さんとはきちんとお話しできたのですか?」

「ああ、あいつは騎士になりたくないらしい。運動としての剣術は嫌いではないが実戦として生身の人間に剣を向けるのが何より苦痛らしい。あいつらしいよ。優しい奴なんだ。」


ルーク様は優しい目をしてそう言った。


「弟ときちんと話せたのもフェリシア嬢のおかげだ。感謝している。ありがとう。」

「いえ…」


たまたま後日譚を知っていたから言えたセリフだし。反則みたいなものだよね。悩みをすっかり解決してなおルーク様はリリアンに靡かない。これはフラグが折れたと見ていいんだろうか…。

カフェで軽くランチを食べた。


「あのよ、フェリシア嬢。」


ルーク様が食後のお茶を飲んでいるところで切り出した。少し緊張しているようだ。


「はい、なんでしょう?」

「もう気付いてるかもしれないが、俺、フェリシア嬢が好きなんだ。結婚を前提としてお付き合いしてほしい!」


顔を真っ赤にしたルーク様が言った。ルーク様と結婚か。ルーク様の家は伯爵家。そこまで釣り合いが取れていない家ではない。それはわかっているが。


「申し訳ございません。お断りさせていただきます。」


客観的に見たらルーク様が素敵な男性だというのはよくわかっている。強いし、逞しいし、お優しい。だけれど私自身はルーク様に男性としての魅力を感じていなかったし、リリアンを敵に回してまで結婚したい相手ではない。ルーク様とのデートは何度出かけてもドキドキしないのだ。アレクシス様とお出かけするときはあんなにもドキドキさせられたというのに。

ルーク様は「そっか…」と言って黙った。へこんでいるようだ。

それでもしっかり家までは送ってくれた。


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