表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/168

3-5-2

(ミコトに言わなくて良かったかも)

 もし先程、胸が痛むのは殺人鬼と関連があるかもしれないと告げていたら、ミコトは気を揉んでしまっていただろう。

「とにかく、来週の診察までは安静にしておくこと。夏休みなんだから、出来るよね?」

「……はい」


 いつまでも行動範囲が限られているよりは、早く治して自由に動けるようになった方が良いだろう。そのためには今度こそ静かにしていなければならないのだが、しばらくは殺人鬼探しの規模を狭めなければならない。

 自業自得とはいえ、これはノゾミが恐れていたことの一つだ。もし自分が動けない間に彼が何か行動を起こしたら。

 そう考えると、居ても立っても居られなくなる。


「それじゃあ今日はこのくらいで。大人しくしていないと、後で辛いのはノゾミ君だからね」

 それは重く突き刺さる一言だった。

 いくらノゾミが死なない体質になったとはいえ、体自体はただの人間と同じなのだ。

 そこを履き違えていた訳ではないが、医師から言われたことで改めて自覚する。


「はい……ありがとうございました」

 ノゾミは行儀よく礼をすると、診察室を後にした。ミコトはその後ろを無言でついてくる。

(ミコト、さっきから何も言わないな)

 ミコトは周りに人がいる時は(ほとん)ど話しかけてこない。だから何も言わないのはある意味で当たり前なのだが、ミコトが(まと)う空気が重苦しく感じられたせいで、それが不可解に思えてしまう。


 会計を済ませて病院の外に出た後で、ミコトはようやく口を開いた。

「ノゾ君、治ってないの腕だけじゃなかったんですね」

 それが肋骨の怪我を指しているのだということはすぐに分かった。

「あ、いや。退院する時にそっちは大分(だいぶ)良くなったって言われて」


 入院中は全くと言っていい程出歩いていなかったので、経過は良好だった。若いから骨の癒合(ゆごう)も早いらしく、退院してからのバストバンドやコルセットを用いた固定をしなくても大丈夫だろう、と言われていた。安静にすることを前提としての話だが。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ