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3-6-2

「多分、そのはずで――」

「きゃああぁあぁあああ!」

 ミコトの言葉を、けたたましい叫び声が遮った。すぐ近くから聞こえてくる。


「な、何だ!?」

 刹那、曲がり角の向こうは騒然としたどよめきで溢れかえった。その中には、警察と救急車を呼べ、早く逃げろ、という落ち着きを失った声が混ざっていて。あるいは、怒号に近いものも飛び()っている。

(あいつだ……また、あいつが人を殺してる)


 それは動揺とも焦燥とも取れない、不思議な感情だった。思わず落としてしまった買い物袋など気にも留めず、ノゾミは駆け出そうとして地面を強く踏み込む。

「ノゾ君、走ったら駄目です!」

「っ、今はそんなこと――」

 右腕に抱きつくようにしてノゾミの動きを封じたミコトは、懇願(こんがん)の眼差しで訴える。


「せっかく大人しくしてきたのに、また怪我が酷くなったらどうするんですか」

「それよりも、あいつの正体をつきとめなきゃいけないだろ!」

「向こうは凶器を持ってるんですよ、これ以上ノゾ君の体を傷つけたくありません!」

「でも…………チッ」


 ノゾミは初めてミコトの前で舌打ちをした。初めて、怒りの感情を(あら)わにしたのだ。

 この間にも、何人もの人が二人の横を走り抜けていく。一人で大声を上げるノゾミのことなど、視界の隅にも入っていないだろう。

(だからって、どうすれば良いんだよ)


 叫び声は未だ()まないが、ノゾミは耳を塞ぐことも出来ずに立ち尽くしていた。だが、鼓膜を振るわすだけの音に、何か不穏なものを感じ取る。


 ――それは、(わら)い声だった。


「あっはははははは、超ーーーォォオ楽しィィィイイ!! ハハッ」

悲痛と恐怖の絶叫を切り裂いて、彼の声はノゾミの耳を(つんざ)いた。

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