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俺と妹が悪の組織に入りました  作者: モコみく
2章:悪の組織、活動中です
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第23話:次の約束

「その……私とデート……して欲しい」



「いや、それは、その、ごめん」



俺は、申し訳ないと思いつつも、丁重にお断りした。




「――んな!? ど、どうしてだ!

恥を捨て、こうやってお願いしてるのに!」



「い、いや、それは分かってるんだけど……」




前回のミドリの件が、まだ俺の中に燻ってるのもあって、他の女の子と……とは今のタイミングでは無い。



それに、妹もなぁ……



まだ落ち込んでいる最中だし、このタイミングで白瀬さんとデートは厳しい。




「いや、その、詩織にも悪いし――」



「じゃあ、詩織さんも来れば良い!」



「は?」



「そうだったな。詩織さんを一人放って置くのも、兄妹として悪いということか。

結構、優しいんだ……」



いやいやいやいや。



ブラコンの詩織が、これ以上病まないようにしたいだけなんだが……



これまでの流れから、あいつがブラコンだってことは知ってると思ってたけど……




「よし! ここは少女漫画の王道、ダブルデートとしよう!

そうだ! それにしよう!

……そして、これはさっき言ったように、創作の……取材も兼ねてるから……

ふふふ……いろいろシチュエーションが捗るな……」



「い、いや、その――」



「詩織さんには……私から話しておく。

その、悪いけど詩織さんにも、その……私の趣味とか、秘密でお願い……な?

それに、取材とか分ってしまうと、素のデートが出来なくなるし……」



「え? あ、はい?」



「よし! 企画は私に任せておけ!

なに、心配するな。詩織さんが絶対に惚れないような適当な男にしておくから。

兄として、妹に嫉妬しちゃう展開も美味しいが、今回のテーマはそこじゃないし!」



「お待たせしました。クリームチーズケーキになります」



「え? あ、はい……俺です」



微妙なタイミングで来た店員さんは、ケーキを俺の目の間に置いた後、そそくさと去って行った。



「むぅ……私のチョコレートケーキはまだかな……?」



「も、もう少し……じゃないかな?」



あ、あれ? はっきりと断らないといけないのに、どうしてこんな展開に……



詩織だけじゃなくて、ミドリのこともちゃんと考えたいし、きっぱり断らないと。




「あのさ、悪いけど――」



「あ、ちょっとドリンクお代わりしてくる。

次は私が一緒に持ってくるよ。何が良い?」



「え? あ、あぁ、うん。あ、じゃあ、コーヒーで……」



「分かった」




そう言って、白瀬さんはドリンクバーコーナーへと立ち去った。



うぅ……どうも、話が遮られてしまう。



戻ってきたら、その時――




「うわぁぁぁ!!」



――な、何だ!? 今のは白瀬さんか!?




「お、おい 大丈夫か?」



「あ、あぁ……大丈――あ、すみません……ありがとうございます……」



俺がドリンクバーのコーナーへ行くと、そこには床にジュースを零してしまい、

駆け付けた店員に詫びている白瀬さんがいた。



「コーヒーをセットしようとしたら、片手に持っていたジュースを零してしまって……

かなり焦って、変な声を上げてしまったよ……」



「そっか……火傷とかじゃなくて良かった。

じゃあ……コーヒーは俺が注いでいくから」



「そうか……その、悪かったな」



そう言って、白瀬さんは店員が床を拭いている姿を目で追っていた。



そして、俺もそれを見て、そのまま視線を先へやると――



……あ、目が合った。



変な表情をした葵がこちらを眺めていた。




……




……




「それじゃ、デートの件は頼んだよ」



そう言って、白瀬さんは去って行ったのだが……




「どういうこと?」



俺の隣で、訝しげな表情をした葵が俺を睨んでいた。



ここはファミレスを出て、商店街の路上。




あの後、葵に見つかり、どういう経緯か三人で席に付くことになった。



デートを断ろうと思ってた話も出来ず、白瀬さんも用事は終わったとばかりに、他愛のない話だけをして、こうやって去って行ってしまった。




「そう言えば……あの子、以前……大和のパートナーとか何とか言ってたわね……」



「そ、そうだっけ……? まぁ学校のな? 行事的な? 委員会的な?」



「……そして今、デートとか言ってたよね?」



「そ、そうか? まぁ、デートじゃないぞ……? あれはあっちが勝手に言ってるだけで」



「……」



葵は俺の言葉を聞くと、目尻を上げた後、そのまま俺を睨みつける。




「……でも、一緒に出掛けるんでしょ?」



「あぁ、まぁ、でも、そういうのとは違うぞ?」



「……いつ?」



「未だ決まってない」



「じゃあ、決まったら教えて」



「は? え? どうして?」



「私に知られると、何かまずい事でもあるの?

それに連絡先も教えたはずだし、大丈夫よね?」



「は、はぁ、まぁ、そうだ……な?」



どうして、俺はこんなに追及されてるんだろう……



葵とはそういう関係じゃないし、デートとかも葵には関係ないし……



それなのに、俺、焦ってるし……




「……じゃあ、大和。よろしくね」



葵は歪な笑みを浮かべてそう言った。

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