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俺と妹が悪の組織に入りました  作者: モコみく
2章:悪の組織、活動中です
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第14話:デートは突然に ~ 怪しい影

俺たちは商店街を南の方へと進んでいる。



一応プランを練ってはみたものの、正直、桃源町にはデートスポットなるものは存在しない。



それこそ、葵が通っている共修学園のある、咲浜市さきはましまで行かない限り、映画やゲーセンと言ったものはこの辺には無い。



だけど、この街を離れることは難しいと考えていた。



それに、桃源町商店街は味があり、隠れスポット的なカフェや、セレクトショップ、味のあるアンティークなレコード店なども点在している。



個人的な印象だけど、ミドリは派手な場所で遊び倒すより、のんびりとお茶しながら散策するのも悪くないかなと思っていた。



なのでそれをベースに、プランを立ててみた。




そこで俺たちは、商店街の南にある、ちょっと小洒落た雑貨屋へ行くことにした。



とはいえ、顔は合わせているとはいえ、敵同士。



俺はミドリの正体は知ってるものの、それはトップシークレット。




なので、共通の話題も無く、俺たちは気まずい雰囲気で、互いに黙々と歩くだけになる……と思ったのだが




「ヒ、ヒィ! ブ、ブラック・マグマだ!!」「た、助けてくれぇ!!」「逃げろぉぉぉ!」



「あ、あそこ!」「マ、マジカル・キュアだ!」「助かったぞ!」



「あ、あれ……一緒に歩いてる?」「いや、連行してるんじゃないか……?」「きっとそうだ! これから処刑するに違いない!」




そんな気まずさや、情緒もあったもんじゃない。



俺たちが歩いていると、こんな調子で、周りで人々が騒ぎはじめ、逃げ出したり、戸惑ったり、いろいろだ……




「あ、そ、その……何かごめんなさい……

処刑なんてしないのに……

でも、私、マジカル・キュアなのに……良いのかな……

だって、私……」



「い、いや、気にしないで!

俺は……その、ミドリとこうやって歩いてるだけでも楽しいから!」



「あ……

あ、そ、その……

ありがとう……ございます」




「――ファック!!」



「ん!?」



な、何だ? 今の……?



背後から、野太い声で、何かを罵るような声が聞こえてきたんだが……




うん……振り返っても、誰も……いないな……



気にしないで……おこう。




さて、こんな調子が続くので、実はお互いの緊張が解け、普通に会話することに成功している。




「――その店、昔からあるんだけど、その雑貨屋”ファンシー・ファンシー”って言って、面白いグッズがあるんだよ」



「へぇ、そうなんですね!

私はこの街の出――あ……いえ、何でも……無いです……

その雑貨屋は知らなかったです」



この街の出身――


そう言おうとしたんだろうな、と思った。




でも、それはマジカル・キュアの正体に繋がるから、急いで言い改めたのだろう。



確か、緑川さんの家は、俺たちの寮から少し離れた住宅街にある。



なので、以前ファミレスでばったり会った時も、途中まで一緒に帰ることが出来たのだ。




「そっか。見た目が雑貨屋っぽくないからね……

俺も昔この街に――

あ、いや……始めて発見した時、駄菓子屋かと思ったから」



「へぇ、そうなんですね!

それは楽しみです!」



「名前がファンシーなんて洒落てるけど、木造の平屋建てで、店員はおばちゃんだしね……

しかも壁が崩れかけてるから、そうそう中まで入ろうとは思わないかもね」



「ふふふ! 面白そうですね」




「――イチャイチャってレベルじゃねーぞぉ!!」



「――んっ!?」




な、何だ? 今の……?



また背後から、野太い声で、何かを罵るような声が聞こえてきたんだが……



しかも、どこかで聞いたような声。




うん……後ろには誰もいない。




もしかして、妹が?



いや、妹だったとしたら、見つかった時点で殺人技使ってくるだろうし……




気のせい……だよな?




「……どうかしたんですか?」



「あ、いや、何でもないよ

何か後ろから獣の声がしたから」



「……そうですか、私には聞こえませんでした。

野良猫か何かでしょうか……」



なるほど……確かに野良猫かも知れないな……




「あ……」



俺はそこで、ミドリの胸元のリボンが解けてるのに気付いた。




「ちょっと待ってね」



俺はそう言うと、ミドリの目の前に立って、リボンを結び直してあげる。




「解けてたよ。ミドリのリボン。これが良いアクセントで可愛いよね」




と、何気にそんなことをして、俺はミドリの顔が目の前にあることに気付いた。



……思わず、妹へ接するようにしてしまった……



これは……恥ずかしい……




「――あ、そ、その……ご、ごめん……」



「あ……い、いえ……そ、その……す、すみません……

すごく……顔が近くにあったので、び、びっくりしちゃいました……」



ミドリの真っ赤な表情に驚いて、後ろに下がろうとした時、




「――カシャッ!」




「ん?」




何だ? シャッター音?




誰か写真撮ってるのか?




うーん……誰もいないんだけどな……




そう思った瞬間――




「ヤ、ヤマティンさん!? マントが燃えてます!!」



「――んなっっ!?」




ミドリの声に、自分のマントを見てみると、すごい勢いで燃えはじめるマント。




「うぉーーーーーーーっ!」



俺は急いでマントを脱ぎ、燃えてる場所に砂をかけ、かつ、足で踏みまくる。




「はぁはぁはぁはぁはぁ……」




何とか消えたものの、マントはズタズタになっていた。



まぁ、俺が燃えなかっただけ良しとするけど……一体、何なんだ、これは……




「……だ、大丈夫ですか……?」



「あ、あぁ……何とか……」




「エロいこと考えてたから、燃えちゃったんじゃないのぉ?」



「――んな!?」



俺は声の方を振り向くと




「キャーーーー!! ブラック・マグマの変態よぉ!」「うぉぉぉぉ! 逃げろぉぉぉ!」「助けてぇぇ!」




いつものパニックになった人々がいて、我先に逃げ始めた。




くっ……一体、何なんだ!?



今、逃げた人がやったのかな……? いや、でもさっきの声……って……




「あ、あの……怪我とか大丈夫ですか……?」




「う、うん! 大丈夫! さぁ、行こう!」



ミドリの心配そうな表情に、俺は余計な考えは止めることにした。




……



……




―― 一方、その頃…… ――




「ちょ、ちょっ!! シオティン、やり過ぎじゃないの!?」



「良いの。兄貴が悪いんだから。それに、これでファイアもせいせいしたでしょ?」



「そ、それは……そうだけど……」




シオティンと呼ばれた黒ずくめの女は、先ほど持っていた杖を回転させ、その先から火の玉を出した。



そして、その火の玉を小さくし、路地の奥にいた男のマントへ火を放ったのだった。




「それに見て……この写真」



「……?」



ファイアと呼ばれた赤い髪の女が、デジカメを受け取り、その写真を見る。




「――くっ!? こんな接近して……あのナンパ男……!!」



その写真には、先ほど火だるまになりかけた男と、可愛らしい女性の姿が映っていた。



まるで初々しい恋人同士のような二人は、見る人を幸せにさせるはずだが、ファイアは怒りに燃えている。




「でも、こんな写真撮って、どうする気……?」



「……決まってるでしょ?

……この写真と同じような事を私にやって貰おうかな、と思って。

何回も何十回も、その次に来るであろう行為も含めて……ね」



「……」




「これは、肉を切って骨を断つのよ。

私の従属なる兄にするのも良いかなって思い始めてるんだ……


そして、この写真を使って、メスブタを兄貴の前で……むふふ……することで、更に私の言うことも……

この写真は、あくまでその材料に過ぎないんだ……」




「ね、ねぇ、あなた、聖者の光を受けてないわよね?」



「ふふふふふ、そんなの受けなくても、兄貴のためなら私にはいろんな属性があるのよ?」



「……こ、この同盟、間違えたかな……」




ファイアは心配そうに、壊れたシオティンを眺めるのだった……


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