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俺と妹が悪の組織に入りました  作者: モコみく
2章:悪の組織、活動中です
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第36話:告白

その後、当たり障りない会話をした。



遊園地でばったり出会って、合流して……



その顛末とやらを、葵から聞いた。



「ボ、ボランティアサークルの活動で来たら、大和がいるから、びっくりしちゃった!」



そんな事を言ってるが、まぁ、話を聞いて予想する限り、ずっと俺たちを尾行してたんだろうな。そんな偶然はありえないし。



ダブルデートの日付を教えろとかも言ってたし……ってことは、駅前のペットボトル攻撃はコイツだ、間違いない。詩織を狙ってたし。



そうなると、遊園地での傘攻撃は……やはり葵なのかな。いや、でも白瀬さんとは絡み無いし……




そこで、さっきの”再開”で思い出した俺は、少しの期待を思い浮かべてしまう。



尾行という手段の理由も、そこへ辿り着く……ような気がするのは自惚れ過ぎだろうか。




「それで、大和。今日こうやって連れ出したのは……

実は、大和に……大切な話があってね……」




葵は、俺を真っ直ぐ見つめて、切り出した。



最初の緊張していた、言い辛そうな、何らかの不安はもう見せなくなっていた。



”再開”からの流れで、俺たちの壁は薄まったのだろう。




「大切な話……?

思い詰めてる感じもするけど……その、大丈夫か?」




「……」



俺がそう言うと、葵は少し逡巡する仕草を見せる。



先程の話の続きから言おうか、改めて言おうか、その辺りで悩んでそうな表情だった。




「……」



言い辛そうな話なのだろうか。



そういえば、ずっと会いたかった言ってたけど、あの頃、何かあったかな……




葵が転校してしまった時を思い出す。




ずっと小さい頃から遊んでいた、幼馴染。



それが突然、目の前から消えた。



とは言え、そこまで重大では無く、どうせ直ぐに会えると思っていた。



なので、深刻にはならず、いつもの挨拶の様に「じゃあ、またな」だけで最終日を終わらせた。




そしてその事は、俺たち兄妹のある種の後悔になっていた。



たまたまファミレスで会った時、どうやら葵も同じ様な気持ち、という事が分かり、ある意味ホッとしていたが、正直、どのように接すれば良いのかが分からない状態だった。




あの時の後悔、それからの空白期間。



昔のように遊びたい、また気軽に話したい、という思いはあったものの、「連絡しようぜ」と交換した連絡先に応えられずにいた理由は、実際はそんな所。



そして、葵に対する初恋。



それらも含め、再会に対する喜びよりも、戸惑いの方が大きくなってしまっていた。




まぁ、戦いで頻繁に会ってるからというのも、確かに理由の一つだけど。




俺はそんな事を思いながら、葵の言葉を待っていた。




「いろいろ……言おうと思ってたことがあったんだけど」




葵はそう言って俺を見つめる。




「結局は、全部、一つに集約されるから」




葵はそう言って、俺の一歩先まで近づき――




「大和。私ね、ずっとあなたのことが好きなの」




葵はその言葉で、真っ赤になる。が、決して、俺から視線を逸らさない。




「今も、ずっと昔から、あなたのことが好きなの。

……再開した時、昔からの想いも変わらずにいたことが……確認できた……ううん、むしろ、

会ってもっと……好きになっちゃった……だから……

この気持ちは、絶対に伝えたい……って……」




「……」




真っ赤になった葵は、それでも俺から視線を逸らさない……




――が、俺は、ど、どうしよう……ぉぉぉぉ!?



ま……さか、告白だった……なんて……!




確かに、葵の事は……昔、好きで……まぁ、初恋ってやつだろうけど、そして、それを期待したこともあるし、さっきもそう考えた!



でも、まさか、それが本当で、そして葵から好きって……え、今……え? こういう時、ど、どうすれば……!?



――って!? でも、ミドリの事も考えないと……! 放置する訳にはいかないし……!




あぁぁぁぁ!! ……ん、あれって……!?



その時、葵の背後……石畳から離れた木々の陰に、良く知っている人物の影が見えた。




あいつ……




……あ、そっか。



そう言えば……そうだった……




なんだ、昔から……答えは出てたんじゃん。




「……葵」




俺は葵の背後から視線を動かし、目を離さない葵に話しかける。



すると、葵の表情が揺れる。




「……その、凄く……嬉しい、その……

俺も、お前のこと……初恋……だったから……」




「え、ほ、ほんと……っ!?」




俺の言葉に、葵は今まで見たことのないような、驚きと笑顔の表情になる。




「でも……俺は昔から、一人の女の子を気にしなきゃいけなくてさ」




「……あ」




俺の言葉に、葵は何を言いたいのか、直ぐに分かったようだ。




さすが……やっぱり俺の幼馴染。




「あいつを一人前にするまでは……そういうのは考え難いよ。

……って、葵なら、分かってた……よな?」




「……そっか! やっぱりそっか……!」




「そういうこと。

……だから、ごめん。

俺は……今は詩織の事を、大事に思ってる」




と、そこまで言った途端――




「おににににににいぃぃぃぃちゃぁぁぁぁぁぁぁぁんんんんんんん!!」



「――ぐべらああぁぁぁっっっっっっっ!?」




俺の腹に、詩織の頭がめり込み、そのまま抱き付かれた。




「お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃん!」



詩織は叫びながら、タックルを止めようとせず、頭で腹パンを何度も噛ましてくる。




お兄ちゃんと呼んでるけど、「しおらしさ」は無く、感涙してるだけ。




あぁ、よっぽど嬉しいのか……



そうなると、葵の期待には……まだまだ応えられそうにないな……




「あーあ……やっぱりそっか、そうだよねぇ」



葵は俺と詩織が組み合ってるのを呆れるように眺め、そして溜息を漏らす。




「でも……」




――くぃ



葵は横から、俺の服の裾を掴む。




「ずっと待ってたから、これからも待つつもりだよ」




そう言って照れた葵の顔が、俺の目の前まで迫ると、柔らかいものが俺の唇を濡らした。




「――っ!?」





「じゃあね! 詩織ちゃん!

まだまだ負けないから!」




葵はそう言って、遊園地へ繋がる道をダッシュして行った。




そして、肝心の詩織は、キスされた俺の唇を眺め、それに上書きしようと、自分の唇を――




「って、やらせねーし!」




俺は咄嗟に躱して、詩織のタックルから逃れる。



「ぐぬぬぬぬぬぬぬ!! ラスボスが増えたぁ!!」




詩織はそう言って葵のキスに憤るものの、その表情はどこか嬉しそうだった。






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