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俺と妹が悪の組織に入りました  作者: モコみく
1章:悪の組織に入りました
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第11話:ラスボスとの戦い

「出たわね! 悪のブラック・マグマ!

……そして、最も最悪なヤマティン!!」




「ヤマティン!

さぁ、責任をどうするのか、私の問いに答えなさい!

そしてシオティンをどうするのかも教えなさい!」




「あ、そ、その……ブラック・マグマは、とりあえず、撃退……しないとですよね……」




変身した俺たちの前に、マジカル・キュアの三人が現れたかと思うと、そんなことを言いだし始めた。




すっかり、ファイアには嫌われたようだ。

アクアは半分面白がってるし……




ミドリに関しては、その……どうしよう……



「ふ。笑止。

お前らはそんなことばかり。

男女の営みなど、どうでもよかろう」




それに焚き付けるのが、隣にいたオタ・クールだった。



「い、営みですって!?」



「あわわわわわわ」



ファイアとアクアは、オタ・クールの過激な言葉に、慌てふためいていた。




ミドリだけは、意味が分かっていないようで、首を傾げている。



「さいってー! このヤマティン!」



「もう手を出したの!

この変態!

そこの妹はどうするのよ!

妹とイチャイチャしてるやつは敵よ!」




酷い言われようになってしまった。




っていうか、アクアの最後の言葉は、もう何も関係ないだろう……



「違うっつーの!

何もしてない!

オタ・クール、訳分からないことを言うのは止めてくれ!」




――と、その時、俺は背後に恐ろしい殺気を感じた。



「――ま、まさか!?」




俺は振り返ると。




すると、そこには氷の笑みを浮かべたシオティンがいた。



「……ふふ」



静かに微笑んでいる。

だが、その笑みは決して失われず、同じ表情を作り続けている。




こ、怖い……と、いうか、間違いなく殺られる。



「……ふふふふふふふふ」




そして、シオティンの姿は風の様に消えたかと思うと、一瞬でその場を処刑場へと変貌させ――




……



……



「か、勘弁してくれ。

分かった。全部、何でも言うとおりにするよ」




地面に倒れた俺は、シオティンに向かって、そう言うことしかできなかった。




ちなみに、ファイア、アクア、ミドリ、オタ・クールの四人は、虫の息となって、そこ辺でボロ雑巾の様に倒れている。




シオティンにかかると、他全員が、完全に汚れ役になってしまう。




すると――



「うぉーー!

またシオティンだ!

やっぱりカッコイイぞ!」



「キャァー! シオティンさまー!!」



「やばい……マジ惚れそう」




と、黄色い声が飛び、確実にファン層を増やしていた。



さて、今日はもう良いだろう。




シオティンも正気に戻ったし、マジカル・キュアも倒したし。




と思って、立ち上がった時、シオティンの黒いワンピースのポケットから、青くて丸い何かが落ちた。




――青い……石?




すると、あれは、例の勾玉か!?



「あ、っと……」




そう言ったシオティンは、勾玉を落としたことに気付いて、急いで拾う。




……




やるしかない!




あれを、奪う!




そして、シオティンの――俺と結婚するという望みを消さなければ!




いや、シオティンのことはスキダヨ? シスコンだし?




でも、俺たちは兄妹だし、詩織はちょっと寒いし、ちょっと残念だし……




あいつには、あいつの幸せを望む!




だが、どうやって取り戻すか。




まさか攻撃するわけにもいかない。



どうする? どうする?




すると、シオティンの背後で、三人の影が起き上がった。



「マジカル・キュア……?」




俺は思わず呟いた。




三人は傷を負いながらも、何とか立ち上がっていた。




そして、三人は、シオティンに向かって、臨戦態勢を取る。




シオティンはまだ気付かない。



「ふふふふ。これだ!」




俺はそう叫び、地面を蹴る。




そして、シオティンに向かって、走り出す。




――そう!

この泥沼化した戦いの中で、どさくさに紛れて、取ってやる!



「ジャイアント・スィング!!」




アクアが必殺技を叫ぶ。




両手を広げて、じりじり……



「ふん!」




それを見たシオティンは杖をクルクルと回転させると、そこから火の球を出す。




そして、それがアクアに向かって、一斉に飛んでいく。



「な、なんだ!? あの技!!」



俺は驚愕して、その光景を見る。



「――うぎゃっはぁぁぁぁぁぁぁ!」




女の子が叫ぶにはあまりにも酷い声を上げたアクアは、まともに喰らって、後方へ吹き飛んで行った。




……この圧倒的存在感。




やはり、ラスボスだ。




しかし、いつの間にあんな技を覚えたんだろう。

本当に、練習とかしていたんだな。




神通力だから、いろいろ出来るとは思っていたが、ああやって見せられると、俺も練習しなくてはと思えてくる。




すると――



「ストレート・ファイアー・ダンディズム!!」




ファイアが俊敏な身のこなしで、一気に間合いを詰めていたようだ。


懐に入られたシオティンは、ファイアの打撃必殺技を受けてしまう。




「――うぐぅ!」



だが、すんでのところで持っていた杖でファイアの拳を受け止めた。



「――く!」



「うぅぅぅ!」




そして、杖と拳による力比べが始まる。




いや、力比べというより、神通力比べか――




二人は汗を掻きながら、互いに譲らず、膠着状態。

――まるで、剣道の鍔迫り合いだ。




……ん? まてよ。




このどさくさなら、使える!!



「よし、今、行くぞぉ!」




俺は二人に向かってダッシュをする。




杖と拳。あれが双方のバランスを取っている。




ならば、あの状態を――




俺は自分の杖に力を込める。




と、その時、シオティンの杖が弾き飛ばされた。




丁度、俺は、鍔迫り合いに向かって、自分の杖を叩きつけるところだった。




だが、そこには、その勢いのまま拳をシオティンに叩きつけようとしたファイアの姿が。



「え――?」



「あれ?」




ファイアと俺の声。




うひゃぁ! すまぬ。ファイア!




俺は心の中で謝る――



「うぎゃぁぁぁぁん!」




まともに俺の攻撃を受けたファイアは、やはりアクアと同じように、吹っ飛んで行った。




それを見て、俺は心の中でまた謝る。




その時、



「あ、ありがとう……兄貴」




倒れて、色っぽいポーズを取っていたシオティンが、恥ずかしがりながら言った。




いや、そのポーズは、そのままバランスを崩して倒れたからか……



「お、おう。大丈夫か?」




俺は、すぐシオティンの横に並び、顔を近づける。




今しかない。




このまま、ポケットを弄って、勾玉を取る!!



「あ、兄貴……!?」




シオティンは少し驚いたような表情になるが、すぐ顔を赤らめて、視線を外した。



……何か誤解しているかも知れないが、このままやるしかない。




俺は、シオティンのワンピースのポケットに手を入れる。




もちろん、ゆっくりと、気付かれないように。



「心配したぞ。大丈夫だったか? 怪我は?」




俺は立て続けに声をかけ、片方の手で、シオティンの頭をなでてやる。



「きゅぅぅぅん」




変な声を上げたシオティンは、そのままボーっとしている。




よし! やれる!



ポケットの中にあるはず……



……ん……?



この……歪な形……固い……



小さな石のようなもの……間違いないか……!



よし! 俺はポケットに中にあった、石を掴むことが出来た。




そして、それをそのまま――



「ヤマ……ティン……さん?」




すると、突然の声に、俺は手の動きを止める。




俺は驚いて声の方に顔を上げた。




そこには、無表情のミドリがいた。




何故か……怖い。



「お、おう」




俺は変な相槌をうつが、ミドリは無表情のままで、何かを考えている。



「ど、どうした?」




いや、敵なのだから、お互いに攻撃するべきなのだろうが、何故か、そんなこと聞いてしまった。



「いやです……

二人で……そんな近く……」




呟くようなミドリの声。



「え?」



「いや……なんです……

うぅ……もう、私、どうしちゃったの……」




俺は、不自然なミドリの言動が心配になり、俺はミドリの方へ近寄りたくなるが、まだ片手は、シオティンのワンピースのポケットの中。




そして、しっかり、石を掴んでいる状態。




う、動けない……




シオティンは、俺とミドリの表情を互いに眺めている。




よし!

次にシオティンがミドリの方を向いたときがチャンスだ。



更に顔を近づけて、視界を覆い、そこで一気に手を引っ込める!!




すると、シオティンはミドリの方を向く――



「早く……デート誘ってください……よ! もう!!

グロス・ミックス・サー!!」




ミドリの必殺技の声が辺りに響く。




……あれ?




ミドリの必殺技で出現した葉の大群は、俺だけを標的にして、一気に向かって来る。




それは至近距離で、しかも、俺は手も動けない状態だったので、もちろんのこと、



「――くぁwせdrftgyふじこlp!!」




俺は悲痛な叫びと共に、空を飛び、星となってしまった。





……



……




――目覚ましが鳴る。




はぁぁ。もう朝か。




……って、俺、制服のままじゃん。




シャワー浴びないと。




俺は立ち上がろうとして、ふと、ベッドの下を見る。




そこには、青くて丸いものが転がっていた。




あ、そうか。昨日のミドリの攻撃で、手を掴んだまま、俺は吹っ飛ばされたんだった。




どうやら、都合よく俺は勾玉をゲットしたようだ。



「何とかなったけど、さすがにきつかった……」




俺は一人そう呟いて、勾玉を机の上に置く。




そして、とりあえず俺はそのままシャワーを浴びようと、風呂場へと向かった。




風呂場の扉を開けると、そこにはシャワーを浴びていた詩織が――



「あ、兄貴!

……いきなりはちょっと恥ずかしい……かも……」



「――ふぁっ!?」




急いで扉を閉める。



え? ここは俺の部屋だよな? しかも男子寮だよな?




なんで、あいつ、ここにいるんだ?




え? しかもシャワー? これって朝チュン?



「ま、まじか……俺って、もう……」




最悪の事態を想定するが、いや、まさかそんなはずはない。




昨日はミドリにぶっ飛ばされた瞬間までは覚えている。




だから、きっと、



「なぁ、詩織? 昨日、俺を運んでくれたのか?」




俺は風呂場の扉越しにそう尋ねる。



「えー? あ、そうだよー。

大変だったんだからね!」




やはり、そうか。まずは一安心。




だが、もう一つの懸念が。



「んで? 何で、お前は今、ここにいるんだ?」




と、尋ねると、詩織は風呂場の扉を開け――



「そんなの、心配だからに決まってるでしょ!

家族は寮に入ってもいいの!」



「ちょっ――!?

お前、服! 服! 裸だっつーの!」




素っ裸の詩織を前に、俺は急いで背を向け、見ないようにする。



「――っ! ~~っ!!」




詩織は失念していたのだろう。

急に恥ずかしくなったようで、急いで扉を閉めて、風呂場へと戻る。



「も、もう! ずっと看病してたんだからね!」



「あ、あぁ。でも、そこまで重症じゃないだろう……?」



「そりゃそうでしょ!? 私が添い寝したかったんだから!」




とのことだ……




詩織のブラコンも、日に日に増してるような気がする。




だが、昨日、勾玉を取り戻した。




あの様子だと、まだ気付いていはいないのかも知れない。




詩織には悪いが、これはボスに返すことにしよう。




そうすれば、ちょっと残念ではあるが、マジカル・キュアとブラック・マグマの戦いも終わる。



……大変だったけど、いろいろと面白かった。




しかし、ミドリ――緑川さんの誤解を解けなかったのは、ちょっと悪い気がしている。




ファイアのヤマティンに対する態度も、緩和されなかったし。




しかし、これは仕方がない。




正体は明かせないままになるだろうけど、後で皆にお詫びでもするか。




白瀬さんにも、お世話になったし、忠之……とは、もう会う機会はないのかな。



「兄貴! 出るから、そこを退いて!」



「おっと、悪い」




俺は風呂場の前で、いろいろ考え事をしていたままだったので、急いで部屋へと戻る。




寮とは言っても、部屋も広く、一階に食堂や共同ルームがあるのを除けば、普通のアパートのような造りだ。



なので、自室に入ってしまえば、他の寮生には、何をやっているかまでは気付かれないだろう。




部屋に戻り、俺はベッドに腰掛ける。




あの神社での遊びが、今になってまだ作用してくるとは、感慨深い。




まぁ、いろいろ楽しかったけど、また楽しいことあるかもしれないし!




いろんな女の子とも知り合えたし、葵とも再会できた。




学園生活は、これから――



「兄貴、お待たせ」



「おう。今日も学園だから、飯でも食って、行こう――」




俺は振り返って、詩織を眺めると、そこには、



「……? 何? そのペンダント?」




俺は、今まで見たこと無かったので、思わず聞いていた。




Tシャツ姿の詩織の首から、紐の長いペンダントが垂れており、先には青い石が光っていた。



「――あ、いっけない」



そう言いうと、詩織はTシャツの中にペンダントを、隠すように仕舞った。




俺がその行動に不信を持って眺めていると、観念したように、



「あぁ!

もう、分かったわよ。

これが兄貴に貰った青い石! 婚約指輪!

もう、願もかけて大切にしてるから、誰にも見せたくなかったのに!」




「……え? 願? 指輪……?」



「そうだよ。

願をかけたら、他の人にはばれないようにしないとね。

小さな穴から紐を通して、ペンダントにして、見られないようにしたんだよ。

だから、誰にも言わないでね。私と兄貴の思い出だし!」



「……あれ? 昨日、ポケットにあった石は……?」




俺は焦りながら、昨日のことを聞いた。すると、詩織は笑顔で、



「え? ……石?

あれ、ガチャガチャのカプセルだけど?」



「――ふぁっ!?」




俺は急いで、先ほどの青いものを手に取る。




普通の丸いカプセルとは違って、変な歪な形。



それで俺は勾玉だと思い込んでいたようだが、確かに、カプセルのようだった。



「あ! 兄貴!

拾ってくれてたの!? ありがとう!

あと一個でコンプだったんだ!」




「こ、これ、カプセル……なのか?

小さくて、変な形……だな」




「だって、変な猫尻尾コレクションだもん。

かなり精巧で、曲がった形の尻尾を入れるには、丸型じゃ――」



「――何それ!?」




そんなコレクション、聞いたことがない……




確かに、勾玉とは形が全然違うが、カプセル自体が小さく、青く変な形だったので、すっかりそれだと思い込んでいたようだ。



「……着替えて、行くか……」




俺は朝から疲れ切って、詩織にそう言うしかなかった。



すると、カプセルを開けた詩織は、



「やったぁぁぁ!

”ポメラニアンがポエム書いてるときの尻尾”が当たった!

コンプだぁぁぁ!!」




既に猫じゃないし!!




もう、いいや……後でいろいろ考えよう……



「あ、叶ちゃんだ!」




いつの間にか、窓から顔を出した詩織が、下を歩く緑川さんを見つけたようだ。



「叶ちゃーん! 待って! 一緒に行こう!」



「えぇぇ! 詩織ちゃん!?

何で男子寮にいるんですかっ!?」




緑川さんが二階の俺の部屋から、詩織が顔を出しているのを見て、驚いたようだ。



「こら! 男子寮から声を出すな!

何事かと思われるだろっ!」




俺は詩織を小突いて、窓から離す。

そして、俺は窓から顔を出し、緑川さんに目で合図した。



すると、緑川さんは、理由が分かったようで、笑顔で会釈してくれた。




……いい子だなぁ



でも、昨日の豹変ぶりを思い出すとドキドキする……



あれって、嫉妬……だよね?



それに……デート……本気で考えてみよう……




俺はそんなことを思いながら、詩織と一緒に着替えて行く支度をする。




もちろん、妹とは言え、女の子の着替えを覗く趣味は無いので、俺はトイレで着替えたが……



「おはよー!」



「おはよう。

あ、お兄さんもおはようございます」



「やあ。おはよう」




ということで、俺たちは寮から出て、三人で学園を目指す。




結局は、勾玉は次回に委ねるしかない。




でも、まぁ、



「あ! 依光君!」



「や、赤城さん、おはよう」



「おはよー! 三人で登校なんだ!?」




幼いころの俺がきっかけをくれた、今のこの日常は、なかなか楽しい生活となっている。



赤城さんも、学校では猫をかぶってるのが何となく分かって、葵との仲も良さげだし。



今度、俺の前でも猫をかぶるのを止めてもらうように仕掛けてみようかな。




「あ、永礼ちゃん!」



「やあ、兄妹」




白瀬さんは相変わらず掴み所が無い。



しかも、赤城さんは何故か白瀬さんに警戒心を持ってるし……



そして、葵と忠之は別の学園だが、これからも頻繁に会うことになるだろう。



特に、葵とは、久しぶりに会ったのに、なかなか話せていない。




今度、メールか電話でもするか……




そして、俺は、バイトの目的に、一つ自分の目的を追加する。




そう。必ず、勾玉を詩織から取り返し、ボスへ返す。




詩織のためにも、そうしなければ。




俺はそう誓う。




ブラック・マグマの一員として、マジカル・キュアや、この街の皆をドキドキさせる日常に、新しい目的を追加したことで、俺のやる気は俄然増す。



「よし、行くか」




いつの間にか、ほとんどのメンバーが集まった、登校の日常。



俺は楽しみを胸にしまいながら、皆と学園への道を歩き出した。





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