第21話:デートは突然に ~ 終焉
「……何か、いろいろごめんなさい……
元はと言えば、アクアとファイアが……
私も……何かしら言ってから来れば良かったかも……」
「い、いや、こっちこそ……
その、シオティンが迷惑を……」
先ほどの公園からかなり離れた場所……だと思う。
俺はミドリに手を握られたまま、商店街の路地を駆け巡った。
そして、シオティンの声が聞こえなくなって、それでも走り続け、自販機の裏のちょっとしたスペース。
俺たち二人はそこで休んでいた。
「あっ……!?」
ミドリは、俺たちが手を握ってることに気付いて、慌ててその手を放そうと――して、そのまま握りを強くした。
「……あ、そ、その……
このままで……お願いします……」
「あ、う、うん……」
うぅ、俺も恥ずかしい……
「その……ちょっと聞きたいんですが……」
すると、ミドリは俺の方を覗き込んで、言い難そうに聞いてきた。
「あ、うん、どうした?」
「さっき、オタ・クールに、何を……しようしたんですか?」
「あ、あぁ……あれか……」
まさか、さっきのオタ・クールの行動についてだったとは……
ということで、俺は壁ドンを頼まれたことを簡単にミドリに説明した。
「そうだったんですね……
ヤマティンさんって、いろんな人に好かれるんですね……」
「い、いや、それは違うと思うぞ?
みんな、面白がってるっていうか、何も考えてないっていうか。
オタ・クールのだって、単に二次創作の材料にしたかっただけだし」
「……そうなんですか……?
その何とか創作って良く分らないですが……
あ! 気にしないでくださいね! ちょっと気になっただけですから!」
「あ、うん! 分かったよ。
あ、それでさ……これからどうしようか?
個人的には、もっとミドリとデートしたいけど……」
「え……?」
俺の言葉に、ミドリは真っ赤になって驚いてる。
「私も……です」
ミドリは俺の手を更に強く握る。
「……」
「……」
沈黙。
だが、確実に路地の先から、黒い気配が近付いてくる。
このままでは、妹に……
そう思った時――
「好きです」
え?
「ヤマティンさん、好きです――」
え? あ? はぁぁ!? す、す、好きぃぃぃぃぃぃ!?
「……返事とか、そういうのは……
気にしないでください……」
え? あ、お、おう?
「私が……伝えたかっただけですから……」
……
「……今日は、もう帰りますね」
「あ……え……」
俺は混乱して、何を言えば良いか……
「また、二人で会って欲しいです」
そう言ったミドリは、突然俺の胸に抱きつき、背中に手を伸ばす。
抱きしめられる形になった俺。
そして何故か、「俺は冤罪だよ!?」と手を上げ周りにアピールする。
周りには誰もいないけど……いや、だってこうなるじゃんかよぉぉ!?
そう言ってミドリは、俺の頬に向って――
「ちゅっ」
――っっっっっっ!?
「そ、それじゃ!」
ミドリは顔を見せないように、後ろを振り返ると、物凄い勢いでダッシュ。
そして、路地の裏へ行き見えなくなってしまった。
「……」
え? え? え? ど、どうしよう……?
人生で初めて……告白……された……
それも……敵対する女の子から……し、しかも……ほっぺに……暖かいものが……!?
あれ、って! もしかして!!
い、いや! 慌てるな……!
返事はいらないって言ってたじゃないか!
だから、このまま何も考えず……
いや、いや、でも、本当に返事は必要ないのか!?
それに、それじゃ男として……
「お、お兄ちゃん……」
と、考えてると後から妹の鳴き声が聞こえてきた。
「お、お兄ちゃぁぁぁぁぁん! や、やだよぉぉぉぉぉぉ!
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんんんんん!!」
あ、これガチで泣いてるわ……
ここで逃げるには……無理だわな……
俺は、妹が泣き止むまで、頭を撫でてやることにした。




