第56話:バレた戦い
「キャーーーー!! ブラック・マグマよ!」
「うわ! 出やがった! うぉぉぉ!? 何か本気だぞ!」
「やべぇぇ! あの白い姉ちゃん、マジで死ぬ――」
俺たちの前から、人々は逃げ出す。
そして、オタ・クールはその人々に向かって、掌から出た光の刃を投げつけていた。
地面にぶつかった光の刃は、爆発霧散する。
「オ、オタ・クールさん……? 今日は凄いっすね」
「そう? まぁ、手伝うって言ったしね」
オタ・クールそう言って、構わず刃を投げつけていた。
「凄い! 私もやらなきゃ!」
シオティンはそう言って、杖の先から炎を出すと、水平に機銃掃射する。
白瀬さんに相談した後、俺たちはそのままバイトへ来た。
遅れて来た詩織は、どこか晴々した表情をしていたのが気になったが、まぁ、葵にでも相談して、気持ちを入れ替えたんだろうと思った。
そして、白瀬さんはどう協力するのか何も言わず、そのまま何故か本気モードで死人が出る勢いで、市民を攻撃していた。
「そこまでよ! ブラック・マグマ!」
と、現れたのはマジカル・キュアの面々。
……あれ? 何かファイア以外、様子が変と言うか……
「ちょっと! シャレにならない攻撃してんじゃないわよ!」
ファイアは俺たちを見て非難すると、それに向かってオタ・クールが歩いて行く。
「ふふふ。来たわね。さて、皆殺しの始まりよ!!
……ボソボソ……私を憎ませて……共闘して友情して……とりあえず百合を追加すれば……」
「……!? オタ・クール……? どう言う事……!?」
不思議そうな表情になるファイアと、呟きを拾ってゲンナリする俺。
すると、シオティンは放射していた手を止め、ファイアの後ろから出てきた人物に視線を向けた。
「……来たわね、ミドリ」
「……シオティン……さん」
あぁ……あの様子じゃ、やはりミドリはシオティンの事……
ん? っていうか、まさかシオティンも……!?
「友達だからこそ……! 兄離れさせてあげます!」
「ぐぬぬぬ! 友達だから諦めると思ってたけど! そうじゃないみたいね! 案外図太いわね!」
あぁ……
どういう訳か、シオティンも把握してる……ってか、まぁ、ミドリにバレたから時間の問題だった気もするけど……
「じーーーーーー」
ん?
何か視線を感じる……
と、避難しているファイアと、それに対峙しているオタ・クールの横にいる青い髪をした女の子。
アクアがこちらへと歩み寄ってくる。
「……アクア……?」
「大和――じゃない、ヤマティン、今日こそ勝負をつけてあげるわ」
……
「え? アクア? 今、何て言った?」
「何でもないってば! 今日こそ勝負をつけてあげるわ! ヨマトィん!」
くそああぁぁぁぁぁぁぁ! もう全員にばれてるな、これ!!
「……あなたに勝ったら……きっと、あの時の想い……叶えられると思うんだ……
待ってるって言った、その想いが、叶うって!」
アクアはそんな重いセリフを言って、俺に対峙する。
「おい! どんなフラグだそれ! 俺が負けるとあの時の告白を受けるようになるのか!?」
「行くわよ! 私の想い!」
アクアは勝手に納得して、俺に挑みかかる。
「ナミノリ!」
俺はアクアが出した、波の攻撃をギリギリで躱す。
アクアは力任せに攻撃をするタイプだ。なので、他のメンバーに足止めをして貰えれば!
「おい、シオティン、オタ・クール! アクアを――」
と二人を見ると、
「兄貴は私と結婚するの!」
「いいえ! 私と相思相愛なんです! だから唐揚げプレイももうお断りです!」
くっ……じゃあ、オタ・クール!
「さて……ミドリとシオティンの百合化作戦の前に、ファイアが何を考えてるか、いろいろ聞かせて欲しいな、ね。
きっと妹をどうにかさせたいんじゃないの?
……それか……告白した、アクアのためなのか……」
「――ちょっと、オタ・クール! 邪魔しないで! って……あなた……!?」
……うむ。どうやら、全員がいつもと違う戦いを始めている。
ってか、オタ・クールにそこまで話しては無いんだが、全てを悟ったらしい。
まぁ、デートの時を思い出してしまえば、必然的に悟ってしまうだろう。
さて……俺は俺で、アクアと決着を付けないといけない時か。
そう思い、俺はアクアへと視線を戻す。
「詩織ちゃんと共闘することにしたんだ。
でも、その前に……私の気持ち、やっぱりちゃんとしないと……ライバルだしね!」
そう言って、アクアは右手に水の鞭を持って、それを器用に振り回して来る。
俺はそれを杖で防ぎながら防戦となる。
「行くわよ! 大和!」
アクアは鞭を振りかぶる。俺はその鞭の方向とは水平に移動し、それを避けようとする。
が、アクアは地面を蹴り、その方角へ一気に間合いを詰める。
え? 鞭は囮か? 動きを誘われた!?
アクアは俺の懐に潜り込むと、その両手で俺を――
「ぎゅ」
抱きしめた。




