最終話:俺たちの戦いはこれからだ!
これで完結となります!!
ここまで読んで頂きありがとうございました!!m(__)m
「永礼ちゃん、このタイミングだと修羅場になりそうだよ?」
「でも、お互い友達でしょ? 意外にそれも興奮するんじゃない?」
変な会話をしているのは、詩織と白瀬さんだ。
学校が終わり、これから旧ブラック・マグマのメンバーでお茶会だ。
忠之も一応読んであるが、マジカル・キュアの方々は読んでいない。
あれから早いもので、半年が経っていた。
戦いは終わり、全てが無くなったことになり、桃源町の名物であった、マジカル・キュアとブラック・マグマはもう見かけない。
それどころか、街の皆からその記憶は無くなっていた。
――俺たち6人を除いて。
「ふふ! 次のお兄ちゃんと叶のデートが楽しみだなぁ!
後ろを付けて行って、そして――」
そんなことを言っている詩織。そしてそれをメモする白瀬さん。
うん、いつもの感じだ。
だが詩織は、口ではあのように言ってるものの、以前の様な必死さが無くなっていて、普通に構って欲しいだけのブラコン妹なノリに近い。
詩織は今回の件で、ある意味、健全なブラコン? になった気がする。
まぁ、健全なブラコンというのは良く分からないけど。ああ見えて、俺と叶の仲を、ちゃんと見守っててくれている。
「お兄さん!!」
すると、後ろから叶の声がした。
後ろを振り向くと同時、俺の腕に叶が自分の腕を絡めてきた。
「なぁ、いい加減、お兄さんってのは止めない?」
「ふふふ! 嫌です」
俺の言葉を無碍なくあしらって、腕を引っ張って歩き出す。
「ちょっと! 叶ちゃん! 私の目の前でイチャラブ禁止! 寝取るよ!」
「詩織ちゃん、どうせ白瀬先輩と、変な打ち合わせしてたでしょ? そんなのダメだからね!」
「そ、そんなこと――! っていうか、今日はブラック・マグマで行くんだから、マジカル・キュアはダメだよ!!」
「偶然だね、詩織ちゃん! 今日はマジカル・キュアの女子会もあるんだよ?」
「え!? ちょっと! お兄ちゃんの仕業ぁぁぁ! 呼んじゃダメって言ったじゃない!」
あ、一瞬でバレた……
付き合い始めて一緒にいるのが楽しいこともあり、叶を誘ったことで全員呼ぶ、との話になったのだ。
「ちょっと! 叶! 先に行かないでよ!」
すると叶の背後から、赤城さんがやってきた。
「やぁ、赤城さん! さっきぶりだね」
「本当にね、もう……このクソ妹がいなければ一緒に行けたのに」
「はぁぁ!? 当たり前でしょ!? このクソ小鳥の存在は徹底的に排除に決まってるし!」
はぁぁぁ……また始まった。
あれから、赤城さんは叶に近付けないように、そしてブラコンを矯正するべく、詩織に細かくちょっかいをかけている。
そのせいもあって、二人の仲はこんな具合に……
まぁ、でも、いつも喧嘩してる姉妹な感じもしている。
それを見ながら白瀬さんはメモを取り、俺は叶と並んで歩く。
そして、更に、それを邪魔しようとする詩織は赤城さんにカウンターを食らって、白瀬さんはメモを取る、といういつもの流れで、俺たちはファミレスへと向かう。
「遅い!! 大和!!」
ファミレスの入り口で、共修学園の制服を着た葵が怒鳴りつけた。
「また叶とイチャイチャして……」
「そうなんだよ! 葵ちゃん! クソ小鳥も邪魔するし!」
「あぁ、そのクソ小鳥は、最近調子に乗って、クラスでも本性出したらしいわね」
「ぷぷぷ! そうそう! そのせいで、腹黒委員長って呼ばれて、全員に引かれてるんだよ!」
「ちょっと! クソ妹とフラレ葵は黙ってなさいよ!」
「――はぁぁぁ!? クソ妹ってどういうことよ!!」
「――はぁぁぁ!? フラレ葵ってどういうことよ!!」
うん、いつもの日常だ。
最近は、こんな感じで、殺伐としている。
「よぉ、全員来たようだが……マジカル・キュアもだな」
と、そこで忠之が姿を現した。
「ああ、悪いな……また騒々しく――」
「いや、ちょっと、良いか?」
俺の言葉を遮り、忠之は真面目な表情で俺に話しかけた。
こんな表情、なかなか見ないけど何かあったのだろうか?
「実はな、ちょっと……来てほしい所があるんだが」
忠之は視線を宙を漂わせて、申し訳なさそうに言った。
「その、全員呼ばれてるんだよ。あの方たちに」
その言葉で俺だけじゃなく、様子を聞いていた他の全員も誰が呼んだのか、察しがついた。
……
……
「懐かしいな……」
俺はそう呟いて、周りを見渡す。
背が高く、空にまで届きそうな針葉樹の中を進む。
歩道は整備されてるものの、滅多には整備されないのか、それなりに雑草に覆われている。
木漏れ日が暖かく感じるが、木々の間から照らす光は極僅かだ。
春を過ぎれば、この森、いや山か? も緑豊かな風景となって心が癒されるだろう。
だが、未だ寒い季節。傾斜のある山道を歩くと、自然と体も暖かくなるのだが、それでも未だ微妙に寒い。
「あ、ここって……」
傾斜を上った山の上。頂上付近。
息切れをしながら、詩織が呟く。
歩道の先には石畳。そして階段。その上には神社。
そう。俺たちがよく遊んでいた神社。つまり、あの二匹の――
「遅かったのぉ」
「やっと来たかボケ」
犬と猿が、石畳の脇から姿を現す。
「「「ボス……」」」
「「「マスター……」」」
俺たちは察しがついていたので、驚かずに二匹……いや、二柱の神様を眺める。
とはいえ、あれからこの二柱とは会っていなかったので、どうなったのか気にはなっていた。
だが、戦いが終わり神様は消え。街から記憶は失われ、そして、この場所すら忘却してしまった俺には、どうしようもなく。
だけど、やっとこの神様に会えた――
戦いが終わり、きっとこれからの報告か何かかと俺は思ったのだが、
「じゃあ次の戦いを始めるぞえ」
「やるぞクソ共」
……
その言葉に、俺たちはフリーズする。
「あの決着は着いたんだが、ちょっとトラブルがあっての」
「そうそう、新しい勢力が生まれたらしくてな!」
……は?
俺たちは、自分たちの独り言でざわめき始める。
「どうやら、この街に、”リア・デス”と”愛を見守るチーム”とか言う、勢力が生まれたらしくての」
「そうだ! しかもどっちも愛に固執してやがる! 俺たちからするとクソうぜぇぇぇ!」
「どこの神の差し金か知らぬが、ここは我らの地。戦うぞえ!」
「そうだ! やってやるぜぇぇぇ!!」
……
……え? それって、俺たちの……
俺たちに間が空く中、その言葉で動いたのは詩織だった。
「ふふふ! そうよ……! 私には”リア・デス”があるじゃない!
ね! クソ小鳥!! 共闘して、また”リア・デス”になりましょう!」
「え? は? 何言ってんの? このアホな妹は!?
もう私はどちらかと言うと”愛を見守るチーム”の方なんだけど!?」
「はぁぁ? 小鳥は何を言ってるの? あなたのその行動は、自分の気持ちを――」
「はぁぁぁぁ!? ちょっと! 止めてよ! 何言ってるの!?」
「そうやってふたを閉めてることくらい知ってるってーの! 葵ちゃんと叶ちゃんのこと大事だからって!」
何やら、元リア・デスの二人が剣呑な雰囲気だ……
すると、他の勢力の二人も……
「ふふふ! じゃあ私は愛を見守るチームね! 白瀬さん!」
「そのようね、葵さん。でも、まぁ私はネタが得られればそれで良いし」
うむ。これは、始まった気がする。
すると、俺たちの言動を聞いていた二柱は、
「おぬしら……! まさか……!」
「はははははは! クソ犬とクソ猿!! 私たちがそのリア・デスよぉぉぉ!!」
詩織は狂ったように叫び始め、目の前にいる猿に向かって――
「――くぁwせdrftgyふじこlp!!」
猿は吹っ飛ばされ、太い木の幹に叩きつけられた。
「いくよ! 小鳥! 私たち、”リア・デス”で、そこの二人のイチャラブを阻止するのよ!」
「だから、違うってば! 私は応援してるんだってば!」
「でも、お兄ちゃん、この前クラスの女の子に告白されてたよ!?」
「「「はぁぁぁぁぁ!?」」」
「ちょっ!! 詩織! お前、それ言わない約束――!」
「お兄さん、どういうことですか?」
「依光くん、どういうこと?」
「ちょっと大和――!?」
叶と赤城さん、葵まで俺に詰め寄ってくるし!
「ふふふ、何となく分かったぞえ、ヤマティン
お主は、こやつらに裏切られたのじゃな?」
「いや、犬っころ。今、出てくな。訳分からなくなる」
「”リア・デス”と”愛を見守るチーム”の我が町への侵入!!
それを守るための、お主、ヤマティンとミドリなのじゃろ!?」
「ちげーし、ちょっと犬助けろ」
葵は俺の胸ぐら掴み、告白について全て話せと揺さぶりながら脅してくる。
「わしに任せろ! 我ら”ブラック・キュア”がお前たちに力を貸すぞ!!
よし! ウザダーもこっち側だな! 行くぞ!」
あー、もうなんか訳が分からない……
でも、さっきの告白について話を聞こうと妬いている叶は可愛いから、一緒のチームになるのは楽しそうだと一瞬思ってしまう。
それに、あの戦いの生活は楽しかったし――
「ふふふ、我が”リア・デス”の仲間よ」
「”愛を見守るチーム”よ、いざ、使命の時間だ」
新しい神様が二柱現れ、互いのチームに神通力を与えようが――
「いくぞ! ”ブラック・キュア” 俺について来いやぁぁ!」
猿が復活して、俺たちに力を与え、そして突っ込んで行こうが――
「お兄さん、さっきの話、詳しく聞きますからね……!
……でも、今度はこうやって仲間で戦うの……楽しみです!!」
隣で新しいコスチュームに変身した叶と並んで走ろうが――
「うし! ウザダー戦うか! あの告白を闇に葬るためにも!」
俺はウザダーに向かって叫ぶ。
ウザダーは頷き、新しい姿に変身を開始する。
「今度はドキドキ・メーターじゃないからのぉ! 純粋に我が町を守れぇぇぇ!」
子犬が激励する中、俺は――
何の違和感も感じず、それを受け止める。
だって、俺たちの戦いはこれからだから!




