第26話:金曜日
今日は金曜日。
いよいよ、明日が白瀬さんとの調査取材? ロールプレイ? の日だ。
面倒だが、葵に連絡をしないといけない。
だが、その前に……
「ってことなんだよ、詩織。
白瀬さんからも説明聞いただろ?」
「うん……」
ジト目で俺を見る、詩織。
ここは例のファミレスで、詩織と夕食中。
白瀬さんが説明したと言ってたので、念のため詩織をフォローしておくことにした。
「でも、図書委員……ね。急だから変な話に聞こえるけど」
「いや、だからそれは、久美ちゃんにも言われててね?」
まぁ、田中先生には以前に軽く言われたことがあっただけで、執拗に言われたわけではないのだが。
「……分かった。でも、私も委員会に入るからね。
兄貴の近くにいないと……不安だし……」
「お、おう……そうか……」
顔を赤くして、可愛いことを言う詩織。
「……それにしても、またデートね……
取材とは言っても……なんか府に落ちない……
この前、ミドリともデートしてイチャイチャしてたし……」
不穏な空気を身に纏う詩織。
「むう!
最近、兄貴、ほんとモテる気がする!
本当だったら、私が兄貴の心を掴むはずだったのに!」
そう言って、向かいの席にいる詩織は、テーブルを介して俺の方に詰め寄る。
「でも、いいわ。
敵が多いほど……兄貴への愛の深さが伝わるってもんよね? ね? ね? そうよね?」
「お、そ、そうだな……!」
ヤンデレ属性にならないよう、俺は必死に頷く。
「でも、今回は私も付いていくし、取材が基本だし……
この前のようなバトルにはならないでしょう……
まぁ、仮にそうなったとして、ミドリが来たら……ふふふ……」
変身しないから、ミドリは来ること無いだろう……もし緑川さんが来ても、詩織は正体知らないし。
でも……もし、大災害級まで発展しそうになったら、さっさと勾玉を奪って、この生活を終わらそう、うん。
ちなみに、勾玉については、現段階では保留だ。
まぁ、ラスボス級の詩織に隙が無いというのもあるけど、この生活が意外に楽しくなってきたことが大きい。
「それで、図書委員って実際、何をするの?」
我に返った詩織が、そう尋ねた。
「いや、知らん……
でも、バイトは土日以外毎日だから、とりあえず軽めに参加という事になったぞ」
「そっか、でもまぁ、兄貴と一緒だから、何でも良いよ!
ふふふ! これで兄貴とのイベントも益々増えて、フラグが立ちまくり――」
機嫌が良くなった詩織は、妄想を膨らませてトリップし始めた。
っと、このままじゃ淫らな妄想で戻って来れなくなるな。
「そうそう、あと見習い期間ももうすぐ終わるかもって言ってたな。
そうなれば、ローテーションを組むとか何とか」
「そっか! そう言えば、私たち見習いだったね……忘れてたよ。
じゃあ、アジトに私たちの席も作ってくれるのかな?」
「あぁ、そう言えば席なんてあったけど……別に無くても良いんじゃね?」
「えぇぇぇ!? あったほうが楽しいじゃん!
私たちの机、きっと隣同士なんだよ!? 教室的なイベントもプレイも出来るよ!?」
「お、おう……そうか」
また変な方向に話が進んできたので、話を元に戻そう。
「さて、んじゃ明日の事は葵にも連絡しておくよ」
「え? 葵ちゃんにも連絡?」
「あぁ……その、デートっていうか、取材の日が分かったら教えろって言われてさ」
「ふーん……
そっか……そう言えば、ミドリだけじゃなかったもんね……」
そう言って、詩織は不敵な笑みを漏らした。




