第39話:そして戦いの日常
「はははははは! 疑いもせずに来るとはな! マジカル・キュアどもが!!」
今日もウザダーは絶好調だ。
いや、いつもより、といった感じか。
ショックから立ち直り、俺はいつもの戦いへと繰り出した。
最近、俺たちの活躍というかドキドキが、マジカル・キュアへ悪い(俺たちには良い)影響を与えてるようだ。
なので、そこそこ給料が良くなっているのもあり、ウザダーは張り切っている。
ちなみに、この前の遊園地での出来事は、桃源町で起きた事ではないので、ボスもノータッチとのこと。
だけど、あの葵との……キスは、俺からドキドキさせたわけじゃないから、結局はカウントされないだろう。
むしろ、俺がドキドキさせられたので、ペナルティがあっても良いくらいだ。
と、そんな絶好調のウザダーは、マジカル・キュアを罠にかけ(また子供をダシに使って)誘き出した所だった。
「今日の俺は金回りも良くなって、いつもとは違うからな!」
ウザダーはそう言って、現れた三人のマジカル・キュアに怒鳴りつける。
俺はその一人に目を向ける。
以前とある出来事から、その子は”俺――ヤマティン”とは絶対に目を合わせなくなった。
いや、むしろ距離を開けて、戦わないのはもちろん、俺が絡んでいると他のメンバーへのサポートすらしなくなっていた。
「……ふふ、今日こそ決着をつけなきゃ……」
シオティンは、その子――ミドリに向かってそう呟く。
まぁ、何というか、あの告白の後、俺もどうしたらいいか分からず、有耶無耶にしてしまっている。
そして、どんな態度を取れば良いのか分からず、戦いの最中にも関わらず、お互いに気を使ってる感じになっていた。
いや、敵同士なのに何を言ってるか自分でも良く分からないが、そういうことになっている。
だけど、先日、遊園地での葵の言葉を聞いて、俺は再確認した。
なので、今日こそはミドリに言わなければと思っている。
葵への言葉を同等の言葉を。
このままでいい訳が無い。それがケジメだよな。
ちなみに、葵とはあの後、特にギクシャクしたりはしていない。
逆に、あっちから連絡が増えたくらいで、昔の様な馴染みさを戻しつつもあった。
「くらえ! マジカル・キュアぁぁぁぁ!!」
叫ぶウザダーは長剣の根本にある宝玉から、怪しい光線を出す。
脱力光線かと思ったが、それは電撃の様で――
「な、何――!?」
「あ、あぶな――!!」
「え!? え!?」
アクアとファイア、そしてミドリはギリギリでそれを躱すと、驚愕の表情を浮かべた。
それはそうだ。その攻撃は今までの脱力光線ではない。それはまるで例の10万近いボルト攻撃だった。
「ふふふ……私はパワーアップしたのだよ。
シオティン様からの修行を受け、神の力を手に入れたのだ!!」
シ、シオティン……様!?
え? 修行!? 神の力?
あ、そういえば、あの妹は神通力をコントロールできるよう、いろいろ勉強してるって聞いてたけど……?
え? まさか、これほどなの……!?
「ふふふ……あいつを囮にして、私は私の目的を果たすわよ……」
隣からシオティンの呟きが聞こえる。
どうやらミドリが目的のようだ。まぁ、そうだよな。
俺は何とか、ミドリと話をしないと……
「どんどん、いくぜぇぇぇ!」
攻撃力が上がったせいか、いつも以上にテンションが高いウダザーは、マジカル・キュアへと駆け出す。
マジカル・キュアの三人は、距離を取ろうと後ろへ逃れようとしたが、その内の一人、ミドリがシオティンに動きを読まれていた。
「これをぉぉ! 待ってたのぉぉぉ!」
シオティンは機械仕掛けの様な杖を振りかぶると、杖は真っ赤に輝く。
どうやら、神通力を発動させて、杖の攻撃力か何かをアップさせたようだ。
そして、まだ距離はあるが、そのまま油断していたミドリに向かって――
って、ダメだ! このままじゃ!
「――おるぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は右前方――シオティンとミドリへ向かって、自分の杖を思いっきり投げた。
そして、その杖は、シオティンとミドリの中間地点に突き刺さり、攻撃しようとしていたシオティンは驚いて、動きを止めた。
「あ、兄貴!?」
「……ヤ、ヤマ……ティンさん……」
二人は俺を見て、驚いた表情。そして、その背後のアクアとファイアは、
「ひそひそ……何か始まるかもよ?」
「あの二人ね……でも、ここの所、ミドリの扱いが難しかったから、解決できると良いけど」
「え? じゃあまさか付き合う……? こ、恋人……!?」
「え? そういう話!?」
「キャァァ! ちょっとちょっと! 見よう見よう!」
「そんなの! やっぱり私は――」
……
全然、ひそひそ話じゃない話で盛り上がっていた。
って、あれ……?
ウザダーは……?
あ……いた。
あぁ……あの様子じゃ、シオティンとの打ち合わせ通りにいかなかったから、判断付かずにオロオロしてる感じだな……
「兄貴! ちょっと、どういうこと! どうして……邪魔するの……?」
「……」
すると、シオティンはそう言って、俺に詰め寄る。
ミドリは困った様子でそれを見ている。
参ったな……咄嗟の行動だったんだよな。
確かに、ここで変な言い訳すると、このブラック・マグマと、マジカル・キュアの関係そのものが崩れてしまう。
ど、どうしよう……
「兄貴ってば!」
……
「ミドリに大切な話があるんだ」
俺は素直にそう言った。
すると、
ミドリは顔が真っ赤になり、俯き、
「キャーーーァァァァァ!!」
「ちっ……っ……何なの……!」
アクアは色気付き、ファイアは憎らし気に。
そして、
「なん……だと……」
シオティンは驚愕し、
「え? え? シオィン殿……どうすれば……?」
最後の一人は困惑して、俺とシオティンを交互に眺めていた。




