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俺と妹が悪の組織に入りました  作者: モコみく
2章:悪の組織、活動中です
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第58話:最終戦争 ~ 友情

「ごるぁぁぁぁ! もう終わりだ!

もう終わりなんだよクソッタレゴルァ!」



乱入した猿が吠える。




「なんだこの猿」

「めっちゃ空気読んでない」

「良い所だったのに」

「私がお膳立てしてこれかよ……」

「いや、それより、大和、説明――」



俺たちだけじゃなく、マジカル・キュアの仲間たちにも白い目を向けられる猿。




「おめぇらぁぁ! うっさいわぼけが!!

そこのイチャラブなんか見てるからドキドキするんだろうがぁぁ!

アクアも見事に振られやが――くぁwせdrftgyふじこlp!」



あーあ、言葉の途中で、アクアにぶっ飛ばされた……



今、それ言っちゃいけないね、うん。



葵、真っ赤になってるし……ってか、今ので更にドキドキしたんじゃないの?




「ふぉふぉふぉふぉ!! もうすぐよのぉ!」



と、いつの間に現れたのか、俺の足元にボスが佇んでいた。




「ドキドキメーターの一定値を、もうすぐ超えるぞえ!!」



ボスは恍惚とした表情を浮かべ(犬だからそんな雰囲気で)、俺を見上げる。




「あやつが邪魔しに来たから……いよいよ全面戦争じゃのぉぉぉ!!」



ドキドキしないようにする必要があるから、エテ公が叩き込んで来た訳か……



それなら、味方を気絶させた方が手っ取り早いだろうに。




「この前聞いたけど、いよいよ……結末か」



白瀬さんがそう言いながら、俺の隣に来る。もちろん、オタ・クールとして。




「ファイアと少し話したけど……どうやら、皆、知ったらしいな。

それに……さっきの事で、まぁ、私の手伝いは不要になったみたいだし……

第三者である私をスケープゴートに使って貰おうと思ってたのだが、残念だ」



白瀬さんはそう言って、蹲る詩織を見下ろす。




「詩織さんは……辛いが頑張ってもらうしかないか」



白瀬さんは、蹲る詩織の肩に手をかける。



猿と犬が邪魔してきたが、俺も詩織に声をかけなくては。




「詩織……その……」



だが、俯き泣いている姿を見ると……それにさっきの勢い削がれてしまって、言葉が続かない。




「……私、ずっと……お兄ちゃんと一緒だったから」



詩織が俯き、目を瞑ったまま呟く。




「だから、ずっと――」

「うひょひょぉぉ! 隙だらけだぜぇぇぇ!! ひゃはぁぁぁあ!!」



クソみたいなタイミングで、猿がこちらへと跳躍し、その剛腕を振るう。



「詩織! 避けろ!」



俺は猿の目前に立ちふさがり、手を伸ばして詩織を庇う。




「――お兄ちゃん!!」




詩織は絶叫する。お兄ちゃんと呼んでるが壊れたわけではない。



兄貴と呼ぶ詩織は、”兄離れの一歩”の姿なのだから。



元々、詩織はこうやって、俺の後ろで怯え、誰とも話をせず、友人も作らず、俺にだけ依存していた。




でも、俺が外の世界へ連れ出し、葵と一緒に遊ぶことで、徐々に俺から自立していった。



それが”兄貴”と呼ぶ詩織の姿だった。




あぁ、そうか……俺はまだ、お兄ちゃんと呼んで欲しかったのかもな……




迫りくる猿の右手を、スローモーションのように感じながら、詩織を庇う。




一発を貰う覚悟をした時、俺の前に、薄緑色した髪の女の子が後ろ姿で庇う様に入って来ると――




「マスター! 邪魔しないでください!」



「んだとゴルアぁ――ってミドリてめぇ何やってぇぇ――ぇぇぇひでぶっっっっっっ!!」



ミドリの右ストレートが、カウンターで猿の顔面に突き刺さった。



”ひでぶ”と言ってるが、”あべし”の様に顔面が埋没している。



うん……ミドリ凄いな……怒らせないようにしよう……




「……詩織ちゃん、ごめんね……

でも……私は……」




緑川さんは、俺とその後ろで蹲る詩織に、後ろ目で視線を投げると、直ぐに逸らす。



「……叶……ちゃん」




「な、お、おい……どうして全員、本名? っぽいので呼び合ってるんだ?

これって、どういう……? それにカウンターで上司を……?」



空気を読まないウザダーが、横から俺に話しかけてくる。



「いや、もう分かり辛いし? だから本名で良い的な?」



「え? そ、そうなの……か?」


「……」



ウザダーは、俺の隣にいるボスに目配せをすると、ボスはため息後に頷く。



「まぁ、そうよの。これはこれで面白いから有りじゃの。

戦いも終わるじゃろうし」



ボスはそんな事を言い終わると、「もうすぐじゃぁ」とニヤニヤして俺たちの戦いを眺める。




俺は詩織の方に視線を戻すと、詩織は一瞬、顔を上げようとしたが、直ぐに俯き、



「……私、ずっと……誰かに守られてばかりだね……

お兄ちゃんと……そして、叶ちゃんにも……

これじゃ……ずっと、私は……」




詩織は、そう吐露する。




「詩織……」

「詩織ちゃん……」




悲痛な様子に、俺と緑川さんが詩織に近づこうとすると、



「そんなの、分かってたことでしょ!?

自分で分かってて、それでも、自分が納得しないだけだったんだから」



葵が後ろから詩織を抱きしめた。



傍らには、赤城さんと白瀬さんもいる。




「兄貴に好きな人が出来たんだから! 応援してあげようじゃない!」



葵はそう言うと、詩織を抱きしめる腕に力を込めた。



すると、詩織は顔を静かに上げると、緑川さんに問いかける。




「……叶ちゃん

……お兄ちゃんのこと……好きなんだよね……?」




「……っ!

だ、大好きです……!

すごくすごく、大好きなんです!」




緑川さんは、真っ赤になりつつも、間髪入れず力強くそう宣言する。




詩織はそのまま俺へと視線を移し、何かを話す前に、俺の方から、



「俺は、緑川さんが好きだ」



告げる。



新しい溜息と共に、詩織は俯くと、後ろから支えている葵が力を込めて頷いているのが見て取れた。




「ヤ、ヤマティンさん……!

あ、いえ、お兄さん……!

あ、あの……! すごく……嬉しい……です!!」



「……叶ちゃん……

そっか……葵ちゃんの言う事、分かった気がする……

私も……同じなのかな」



そう言うと、詩織は今までに見たことのない笑み……いや、それは諦観……、いや達観したような深い笑みを浮かべた。



「……詩織ちゃん……ごめんね……でも、私……」

「いいの、叶ちゃん……私、ずっと気付いてた……」



二人が目を合わせ、微かに微笑んだ時、俺は先ほど言えなかった言葉を言うべく口を開く。




「詩織……さっき言おうとしたけど、俺たちは兄妹だから、何があってもずっと――」

「ごるぁぁぁぁぁぁああああああ!! やべぇぇぇぇぞごるあぁぁぁ!!」




そして、猿が復活した。



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