第18話:デートは突然に ~ リア・デス VS 愛を見守るチーム
オタ・クールと待ち合わせするため、俺とミドリはそのまま商店街の中央広場へとやって来た。
「ヤマティン、来たか――って、んなっっ!?」
広場には既にオタ・クールがいて、こちらを見るなり、驚愕の表情になる。
「マ、マジカル・キュア!?
――くっ! ヤマティン、まさか人質に取られた――」
「あ、違う違う!
これは、その……ちょっと訳ありで……
ちょっと二人で……その……相談してただけだ」
「訳あり……? 相談?」
「そうなんです! 私の事は気にしないで下さい!
ヤマティンさんと二人で会ってただけですから!」
「お、そ、そう……か?」
ミドリの迫力ある言葉に、オタ・クールが一歩下がる……
ちょっと……機嫌が悪い……?
襲撃に対する他のメンバーへの怒りか……まさか、デートを邪魔されたからとか……じゃないよね?
「そ、それで……オタ・クール、一体、何があったんだ?」
「あ、あぁ……
どうやら、ファイアとアクアがシオティンに攻撃をしているらしい……
ウザダーが発見して連絡をくれたんだが……
やつは……どこへ行ったんだ?」
「シ、シオティンが囲まれてる……?
あいつ……何やってんだ……」
「ともあれ、ウザダーはすぐやられるだろうから、
シオティンの救援に向かうぞ!」
「わ、分かった!
あ……ミ、ミドリは……その、どうす……る?」
「私も行きます!
行かなければ行けません!」
「……そうなると……
我々の敵になるということだな……?
ならば、ここで戦力を排除しておく必要がある」
オタ・クールはそう言って、ミドリに対して向き合った。
「――いえ、違います」
「……え? 違……う?」
「私の邪魔をする二人にはお仕置きが必要ですから」
「え?」
オタ・クールは困惑の声を上げた。
……
……
俺たちは、三人が戦っているという、商店街の一角を目指す。
「うわぁ! ブラック・マグマだ!」
「この先の戦いに参戦する気だぞ!?」
「巻き込まれるぞ! 逃げろ!」
走ってる傍から、周りの人々は逃げていく。
どうやら、目的の場所が近い様だ。
途中でウザダーの屍があったが、全員がそれを踏みつけスルーし、目的の場所へと近づいた。
「シオティン! 大丈夫か!?」
そこは商店街にある小さな公園。
子供用の遊具もあり、ちょっとした息抜きにも利用される。
この前のヤンデレ騒ぎを起こした大きな公園とは中央広場を挟んで、対角線上真逆に位置する。
「あ、兄貴!?
そ、それと、オタ・クールまで!!」
「ほら!
よそ見はいけないわよ! ナミノリ!!」
「――くっ!?」
シオティンと対峙していたアクアは、俺の背丈くらいの高さで波を発生させ、それを一気にシオティンにぶつけて来た。
波乗り……? 初めて見る技だけど、あんなのもあったのか……
「レッツ・ファイアァ!!」
と、そこへファイアが一閃。
アクアの波に対し、炎の渦を発生させ、一気に蒸発させる。
「ふん!
そんなヤワな水攻撃、私には通じないわよ、アクア!」
「くっ……この”リア・デス”が……」
ん? あ、あれ……?
ファイアとアクアが戦ってる? 何この構図……?
俺はこの戦いの異変に気付き、オタ・クールへ顔を向けた。
「い、いや、私も……これは……!?」
俺の表情を察知したのか、オタ・クールも頭を振る。
だが、その時―ー
「どうして、邪魔をするんですか!? あなたたちは!」
突然ミドリは叫び、突き出した両手から、自らが埋もれるだろうくらいの大量の葉を出現させた。
「グロス・ミックス・サー!!」
ミドリはその葉を鋭角状にし、アクアとファイアに向けて、一気に解き放つ。
「ちょ、ちょっとミドリ!?」
「ち、違うの! これはあなたのためを思って――」
二人に向かっていく葉は凄まじく、あの量と加速ではとても避けきれることなど出来ず――
「――くぁw背drftghyじゅいこlp;@!!」
「――あqすぇdfrtgyふじこlp;!!」
二人は声にならない叫び声を上げ、公園の滑り台に叩きつけられた。
「な、何が……起こったの……?」
オタ・クールはその光景を目の当たりにし、呆然と立ちすくんでいる。
「くっ……ミドリ! ……大人しく兄貴のギリギリのポジションを保ってれば良いものを……
私が良いように使ってあげたのに……」
シオティンは邪悪に歪んだ表情をしていた。
って、あいつ、マジで何をやってるんだ……!?
「あ、あのね、ミドリ……
私は、ずっとあなたを応援してたのよ?」
何事も無かったようにアクアが立ち上がり、ミドリへとそう言い放った。
ってか、無傷かよ……どんだけ頑丈で空気読めないんだ……
「それを、この火だるま女が、あなたとヤマティンはダメだって!」
「火、火だるま女ですって!
――ち、違うの! 私は、あなたに純愛を貫いて欲しいだけで!」
ファイアも何事も無かったかのように立ち上がり、ミドリを説得し始める。
「絶対、こうなると思って……邪魔されないように黙って来たのに……」
ミドリはそう言って、表情を落とす。
「あ、あのね、その男が変な事をしないよう、私はミドリのためを思って――」
「違うわ。”リア・デス”はリア充に死を与える組織なの。
ミドリと兄貴がイチャラブしてるのを止めさせ、撲滅させ、私とファイアはその歓喜に打ち震えるのよ」
「――へ? あ!? ちょ、ちょっと! シオティン!!」
ファイアが止めるも、シオティンは続ける。
「私たち”リア・デス”は、あなたたちのデートを許さない!
写真を撮って、フォトショ使い回して、兄貴を脅そうとしたけど……
こうなったら、ミドリのエロ写真を撮りまくって、あなたも奴隷にして、兄貴を完璧の傀儡にするわ!」
エ、エロ写真って……!?
お、恐ろしい……あいつ、そんな事考えてたのか……
我が妹ながら、病的すぎるし、ちょっと引くわ……
すると、アクアはミドリの目の間に行き、その手を握り締める。
「ほら! だから言ったでしょ?
私はミドリの愛を守るために戦ったのよ!
面白そうだとか、ネタになるとか思ってない!
――だから、ミドリ! 私はあなたの味方よ!」
「え、ちょ、ちょっと……アクア……」
ミドリはどうすれば良いのか分からず、あたふたしている。
――と、その時
「や、やばいぞ……”リア・デス”だってよ!?」
「……な、なんだそりゃ!」
野次馬の数人が騒ぎはじめ、こちらの状況を把握したのが、恐怖に顔を引きつらせている。
「みんな、逃げろぉぉ!!」「新しい悪魔が降臨したぞぉ!!」
「ファイアとシオティンが悪魔の同盟を組みやがった!!」
一目散に逃げ始めた。
「ちょ、ちょっと!! 待ってよぉぉぉ!!」
ファイアは叫び、彼らの後を追おうとするものの、目の前にオタ・クールが立ち塞がる。
「話は聞かせてもらったぞ。
なるほどな。全てはお前――ファイアの企みということか」
「あんた、本当に聞いてたの!? あんたの所のシオティンの企みでしょ!?」
「問答無用! 悪の組織は一つで十分だ! 給料が減るからな!
アクアとやら! 一緒に”リア・デス”を潰すぞ!」
「そうね、分ったわ!
ほら、ファイア! あなたの企みはもう終わりよ!
私たち”愛を見守るチーム”が、コテンパンにしてあげるからね!」
また一つ、新しい組織が出来上がったようだ。
こうして、シオティンとファイアの”リア・デス”。
対する、 オタ・クールとアクアの”愛を見守るチーム”が激突する。
のだけど、俺とミドリはどうすれば……




