第12話:デートは突然に ~ 俺の時代
一旦完結していましたが、連載を再開しました!
不定期の更新&文字数少なくなりますが、よろしくお願いします!
「どうして……こうなったんだ……?」
俺は一人、いつもの商店街の開けた場所――中央広場で佇んでいた。
もちろん、ブラック・マグマの格好で。
「ヒ、ヒィ! ブ、ブラック・マグマだ!!」「た、助けてくれぇ!!」「逃げろぉぉぉ!」
俺を見るなり、人々は逃げていく。
とは言え、俺は佇んでいるだけ。
「……」
俺は逃げていく人々を眺めながら、それでも一人で佇んでいる。
「俺は……どうしてここにいるんだろう……」
そんなことを呟いても、それに答える人は誰もいない。
でも、俺の気持ちは穏やかではない。ずっと混乱している。
この混乱は……そう……先週の戦いからだ……
俺は、自分を混乱に追い込んだ、先週のマジカル・キュアとの戦いを思い出し始めた。
……
……
「今度の……土曜日……待っています……」
「え?」
それは、俺たちブラック・マグマとマジカル・キュアのいつもの戦いの最中。
シオティンとアクアが白熱のバトルをしており、それを横目に、俺とファイアが戦いの中、一旦距離を開けた時だった。
静かだったミドリが俺の懐に飛び込み、これは避けられないと身構えたとき、そう告げられたのだった。
俺は何のことか分からず、動きを止め、ミドリの顔を凝視してしまう。
「あ、あの……す、すいません……
こんな時に、言う事じゃないのは分ってるんですけど……でも……」
真っ赤になったミドリは、俺から顔を背け、一生懸命絞り出すようにしゃべっている。
「だって……ずっと待ってるのに……
デート……誘ってくれないんですもん……ですから……」
あ、これって……もしかして、例のデートの件……
「今度の土曜日……
商店街の中央広場で10時に……待ってます……」
うぉーーーーー!! うひょーーーーー!!
キタよ! これ!! これ!! これぇぇぇぇ!!
確かに、ミドリのデートの件は、頭にあったよ!?
でもさ、そうそう簡単に誘えないわけで。しかも戦いの最中だし、詩織の勾玉の件もあるし。
それが、まさか!! まさか!! ミドリの方から誘ってくれるなんて!!
え? もしかして、ミドリはマジ惚れなんじゃ……!
「……」
あっと、テンションに溺れて死ぬところだった……
ミドリが俺の返事を待って、ずっと俯いている……早く返事しなきゃ。
「あ、そ、その……わ、分かった……土曜日に、行くよ……」
俺がそう答えると、ミドリは勢いよく顔を上げ、真っ赤になった顔に笑顔を浮かべた。
「あ、ありがとう……ございます……!
楽しみにしていますね……!」
うぉぉぉぉ!! 可愛いぜ! なんだこの生き物! 天使? ねぇ、これ天使なの!?
「……兄貴……?
どうして、そんなにニヤニヤしてるの!?」
その時、アクアと対峙してるシオティンが、俺のことを不審に思ったのか、そんな疑問を口にした。
とは言っても、その距離は離れているので、実際に何があったかまでは分っていないようだ。
答えをどうしようか迷っていると、距離を取っていたファイアがミドリの背後まで来ていた。
「ミドリ! ありがとう! 体勢整えるまで引き付けてくれて!」
「……ううん、私の攻撃も避けられたから、大して役に立てなかったです……」
「ふふ! そっか、兄貴が攻撃を防いで、ご満悦だったんだね!
さっすが、私のドSな兄貴!」
ミドリの咄嗟の言い訳に、シオティンも勘違いして、また変なことを口走る。
「……」
ミドリも目線で俺に合図をして、ファイアの背後へと下がっていった。
……
……ふふふ
ふふふふふふふ!!
あはははははは!!
きたぞ! 俺の時代が遂に来たんだぁぁぁぁ!!
「来たぞぉぉぉぉぉぉぉ!!
うひょぉぉぉぉ!!
来たこれぇぇぇ!!」
「――!?」
「――あ、兄貴!?」
おっと、ヤヴァイ。
ついつい口に出ちゃって、ファイアとシオティンが戸惑ってる。
しかし、デート……
その甘美なる響き……
俺もリア充へ一歩近づいたか……っ!
ふふふ……
どこへ行こうかな。流石に男の俺がエスコートしないとだよな……
勇気を振り絞って、俺を誘ってくれたんだろうから、そのくらいのことは頑張らないと!
それに何を着て行こうか……
オシャレ着なんて持ってない……って、あれ……
大和の格好で行くわけには……行かないよな……
だって、正体知ってるの俺だけだし、もちろんミドリもヤマティンが大和だって知らないし……
……
あれ……嫌な予感がする……




