第19話:デートは突然に ~ 乱戦
「”愛を見守るチーム”頑張れぇ!!」「オタ・クール頑張ってぇ!」「アクア!! アクア!!」
人々が”愛を見守るチーム”を応援する。
それに対して
「”リア・デス”滅びろぉぉ!」「お前らは敵だ!」
「ファイアの裏切り者ぉぉ!」「……俺は応援するけどな……」
ほとんどが、”リア・デス”に対する罵倒の声……
それを聞いた”リア・デス”の二人は、
「ぐぬぬぬぬぬ!」
「ふっ……私は兄貴の愛だけが正義。そしてそれを得るための戦いが始まる」
対照的な表情が印象的だった。
「しかし……ファイアって、やっぱり印象が違うな
こっちのファイアの方が……自然体と言うか、何というか」
とは言え、過去のファイアと比べたのではなく、赤城さんと比べた感じだが。
「あ……なるほど……
ファイアは……いろいろその辺で悩んでますから……」
俺の独り言に、ミドリが答えた。
「でも、そんな悩みも……
今の私にはどうでも良い事なんですよね」
……あれ? 怒ってる……
「し、しかし、この展開は一体、何だろうな……
ファイアとシオティンは、俺たちがデートしてるの嫌がってて、
そしてアクアがそれに反対して、それで戦いになってる構図――」
「いえ、きっと面白がってるだけですよ、アクアは」
……
そうか……
あの中身って、葵か……
見た目だけが清楚なんだもんな……
「あれ? でも、アクアって、本性を隠して……」
「あ、ヤマティンさんは気付いてたんですね?
私たちは、最近までアクアのこと、誤解してたんです」
そう言ったミドリは笑顔になる。
「見た目が清楚で物静かだから、てっきりお嬢様系だと思ってたら、
あんな残念で腹黒い系なんて、思わなかったですよ……
幼馴染の人に久し振りに会ったみたいで、それから、段々と変わったんです。
でも、今のアクアの方が、すっきりしますけど」
「そ、そうか……」
「でも、ここまで邪魔されるなんて……
こんな感じになると思ったから、誰にも言わなかったんですけどね」
そう言って、ミドリは対峙する両者を見つめる。
俺もその視線の先を見てみると――
「――アクア! いい加減にしなさいよね!
あなたこそ本性隠しまくってた腹黒女のくせに!
どうせヘタレで言いだせないから、あなたも蜘蛛の巣よ!」
「ヘタレ言うな!
腹黒じゃない! 私はクールで可憐なのよ! この炎上女!!
そっちこそ恋愛知らないくせに、余計なことするんじゃないわよ!
そんなことより、さっさと自分のキャラ止めちゃいなさいよ!」
「それはこっちのセリフよ!
あんたのどこが可憐よ! 腹黒の残念バツイチじゃないのよ!」
「はぁ!? どうしてバツイチなのよ!? アホなの!? バカなの!?
そっちこそ、明るい爽やか系女子を狙ってって、ぷぷぷぷぷ!!
部屋が汚くて料理も何も出来ない、汚部屋のおっさんじゃないのよ!」
「はぁぁぁぁ!? お、おっさんんんん!?
ふん! あんたは昔失敗して、逃げられたからバツイチに決まってるじゃない!
もうすぐバツニになるくせに!」
「な、何ですってぇぇぇ!?!」
酷い戦いがそこにはあった。
――すると
「兄貴……
良い写真撮れたんだぁ。
だから、同じこと、私にしてくれるよね……?
こんな表情……私にもしてくれるよね?」
顔を歪め、醜悪な笑みを浮かべたシオティンが横から近付いて来る。
「さて……大丈夫か? ヤマティン。
一体、何が起こってるのか分からないが、ファイアが策を弄したようだが」
そして、後からオタ・クールが駆けつけてくれた。
「どうやら、仲間割れを起こしてるようだし、”愛を見守るチーム”はここまでだな……
ここで一気に、マジカル・キュアを――」
「どうやらあなたが、いちばん邪魔をしてるみたいですね」
「あれ? ミドリと言ったかしら? 兄貴は貴方なんか相手にしないわよ?」
オタ・クールの話は途中で遮られ、ミドリとシオティンが顔を近づけ、互いに睨み合う。
……あいつら、本当は仲良しクラスメイトなんだけどな。
どうして、こうなった……
――そして、ミドリとシオティンは激突した




