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俺と妹が悪の組織に入りました  作者: モコみく
2章:悪の組織、活動中です
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第49話:小鳥とファイアの憂鬱 ~ 正体


「はぁ……」



私はため息を吐いた。



まさか、背後の席に知り合いが座り、そして重い話をして行くなど、想像もできなかった。



ここは桃源町商店街の一角にあるファミレス。



その角にある四人掛けの席。



バイトが終わり、そのまま家に帰ろうと思ったものの、ちょっと休憩したくなった。



家に帰れば、家の手伝いや宿題などで、また忙しくなる。



なので、ちょっとデザートをつつきながら休み、そして友人――葵のことで考え事をしたいと思ったのだ。




四人掛けの席で、廊下側を背にして一人で座っていると、その後ろの席に、友人である葵と、同級生の妹である詩織ちゃんの二人が席に着いた。



始めは全然気付かなかったものの、気付いた時には既に重い話をしており、「やぁ!」なんて話しかけられる雰囲気では無くなっていた。



そして、ある程度、話がまとまった時に、二人はファミレスを出て行った。




しかし……好きな人か……



私は詩織ちゃんの言葉を思い出す。



そして、それと同時に葵の言葉も振り返る。



だが、その葵の言葉は先程のではなく、数日前の言葉だ。




「初恋っぽいのを引きずってたのかな」




葵から告白したとは聞いていた。



そして、徐々に依光くんへのアプローチも増やしていると。




ノロケも入っていたが、これから恋を成就させたいと願う友人の言葉を、私は暖かく聞いていた。



だけど、ふとした瞬間、その言葉が漏れていたのだった。




その言葉を聞いた私は、ある違和感を思い出した。



葵の依光くんに対する気持ちが、前よりも落ち着いている事。そして、ある種の満足感に囚われているような事。



ここからが勝負だというのに、まるで憑き物が取れたかのような言動が多かった。



その違和感の正体が、これだったのかと気付いた。



告白したことで、過去の想いを吹っ切ってしまったんだろう。




昔から聞いていた幼馴染への想い。



その執着が、今、見当たらない。




「そっか……」



その時、私は葵の独り言のようなそれに、頷くしかなかった。



葵は、私が何を考えたか、そしてどういう結論に至ったか、その言葉で分かったようだった。




だから私は、葵の中途半端な気持ちと、過去の囚われた幻想、ある種の意地を、依光くんが断裁してくれることを願うしかない。




「……こう言っちゃなんだけど、突き放すときは突き放した方が良いからね……?

中途半端になっちゃうと、逆に……」



その後、依光くんに言った言葉も思い出す。



突き放した方が……葵の……過去に囚われた想いを解放できるはずだから。




「好きな人……」




そして、先ほどの話。




私は安堵と不安、そして、よく分からない焦燥感を感じながら、冷めたコーヒーを飲んでいた。



外を見ると、そろそろ冬の季節が始まる、肌寒い天気。



だが、この窓際の席は、暖かい木漏れ日を受け入れてくれていた。




……



……




「はぁぁぁぁ!? ”リア・デス”の再結成!?」



私は叫ばずにはいられなかった。



「そうよ。だから協力して。

ミドリとヤマティンを邪魔するの……!

リア充には死を……!!」



後ろから私を羽交い絞めにしたシオティンは、私の耳元でリア・デスの再結成を促したのだ。



「ファイアもあの二人がイチャイチャするのは嫌でしょ!?」



「そ、それはそうだけど、私はもう――」



「私は勝負はどうでもいいの。協力してくれれば負けてあげるわよ……?

このままだと、あなたたち敗北決定だしね」



「――んな!?」



「考えといて」




と言った所で、シオティンは私の羽交い絞めを解き、後ろへ距離を取った。




「く……やるな、ファイア」




シオティンが憤る。



またこれだ。私は何もやっていない。勝手にシオティンが離れただけだ。



何故かシオティンとヤマティンの二人は、わざと負けようとしている節がある。



何かの作戦なのだろうか?




「きゃぁぁぁぁぁ!」



と、前方でアクアが吹き飛ぶ姿が確認できた。



今日はブラック・マグマが総動員しており、危険なオタ・クールと、危険ではないが壁役をやられるとそのウザさが際立つウザダーもいて、今日は乱戦になっている。




「ウザダー! ほら! 今が隙だらけじゃん! シオティンから習った電撃をお見舞いしなさいよ!」



「お、おう……ちょっと待ってくれ、えっと……」



「――ちっ! 遅いわぁぁ!」



「――え? うぇぇぇ! ぐべぇぇぇぇぇぇ!!」




乱戦になっている原因は、オタ・クールとウザダーのコンビネーションが最悪なことと、ヤマティンとシオティンのわざと負けようとする雰囲気。



これに飲み込まれ、この戦いは泥沼というか、何というか、訳が分からない状態になっている。




「アクア! 大丈夫!?」



私は吹き飛ばされたアクアに駆け寄り、起き上がれるように手を貸す。



「な、なんとか……

オタ・クールとウザダーが、予想以上に混乱をもたらすから……」



「えぇ……私も危ない場面が結構あったから、気を付けないと」




と、戦場の行方を見ると、何故かオタ・クールとウザダーが殺り合ってるし(オタ・クールの一方的な展開だけど)、更に逆側では、




「あ、ヤマティンさん、あの……」

「う、うん、じゃあ、俺はあっちを攻撃するね」

「は、はい! じゃあ私はあっちを攻撃しますね」

「あはは」

「うふふ」



……どっちを攻撃するんだよ、お前ら……!



ってか、それ会話なのか!? 会話にすらなってないぞ!?



ったく、あの戦場の一角だけ、何故かピンク色になってるし!




それを見て、先程のシオティンの言葉を思い出す。




ミドリの邪魔をするってか……



……



……ん?



好きな……人?




私は、何故か先日のファミレスの事を思い出した。



というのは、あまりにも……状況が……一致してる……からなんだけど……



いや、でも……まさか……




「うわぁ……やられたぁ」



瞬間的に、私はシオティンの方を見る。



そこでは、アクアのパンチを受けて(受け流したかのように見えたけど)、シオティンは吹き飛んでいた。(後ろにジャンプしたように見えるけど)




……



……?



まさか……



詩織……ちゃん?



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