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俺と妹が悪の組織に入りました  作者: モコみく
2章:悪の組織、活動中です
20/63

第20話:デートは突然に ~ 意外な一面

「うるあぁぁぁぁぁぁ!!」

「ゴルァァァァァァァ!!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇ!!」



ファイア、アクア、そしてミドリ、シオティンの声が小さな公園を蹂躙する。



既に子供用の遊具は破壊尽くされ、大型怪獣が暴れたかのように無残な姿に。



遠巻きに見ていた市民も、既に逃げて誰もいない。




というか、お前ら、本気出しすぎ……



今までのブラック・マグマとマジカル・キュアの戦いは何だったんだろうかというレベルだ。




「なぁ、どうしたら……良いんだろうな?」


「さぁ……」



立ち尽くしたオタ・クールと俺。



二人で戦いの様子を眺めていた。




「それで、一体、何が起きたんだ?」


「あ、あぁ……それが――」




俺はオタ・クールに事の顛末を話した。


とは言っても、デートと明言は避けたが……




「なるほど。

ヤマティンとミドリで一緒に出掛けたのが、気に食わない連中と、応援したい連中に分かれたって事か」



「どうやら、そうみたいだ」



「……な、なぁ、それって……」



「?」




オタ・クールが恥ずかしそうに俯いている。


あれ? どうしたんだ……?


こんなオタ・クール、見たことないんだけど……




「それって、もしかして、デート……というやつ……なのかな?」



「――ふぁ!?」



っと、変な声を出してしまった……



いや、オタ・クールからこんなことを聞かれるなんて、思いもしなかったから。




「い、いや、その……

私は、そういうのしたことなくて……

ちょっと気になって……アニメとか漫画では良く見るんだけど……

やはり、その壁ドンとか顎クイとかやるもんなのか……?」



「は? え? ふえ?」



な、何? この可愛いオタ・クール……



アニメ? 漫画?



そう言えば、オタ・クールって、よく本を読んでいるイメージだな。


学校でも図書委員だし。




あぁ、もしかして、少しオタク系入ってたりするのかな……名前が名前だし……



でも、クールだし、そんな空気じゃ無いんだけど……



あ、だからオタ・クールか……分かり辛れぇ…




「い、いや、壁ドンや顎クイは……さ、さすがに……」



困惑しつつも、俺はそう答える。




「……なぁ、お願いがあるんだけど……良いか?」



「え? あ、お、俺で出来ること……なら……?」



こ、この流れでお願いって……



「か、壁ドンをやってくれないか?」



「――は?」



「わ、私は……その、アニメとか漫画とか、そういうのが好きで……

二次創作をやっていて、いろいろ参考にしたいんだよ……

そういうの見るとキュンキュンすると言うか……でも、私にはそういう経験が無いし、

実際にやられると、もっとキュンキュンするか確かめたいのもあり……

あ、男同士のは範囲外だからな?」



「お、おう……」



話が……展開が……早すぎて、頭の中が追いつかない……



「じゃあ、それで頼むな?」



「え? あ、え? あ、い、いつ……?」




混乱中です。



だから、ついつい受ける方向で答えたが、これは明らかに駄目な答えだ。



「今だ」



そう言ってオタ・クールは、路地の壁側まで移動し、俺に期待する表情を向けた。



「来て……?」



――!?



そう恥ずかしそうに言ったオタ・クールは、赤みがかかった顔を俺に向け、瞳をウルウルさせている。



俺は、その攻撃に抗う術は持っておらず、フラフラとオタ・クールに近付いて――




「おるぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「させませんんんんん!!」


「――うへぇぇぇぇ!?」

「――ちょぉぉぉっとぉぉ!?」



すると、突然の叫び声が反響する。



それは、シオティンとミドリの気合の声。そして、アクアとファイアの驚愕の叫び声であって……



――唐突に目の前が爆発霧散した。



「うはぁぁぁぁぁあぁ!?」



その爆発の衝撃波と土砂で、俺は後方へすっ飛ばされた。




い、一体、何が起こったんだ……



背中を打ちつけられ、痛い体を無理やり立ちあがらせた。



そして、土埃に目が晴れてくると、そこには巨大なクレーターが出来ていた。



クレーターのど真ん中には、アクアとファイアがボロボロの姿で頭から地面に埋もれ、そして後方にはすっ飛ばされたオタ・クールが横たわっている。




……何だこれは?



アクアとファイアが投げ飛ばされ、それが地面に激突して爆発したのか?



後方を見ると、ミドリとシオティンがこちらを凝視している。




……



「兄貴……今、何しようとしたの!?」

「ヤマティンさん、不潔ですよ!?」




「い、いや、その……」



二人が醸し出すオーラの恐怖に、俺はここから逃げ出したい気分になる。




「――今よ!」



ミドリはそう叫ぶと、俺の懐に潜り込み、手を握り、路地へと駆け出した。




「――え? ちょ、ちょっと!?」

「んな!? ま、待ちなさいぃぃぃぃ!」



自分の困惑する声と、シオティンの激高する声を聞きながら、俺は暖かいミドリの手に握られ、二人で路地裏へ逃げて行った。


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