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第12話

翌日、まずクラッツ家にきてメイクアップ。クリーム色のクラシカルなドレスに真珠のイヤリングと真珠のネックレスをつけた。使用人さんに華やかなメイクをしてもらい、優雅に髪を結ってもらった。耳の後ろにローズ・オットーの練り香水をつけた。

アレクシス様も格段に男ぶりが上がっていた。ぴしっとしたタキシードにボウタイをしている。若いというのに衣装に着られている感は全くなく、見事にタキシードを着こなしている。


「綺麗だよ、フェリシア嬢。」

「ありがとうございます。アレクシス様も素敵です。」


アレクシス様が嬉しそうに笑った。


「参りましょうか?お姫様。」


アレクシス様が私の手を取って指先に口づけた。気障なんだけど嫌味にならない感じがアレクシス様の凄いところ。普通の女性ならうっとりするだろう。同年代の女性からしたらまさに王子様!って感じなのかもしれない。私もドキッとしたが「中坊のくせに!」と言う心を落ち着ける呪文を唱えて動揺を回避した。

王都のハイード劇場は、実に有名な劇場である。その佇まいは一貫して華美。王都の名所百景のひとつでもある。長いこと大ヒットを輩出している劇場でもあり、役者を目指すものなら一度は舞台に立ってみたいと言われている劇場なのである。

その2階の劇場が一望できる特等の貴賓席に私とアレクシス様は付いた。こんな良い席いいのかな?そわそわしている私と違い、アレクシス様は落ち着いたものだ。ゆったりとシートに腰掛け「楽しみだね。」と私に笑いかけた。

劇は例のマリエル王女が嵌まっていた王女と美貌の近衛騎士の物語だった。

この物語はとりわけ若いご令嬢方に人気があるらしい。客層もかなり若々しい感じだ。そしてご令嬢方は例の近衛騎士役の役者が舞台に登場すると「ほう」っとため息をついた。うっとり見とれているらしい。確かにすごく雰囲気のある役者さんだ。

劇の構成もなかなか面白かった。楽しんで第一幕を鑑賞し終えた。


「第二幕はどうなるんでしょう。ドキドキします。」

「本当だね。劇場にいる若いご令嬢方もうっとり余韻に浸りつつ第二幕を待ってるものね。」

「ええ。あの近衛騎士役の役者さんは本当に見事な演技でした。」

「なかなか雰囲気のある人だったよね。体格的に剣を持ったことはなさそうだったけど。」

「そんなに違うのですか?ルーク様もアレクシス様の体格を褒めていらっしゃいました。」

「見たい?」

「え?」

「見せてあげようか?」


アレクシス様が私の手を取って自分の胸に這わせた。


「じっくり…たっぷり…2人きりで…」


そのまま私の手を使い喉元から襟に指を割り込ませた。アレクシス様の出っ張った喉仏から首のくぼみに指が触れる。野生的に微笑むアレクシス様は美しくて、セクシーだった。

2人きりでじっくり、たっぷりアレクシス様の体格を鑑賞するとか無理です!!そんな妖しい雰囲気出されても困ります!!本当に14歳なの!?サバ読んでない!?か、顔はお可愛らしいけど、やることがやらしすぎる!!


「け、結構です…」


赤くなって強引に手をひっこめた。アレクシス様はくすっと笑って耳にキスした。


「良い香り…薔薇の香りだね。…堪らないな…」


うう…ここ公共の場だから!やめてください!

幕間でドキドキさせられたけど、第二幕もとっても楽しめた。


「楽しかった?」

「ええ。とても。王女様が他の貴公子に奪われそうになった時颯爽と駆け付けたシーンなんてぐっときました。」

「やっぱり女性はそういうシチュエーションには弱いのかな?」

「弱い方は多いと思います。望まぬ結婚の結婚式の最中にバァーン!と割って入って花嫁を掻っ攫っていくとか…」


前世で見たドラマの光景を思い出しながら話す。


「結婚式の最中に花嫁を掻っ攫われた相手の男こそ悲劇だけどね。お可哀想に。」


アレクシス様が心底気の毒そうに言うので笑ってしまった。それから二人で食事だ。アレクシス様がレストランを予約してくれているらしい。

瀟洒なレストランの完全個室の中に案内された。

アレクシス様がにこやかに聞いた。


「ワインはいかが?」


私は実は飲酒経験がない。料理にワインはよく使うけど、酒を楽しむという意味で口にしたことはないのだ。それを伝えると、「なら白と赤一本ずつ頼もう。カルブノワ産のワインは美味しいよ。渋みも少ないし。」と注文し始めた。

取れたてのぷりっぷりの海老も美味しかったけど、牛ハラミのロティールなんて噛み締めるごとに旨みが溢れて止まらなかった。アレクシス様がお勧めするだけあってワインも凄く美味しくてトロンとほろ酔いになってしまった。


「大丈夫?」

「うん…ちょっと飲み過ぎたかも。」


頭の中がふわふわしている。

馬車の中でアレクシス様にぎゅうっと抱きつく。「あれくしすさま…」舌ったらずに甘えて上目遣いで見つめる。とろとろに瞳は潤んでいる。ごくりっとアレクシス様の喉が鳴った。柔らかそうな唇にキスしてみたくて堪らなくなって思わずちゅっとアレクシス様の唇を奪ってしまった。一度キスしてしまえばたまらず、アレクシス様が何度も何度も角度を変えてキスしてきた。柔らかい唇の感触にうっとりする。夢中でキスしていたらクラッツ家に着いた。アレクシス様がはっと我に返って私から離れた。


「フェリシア嬢。降りられる?」

「ん…」


エスコートされて馬車から降ろされた。アレクシス様とクラリッサ様に介抱されて2時間ほどで正気に返った。や、やらかした…その一言に尽きる。酔ってキスとか!ファーストキスなのに!!私ってキス魔だったのだろうか…お酒は控えよう。アレクシス様も夢中でキスしてたように思うけど慣れてるのかな…?だったらちょっと嫌かも…ちょっと凹む。…なんて、なんでそんなことを考えているんだ!そういうキャラじゃないだろ!!


「あの、アレクシス様…」

「ん?」

「忘れてくださいね…」

「……。」


傷ついた顔された。ど、どうしてそんな顔するの???流されてキスしちゃったなんて、お互い忘れたい醜態じゃないの??


「…わかったよ。」


アレクシス様は悲しそうに瞳を伏せた。


「さ、フェリシアちゃん、お風呂に入っちゃいましょう?」


クラリッサ様がわざと明るく言った。豪華なお風呂で優雅に入浴。でも気分は全然うきうきしない。アレクシス様の傷ついた顔が脳裏を離れない。ううう。なんで傷つくの?もしかして…もしかしてだけど…アレクシス様って本当に私の事が好きだったりするのかな?エルザ様の嘘、大げさ、紛らわしい!じゃなくて?

ドキドキモヤモヤするううううううう。

私はお風呂を出て着替えると自宅まで送ってもらった。


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