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俺と妹が悪の組織に入りました  作者: モコみく
2章:悪の組織、活動中です
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第35話:葵との再会

「……白瀬殿、敵対勢力は商業館へ……」



「そうか……分かった。ご苦労」




私は跪いて報告する斥候の話を聞く。



目的地は商業館……




しかし、多角関係の取材をしたいから……どちらへ煽りを入れるか迷う。



赤城先輩……は正直そこまで発展しなさそうだ。



ということは、今までで最もその実力を発揮していた詩織さんだな……




私は詩織さんに近づき、相手がどこへ消えたかを教える。



すると勢い良く階下へ走って行った。



よし、私も後を追わないと……っと、その前に。




「黒滝先輩、赤城先輩のことよろしく」



「――え!?」



私はそう言って、詩織さんの後を追う。




……



……




「あっちに、臨港公園があるんだ! 行ってみようよ!」



クレープを食べた後、そろそろ皆の所へ戻ろうと言おうとした時、葵が突然そんなことを言った。



「いやいや、さすがに皆と合流――」


「い、良いから! ほら! 行こう!」




葵は俺の手を取ると強引に引っ張って、駆け出していく。



「――ちょ、ちょっと待てって!」



「……ちょっと、やらなきゃいけないことがあんの」




「やらなきゃいけないこと……?」



「……」



葵は、少し後悔するような表情を作るが、それもすぐに戻り、真面目な表情で駆けて行く。



俺はその表情に何も言えなくなり、葵の隣で一緒に走る。



俺たちは、戻るように信号を再度渡り、遊園地の脇を抜けて行く。



商業施設には入らず、逆側の信号を渡り、ホテルへの道を進む。




「――ちょ、ちょっと! もう、走らなくても良いだろ!?」



「あ、あぁ、ご、ごめん! ……はあはあ……そ、そだね、ね……」




そう言って俺と葵は立ち止り、息も絶え絶えに落ち着いた。



それから俺たちはゆっくりと歩き、無言のまま、ホテルへの道から湾内の公園へと進んだ。




ここは湾内に整備された緑地公園で、目の前には咲浜港が広がっている。



遊園地や商業施設は逆側にあるため、ここからでは見ることは出来ない。



俺たちはそのままフェンスまで行き、初秋の穏やかな海を眺めた。




「それで……どうするんだ? なんか単独行動しちゃってるから焦ってるんだけど……」



俺は隣にいる葵に目を向け、そう尋ねる。




「……そう……なんだけど……ね」



葵は前方の海を凝視したまま、微動だにしない。



そして、葵はそのまま下を向き、何かを言いたそうに俯いてる。



……何かあったのか……?



相談……とかなのだろうか?



と、俺は少し心配になり、葵に声をかけようとした所で、




「わ、私さ! ……ずっと会いたかったんだ……」



勢いよく顔を上げて叫んだかと思うと、尻すぼみに俯く。




「……どうしてか、分かる?」



顔を上げ、俺を向く。



口元は引き締まり、目は微妙に俺を避けている。



その表情からは、何らかの決意が読み取れる。



だけど、会いたかったとか、その理由とか聞かれても、それ以前に突然遊園地からこっちに引っ張り回されて、この状況がさっぱり分からない。




「……あ……あはは! ご、ごめん、急に!

何が何だか、分からないよね……」



そう言って、葵は破顔した。




俺の表情が意味不明に惚けていたからだろうと、何となく悟った。




「風が……気持ち良いね」




葵はフェンスの向こうの海を見つめながら、話を逸らした。




「大和とこうやって二人で話すのって、凄い久しぶりじゃない?」



「そうだな……偶然にも出会えて……良かったよ」



「ったく、全然連絡も寄こさないくせに」



「いや、まぁ、その……悪い」




まぁ、戦闘で会ってるし、忙しいし、それほど必要性が感じられなかった、というのがあった。


けど、まぁ、それだけじゃないけど。




すると、葵は俺の方へ一歩だけ近寄り、満面の笑みを浮かべ――




「大和! ……久し振り! 私、再会できて……すごく嬉しいよ」



「……あ」




それは突然で、今更な言葉。でも、互いに言ってない言葉。



昔の面影が残る、目を細めた笑顔。



その表情から出る言葉は、葵の本心だ。改めて俺との再開を喜んでる、嘘偽りのない言葉……




そしてそれは、俺の気持ちや、過去の後悔と現在の状況、その全てを理解させる言葉だった。




「……俺も、葵に会えて……嬉しいよ!

またみんなで遊んだり、騒いだり、いろいろ遊ぼうぜ!」




俺はこの時、ようやく葵と再開することが出来た。




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