第27話:ダブルデート? ~ 待ち合わせ?
はぁ……しかし、この前のデートだったのに、今回もか……
とは言っても、前回は本当のデートだった訳で。
今回は、白瀬さんの創作活動取材だから、前回のような緊張感は無い。
それに大和としての外観なので、周りも騒ぐことは無い。
ということで、俺は駅前で待ち合わせをしている。
「そう言えば、図書委員の取材ってことにしたけど、内容は全部白瀬さん任せなんだよな……」
図書委員の調査取材という名目にしたダブルデートだが、その取材の内容については、全部白瀬さんが適当に考えておく、ということになっていた。
なので、詩織や葵がその内容を突っ込んできても、白瀬さんにお願いされただけ、と逃げておいた。
「……さて、そろそろかな」
と、駅前を見回すと――
「た、助けてくれぇぇ!! お! や、大和ぉぉ!!」
「はぁ!? え? 何?
え? た、忠之ぃ!?」
突然、駅前に現れたのは、誰かに追いかけられてるのか、猛ダッシュしてくる忠之だった。
ウザダーの姿ではなく、カジュアルな私服を纏った忠之は、俺の手を握って助けを求める。
「や、大和ぉぉぉ! 助けてくれ、何か知らないんだが、白瀬殿が――ぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
――と、会話の途中で突然に忠之の体が横からの衝撃で宙に舞う。
「――ぁぁぁぁぁぁあべっっっ!!」
絶叫と共に電柱に激突し、地面にダイブした。
「……何が起こった……?」
「待たせたな。いや、すまない。こいつが聞き分けなくて時間がかかった」
俺の呟きの問いに答えたのは、ピクピクしている忠之の後ろから現れた白瀬さんだった。
その隣には、何故か無表情の詩織も一緒にいる。
「兄貴……
ダブルデートの片割れ……そいつ」
「なん……だ……と!?」
詩織の無機質な答えに、俺は全てを理解した。
「仕方ないじゃないか……
私が知ってる男は……こいつしかいないし。
それに、ロールプレイだから、別に誰でも構わない」
「それで……忠之は了承……したのか?」
「いや、逃げ出した。
それに面倒だから、デートとか取材とか言ってない。
私の言う事に今日は従え、ということにしてある」
……不吉な予感で逃げ出したが、追い付かれてボコボコにされたという訳か……
すると、後ろに佇んでいた詩織が前に来て、
「それで、デートで取材って、一体何をすれば良いの?
大体、黒滝先輩が一緒って良く分からないし……」
詩織はそう言って、白瀬さんに尋ねた。
「今度、図書委員で新しい図書を推薦することになってね。
私はそこで恋愛物語を、と思っててね」
「はぁ……」
「ただ、私は恋愛などしたことがないから、せめてデートというのを体験してみて、
そこで感じたトキメキとかキュンキュンとかを、私の創作――じゃなくて、推薦図書として、発表したいんだよ」
「なるほど、じゃあ、デートのシミュレーションってことね」
「そういうこと、あ、デートじゃなくてダブルデートね。
なかなかこのシチュエーションって味わえないし」
「あ、う、うん……? とりあえず、分かったよ……
でも、兄貴とデート出来るってこれも素晴らしいぃぃ――」
「あ、その都度都度で、ペアは変えるわよ。
いろいろなシチュエーションで試したいし。だからコレもね」
と言って、白瀬さんは地面でピクピクしてる忠之を指差した。
「はぁぁぁぁぁ!?
どうしてよ! ずっと私が兄貴と一緒に決まってるでしょ!」
半ギレで詩織が白瀬さんに掴みかかる。
「大丈夫よ。私がいろいろシミュレートというか、シチュエーションを考えてきたから。
嫉妬属性とか、三角関係とか、ヤンデレ、ネトラレもいろいろ考えてる。
いろいろ面白いロールプレイ……あるわよ?
だから、任せて」
「……」
それを聞いた詩織は、少し固まった後――
「(ニヤリ)」
邪悪な笑みを浮かべた。
やっぱり、詩織がブラコンってこと分かってるよね……
っていうか、ヤンデレとかネトラレって……勘弁して……




