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「犯人は、一体何を目的としているんでしょうね」
ぽつりとミコトが呟いた。それはノゾミもずっと考えていたことだ。
「さあな。事件の頻度も不定期で、被害者も犯人とは全く面識が無い。そんなのにちゃんとした目的なんて......」
頻度が不定期というのも、短くて犯行の間隔が半月ほど、長くて三ヶ月は空いているからだ。
そもそもこの惨劇が始まったのは半年前。まだ冬の冷え込みが厳しかった頃だ。その当時のノゾミといえば、とにかく外界との接触を避けていたので、事件に対しての印象も薄かった。
(でも、今もこんなことにならなかったら、家に引き籠もってただろうな)
それは簡単に予想がつく。ミコトと逢ってから、ノゾミは今までの比にならない位外に出るようになった。
それもこれも、生きる意味を見つけたからだろう。
「あいつは、何がしたいんだろ……」
「ノゾ君?」
「――あ、いや……」
無意識の内に心で思っていたことが声に出てしまっていたようだ。はっとして口を紡ぐが、時すでに遅し。
「どうしたんですか」
「んー……俺が死ぬために生きているみたいに、あの殺人鬼も何か理由があって生きてて、あんなことしてるんだよなって、思って」
あの卑劣な行為にも、訳があるはずだ。人を殺すのも、事件の度に遺体の体の一部を持ち去るのも。
「死体のコレクションでもしてんのか?」
「それも、否定は出来ませんね。ムクロは人の体を具現化した存在ですから」
死体を集めるなら犯行現場から一部を運ばないで、近所で誘拐してから殺したりはしないのだろうか。と考えかけて途中で止めた。
彼と同じ思考回路に陥ってしまう気がして怖かったからだ。
そんなことあってたまるかと思う一方で、彼に刺されかけて無様に嗤っていた自分ならひょっとして、という予感が頭をよぎる。




